since 2007.03 多摩地区の産科・婦人科医療に貢献する日本医科大学多摩永山病院女性診療科医局のホームページ
「周産期看護マニュアル よくわかるリスクサインと病態生理」 (中井章人著,東京医学社)より (全体の目次はこちら)
◇2.日常生活サポート ◇◇飲酒 喫煙 嗜好品 就労 性生活 旅行 運転 入浴
少量の飲酒は制限されていない。しかし、アルコールは容易に胎盤を通過し、過度の飲酒により胎児アルコール症候群(FAS)が発症する。胎児アルコール症候群は子宮内での高濃度エタノール暴露による、成長障害あるいは形成不全で、全身の器官には様々な異常が観察される。 発症に関するアルコールの危険量は45〜50 ml/dayで、ビール約1200 ml、清酒約320 ml、ウィスキー約125 mlに相当する。しかし、危険量を下回る量のアルコールであっても、連日の飲酒は胎児アルコール症候群を発症するとの報告もあり、習慣的な飲酒はさけるべきである。 アルコールは容易に母乳へ移行する。母乳中のアルコール濃度は血中濃度の90〜95%に達する。少量の飲酒では問題ないものの、多量の飲酒後の授乳により乳児の急性アルコール中毒が報告されている。
コーヒー、紅茶、緑茶を習慣的に飲用する妊婦は多い。これらの嗜好品は様々な成分を含有しているが、妊産婦ではカフェインが問題となる。カフェインは胎盤通過性があり、大量摂取した場合、胎児の血行循環障害により自然流産、発育障害、胎内死亡を引き起こす。しかし、少量摂取であれば問題はなく、一日にコーヒー5杯がカフェイン多量摂取の目安となる。
妊娠中の性交渉の可否については様々な意見があり、医学的な結論は出されていない。 精液中にはプロスタグランジンが含まれ子宮収縮を引き起こす可能性があり、性交時にオルガスムスを得た場合にはオキシトシンが分泌され子宮収縮を引き起こすことがある。また、性交渉により細菌が上行性に感染すると絨毛膜羊膜炎が惹起され、前期破水などの原因となる。 妊娠中は感染症と精液による子宮収縮発生を防ぐため、性交渉前には清潔をたもち、コンドーム(男性用、女性用)を使用するよう習慣づける必要がある。また、妊娠初期は流産率が高く、性交渉が直接の原因にならなくとも、流産後の心因性セックスレスに関連する可能性があり性行為は控えるようアドバイスする。妊娠末期については賛否両論あるが、子宮口が軟化し開大傾向があれば、破水や感染のリスクが高く、初期同様性行為は控えるべきとされている。 妊娠中期から後期にかけては腹部を圧迫しないような工夫をする。男性上位よりも女性上位のほうが腹部の圧迫が少なく、前期破水の頻度が低い。しかし、性交時の強い刺激は子宮収縮を惹起するため、激しい行為は避けるよう指導する。 また、帯下の増加、掻痒感、出血、規則的な子宮収縮などが発生した際は、速やかに専門医への受診を勧める。