不育症診療

初めて受診される場合

紹介状をお持ちの方

  1. 火曜日と水曜日の午後にて不育症外来の予約を受け付けています。(詳細は「紹介状について」)それ以外の曜日でも不育症の初診は受け付けていますが、専門外の医師が担当することになります。
  2. 受付順に診察いたしますので、待ち時間がかなり長くなる場合があります。

再診の患者さん

  • 不育症外来(完全予約制:要電話予約) 毎週火曜日と水曜日
  • TLC外来:不育症の既往がある方が妊娠したときにかかる外来です。TLC外来の詳細情報はこちらをご覧ください

診療の流れ

不育症診断・検査の流れ

不育症の診断と治療

1.不育症とは

妊娠はするが、流産や死産を繰り返して元気な赤ちゃんが得られない状態を不育症といいます。死産を繰り返すことは珍しいので、ほとんどが流産を繰り返す反復流産、習慣流産です。一般に100人が妊娠すれば10~15人は流産に終わります。原因の多くは胎児側にあり、50~70%は胎児の染色体異常によるといわれています。ほとんどの染色体異常は偶発的なもので、これが繰り返されることはまれといって良いでしょう。すなわち、流産を繰り返す場合はこれ以外の理由、母体側や⽗親側あるいは両親(夫婦間因子)に原因があることが多いのです。不育症外来はこうした悩みをもつ夫婦に対して、原因の究明・診断・治療を行う外来です。

2.流産を2回繰り返したら

不育症の定義は妊娠するけれども2回以上の流産もしくは死産を繰り返し、結果的にお子さんを持てない状態とされています。したがって、われわれは2回流産を繰り返した時点で検査を始めることを勧めています。また、原因不明の死産(胎内死亡)を起こした場合も、抗リン脂質抗体症候群などが原因であることもあり、検査が必要です。

3.不育症の検査

不育症の原因は多岐にわたっています。流産の時期やパターンから原因を推定するのは難しく、系統的なスクリーニング検査が必要となってきます。青字は保険適用外検査です。

原因 検査・基準値
一般検査 血算
血液像
生化学
子宮形態異常 子宮奇形(中隔子宮、双角子宮、単角子宮など)、子宮筋腫(粘膜下筋腫)、子宮腺筋症、子宮腔癒着症(アッシャーマン症候群)、頸管無力症などが流産の原因になります。 超音波断層法(3D超音波を用いると内腔の形を正確に評価できます)
子宮卵管造影
子宮鏡
MRI
内分泌代謝異常 高プロラクチン血症、甲状腺機能異常、糖尿病などがこの範疇に入ります。
最近、甲状腺機能を適切にコントロールすることが重要であることが分かってきました。当院の糖尿病・内分泌代謝内科と協力して治療にあたります。
プロラクチン値 ≦24
ng/ml
甲状腺機能検査(TSH) <5.00
(2.50)
甲状腺機能検査(FT4) 0.83-1.64
抗サイログロブリン抗
抗TPO抗体
空腹時血糖 70-109g/dl
HbA1c 4.1-5.9%
血液凝固異常 近年、不育症の原因として血液凝固異常、血栓性素因が注目を浴びています。抗リン脂質抗体症候群は最終的に凝固異常により流産に至るとされていますが、ここでは抗リン脂質抗体症候群を自己免疫異常の項に入れることにします。 APTT 25-40
PT INR
第XII因子 50-150
Fibrinogen 170-400
アンチトロンビン 79-121%
TAT <3.0ug/ml
D-Dimer <1.0ug/ml
Protein C(抗原)  70-150
Protein C(活性) 64-146
Protein S(抗原) 65-135
Protein S(活性) 60-
血小板凝集能
抗リン脂質抗体症候群 本来、免疫が自分以外のもの(抗原)を排除してくれるからこそ、生体としての機能を保つことができます。しかし、この⽭先が自分に向いてしまい、さまざまな障害を起こす病気が自己免疫疾患です。不育症の原因に、自己免疫異常のひとつで
ある抗リン脂質抗体症候群によるものがあるという事実が分かってきました。最も検出頻度の高い項目です。
抗核抗体 <80x
LAC(dRVVT) <1.3
抗カルジオリピン抗体 IgG <10
抗カルジオリピン抗体 IgM <8
抗β2GPI-IgG 抗体 <1.2
抗PE抗体 IgG <0.300
抗PE抗体 IgM <0.450
抗PS/PT抗体 <12
ネオセルフ抗体
染色体検査 均衡型相互転座やロバートソン型転座の場合、着床前診断を行うことができます。
  • 夫婦染色体検査(妻)
  • 夫婦染色体検査(夫)
    • 着床前診断
  1. 子宮内検査
慢性子宮内膜炎の場合は抗生物質にて治療を行います。
  1. 慢性子宮内膜症(CE)
  1. 子宮内フローラ
精子検査 これらの状態が不良の場合、サプリメントの投与を考慮します。
  1. 精子クロマチン構造検査(SCSA)
  • 精液の抗酸化力検査(TAC)

不育症の治療

前述のように、不育症の原因は多岐にわたり、それぞれの病態に応じた治療が必要になります。以下、代表的な治療法について述べてみます。

TLC外来

  • TLCとはTender Loving Careの略で、そのまま訳せば「やさしさに包まれるような愛に満ちたケア」となりますが、不育症の既往を持つ方が妊娠したらかかる外来と考えていただければよいと思います。
    反復流産の既往があると、妊娠しても喜べずかえって不安が募る毎日を過ごしている場合が多いものです。通常妊娠の診断がつくと、次回健診は早くても2週間後、長いと4週間後になってしまいます。過去の流産が妊娠初期の場合、一番心配な時期に診察が受けられないことになります。TLC外来は、そんな不安を少しでも和らげるため、妊娠のごく初期(胎嚢が見える前から)から少なくとも1週間に1回は来ていただき、診察をする外来です。特別な薬を使うわけでもなく、魔法を使うわけでもありませんが、TLCにより赤ちゃんが産める確率が高まったという科学的データも出ています。
    妊娠かと思ったら、まず予約を入れてください。
    原則的には火曜日(市川智子医師)、木曜日(里見操緒医師)の「TLC外来」枠で診療しています。学会や急患対応等で、担当医は変更となることがあります。
  • TLC外来は保険適応とはならず自費診療になりますので、ご理解いただきますようお願い致します。

お問い合わせ

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〒113-8603 東京都文京区千駄木1-1-5
TEL: 03-3822-2131(代表)

夜間・休日救急外来
TEL: 03-5814-6119
(午後4時00分~翌日午前8時00分・土曜:午後2時00分~翌日 午前8時00分)

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