NPPVの適応・禁忌・離脱

NPPVの適応・禁忌・離脱

★ NPPVの一般的適応

  • 意識がよく協力的である
  • 循環動態が安定している
  • 気管内挿管が必要でない:気道が確保できていること、喀痰の排出ができること
  • 顔面の外傷がない
  • マスクをつけることが可能
  • 消化管が活動している状態である(閉塞などのないこと)

★ NPPVの一般的禁忌

  • 非協力的で不穏
  • 気道が確保できない
  • 呼吸停止、昏睡、意識状態が悪い
  • 自発呼吸のない状態での換気が必要
  • 顔面の外傷、火傷、手術や解剖学的異常でマスクがフィットしない
  • 咳反射がない、もしくは弱い
  • ドレナージされていない気胸がある
  • 嘔吐、腸管の閉塞、アクティブな消化管出血がある
  • 大量の気道分泌物がある
  • 排痰できない
  • 気胸がある(NPPV開始前に胸腔ドレーンの挿入が必要)
  • 誤嚥の危険性が高い

★ NPPVから気管挿管への移行を考慮する場合

  • 患者の病態が悪化
  • 動脈血ガス分圧が改善しない、または悪化
  • 気胸、痰の滞留、鼻梁のびらん、のような新たな症状または合併症の発現
  • 人工呼吸器の受け入れが悪い、または同調不良
  • 症状が軽減しない
  • 意識レベルの悪化
  • 患者および介護人が治療中止を望む

★ NPPVの失敗の予測因子

  • 最初の動脈血のpHが低い
  • NPPV施行後1時間の動脈血ガス(pHの上昇、PaCO2の低下、呼吸数の低下がみられない)
  • APACHEⅡやSAPSⅡで示される重症度が高い(SAPASⅡ35以上)
  • X線上浸潤影がみられる
  • マスクを長い間つけることができない
  • 意識状態が悪い、改善しない
  • 患者の年齢が40歳以上
  • 治療開始時の呼吸数が38回/分以上
  • 外科手術や外傷を原因とする呼吸不全
  • 糖尿病を合併する症例

● NPPVが有効な急性呼吸不全

  • Strong COPD急性増悪および呼吸器離脱促進
  • 急性心原性肺水腫
  • 免疫不全患者
  • Less strong 気管支喘息
  • Cystic fibrosis
  • 術後呼吸不全
  • 呼吸器離脱後の再挿管回避
  • 気管挿管拒否例
  • Weak 上気道閉塞
  • ARDS
  • 外傷
  • 閉塞性睡眠時無呼吸症候群、肥満低換気症候群
  • ※実証レベル:strong:他施設比較試験、less strong:一施設比較試験または多数の症例検討、weak:少症例検討または症例報告

★急性呼吸不全におけるNPPVの導入基準

  • 高度の呼吸困難を認める
  • 酸素療法、薬物療法に抵抗する低酸素血症
  • 吸気補助筋の著しい活動性、奇異性呼吸を認める
  • 呼吸性アシドーシス(pH<7.35)、高二酸化炭素血症(paco2>45mmHg)がある
  • 胸部X線検査で自然気胸を除外している

☆COPDの急性増悪
NPPV適応基準(以下のうち2つ以上該当するもの)

  • 呼吸補助筋の使用と奇異性呼吸を伴う呼吸困難
  • pH<7.35かつpaco2>45mmHgを満たす呼吸性アシドーシス
  • 呼吸回数>25回

☆ 気管支喘息発作時
NPPV適応基準(明確に検討されたものは無い)

  • β2刺激薬の吸入で改善の乏しい呼吸困難
  • 著明な努力呼吸
  • 明らかな呼吸筋疲弊
  • PaCO2上昇(>45mmHg)

☆心原性肺水腫

  • NPPVが治療の第一選択となる
  • NPPVは気管内挿管による人工呼吸を有意に減少させる

☆胸郭損傷
NPPVの使用目的

  • 肋骨骨折やフレイルチェストによる換気障害の治療(内固定)
  • 低酸素血症の治療と無気肺の発生・進行予防
  • 肺挫傷による低酸素血症の治療や無気肺の進行防止

★NPPVからの離脱
急性呼吸不全に対しては気管内挿管による人工呼吸器からの離脱と変わらない。
1つの離脱基準としては、

  • EPAP=4cmH2O
  • IPAP≦6cmH2OかつFiO2≦0.3でSpO2≧97%
  • 呼吸回数≦30回/min
  • 脈拍数≦100回/min
  • マスク装着をうっとうしがる

以上の条件を満たす場合は、酸素マスクに変えてSpO2=97~99%を維持するようにFiO2を調整する。
NPPVが有効でないと患者は装着をいやがりSpO2は低下する。その場合はただちに使用を中止する。


一般的な人工呼吸でのウィーニングの条件

  • FiO2≦0.4, PEEP≦3cmH2O, PaO2≧80mmHg
  • P/F ratio≧200
  • 体温が35度以上38度未満
  • Hb>9.0
  • 過量のカテコラミン類を使用していない
  • GCS≧13

以下の項目が1つでもあればウィーニングしてはいけない

  • 呼吸回数が35回以上
  • FiO2≧0.4でSpO2≦95%
  • HR>140もしくは<50もしくはベースラインより20%以上の増減
  • 収縮期血圧>180もしくは<70もしくはベースラインより20%以上の増減
  • 意識レベルの低下、著明な興奮や発汗
  • 奇異性呼吸

○急性心原性肺水腫に対するNPPV
急性心原性水
肺間質の張障害、肺コンプライアンス低下、気道抵抗上昇に伴う機能的残気量の減少、肺胞内浮腫液漏出による死腔換気の増加、 呼吸筋疲弊に伴う低換気→酸素化障害、換気障害
心不全による低酸素血症→心収縮力低下、肺血管抵抗上昇→右室後負荷増大→心不全増悪
【この流れを断ち切るのがNPPVである 】
期待される効果:酸素化の改善、呼吸仕事量の軽減、循環補助効果、交感神経系興奮の軽減
 PEEP→肺胞虚脱を防ぎ、機能的残気量増加させ、酸素化能を改善
 陽圧換気による呼吸補助→呼吸筋における酸素消費量を減少させ、間接的に酸素化を改善
 胸腔内圧上昇→静脈還流減少→右室の前負荷軽減→左室の前負荷も軽減→肺水腫改善
(うっ血性心不全では左室充満圧が異常に高いため、心機能曲線が平坦あるいは下降線にあり、その場合加圧換気による静脈還流量減少は 前負荷軽減をもたらしてむしろ左室の機能を改善させる)
 胸腔内圧上昇→左室の収縮にかかる圧力低下→左室の後負荷を相対的に軽減
 低酸素血症・高炭酸ガス血症の改善→交感神経系の興奮軽減→末梢血管抵抗低下
急性心原性肺水腫での適応症例:比較的短時間で改善する可能性のあるもの
(例)慢性心不全の急性増悪、急性心筋虚血、開心術後の心不全、抜管・呼吸器離脱に伴って出現した急性心不全など
呼吸負荷の所見:呼吸困難感、30回/分以上の頻呼吸、呼吸補助筋の使用、奇異性呼吸運動
心不全の所見:100回/分以上の頻脈、ギャロップリズム、両側性湿性ラ音、胸部X線でうっ血像
不安定な循環状態、意識状態が悪い、呼吸状態が不安定な患者などはNPPVは適さない。
急性心筋梗塞疑いの場合は、緊急冠動脈造影を先に行い、その後の治療としてNPPVを考慮。
急性心原性肺水腫に対し、NPPVは気管挿管への移行を減らし、ICUでの死亡率を減少させる。
自力咳嗽ができず明らかに喀痰の貯留が認められるような場合には早めに気管挿管へと移行すべきである。


※本学のICUの場合(1992年から2004年までのデータ)
NPPVとなった症例607例のうち、急性心原性肺水腫400例(65.9%)が最も割合が多く、成功率も平均で84%と高い。 ALI、ARDSと肺炎の成功率は50%以下であり、その他の疾患に比べ有意に成功率が低い。術後呼吸不全や気管挿管人工呼吸からの 離脱に用いられる症例が増加してきており、最近では90%以上と成功率も高い。


抜管後の呼吸不全
抜管後の呼吸不全に対するNPPVの効果は確認されていない。
本学ICUでは低酸素血症の出現から直ちにNPPVを行った症例では成功率は90%以上であった。
気管挿管へと移行した症例の多くが6時間以上経過してからNPPVを施行した症例であった。
抜管後の呼吸不全に対してNPPVを施行する場合にはできるだけ早期に開始し、また状態が悪化すればNPPVでの管理に固執せず速やかに 気管挿管へと移行すべきあ。
気管挿管による人工呼吸からの離脱困難症例や従来の抜管基準より早期に抜管する必要がある場合にはNPPVを使用することは有効である。 Weaningできない症例に対しNPPVを用いると肺炎や敗血症性ショックの合併を減らし、ICU滞在日数と入院日数を減らし、90日生存率を改善させる。


手術後の呼吸不全
NPPVはマスク酸素投与に比べ、気管挿管への移行、ICU滞在、入院日数、院内死亡を減らした(肺切除後の患者が対象の研究)。
術後低酸素血症に対しNPPVは肺炎や敗血症の発症を有意に減らし、死亡率を改善させる。
本学ICUにおいても術後呼吸不全に対するNPPVの成功率は最近では90%以上と非常に高く、有効な治療方法の1つである。


COPDの急性増悪
NPPV群で人工呼吸期間の短縮、ICU滞在日数の短縮、60日生存率に改善が認められた。
気管挿管下の管理期間が短縮されるため、VAPの合併頻度が減少する。


ページトップへ

Copyright © 2010 Nippon Medical School Chiba Hokusoh Hospital Department of Anaesthesia. All rights Reserved.