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「体が若くなる技術」に対してのコメント、質問などへの回答


  体が若くなる技術(太田成男著:サンマーク出版)はおかげさまで、たいへん好評です。多くの一般の方々が興味をもって読んでいただくために執筆したこともあり、専門の方々を中心に「もう少し詳しく知りたい」「書かれた内容の根拠を知りたい」という声も寄せられています。
 そこで、拙書をもっとよく理解していただくためのコーナーを設けました(文責:太田成男)。

         

Q1: (193頁) 週末プチ断食がよいと書かれていますが、どのくらい根拠のある話なのですか?



A1: まず、線虫をつかった研究で、断続的カロリー制限でも、継続的なカロリー制限と同じ効果がでることが、出されています。
Signalling through RHEB-1 mediates intermittent fasting-induced longevity in C. elegans. Honjoh S, Yamamoto T, Uno M, Nishida E.Nature. 2009 Feb 5;457(7230):726-30. Epub 2008 Dec 14.
そして、最近、人間で週二回カロリーを30%にした時の結果が論文として報告されています。初版では、この点については、ややあやふやな表現で記載されていましたので、3刷からはもう少し明確な表現に改訂しました。
 論文は以下のものです。
The effects of intermittent or continuous energy restriction on weight loss and metabolic disease risk markers: a randomized trial in young overweight women. Harvie MN, Pegington M, Mattson MP, Frystyk J, Dillon B, Evans G, Cuzick J, Jebb SA, Martin B, Cutler RG, Son TG, Maudsley S, Carlson OD, Egan JM, Flyvbjerg A, Howell A. Int J Obes (Lond). 2010 Oct 5. [Epub ahead of print]


日本医科大学
大学院
医学研究科
加齢科学系専攻
細胞生物学分野

    (先端医学研究所     細胞生物学部門)

Fax: 044-733-9268


Q2: (104頁)双子の研究で、運動によって「老化の進み具合」が抑えられたと書かれていますが、老化の基準は何をもちいているのでしょう?


A2: テロメアの長さをはかって、運動によって老化を抑制できる事を示しています。テロメアの研究に対しては、2009年ノーベル賞が授与されましたので、ご存知の方も多いと思います。ところで、2401の双子と書かれてあったので、2401組の双子の研究かと誤解してしまいました。よく読んでみると2401人を調べたという結果でした。そのため、3刷からは、間違いを訂正させていただきました。  
 論文は以下のものです。
The association between physical activity in leisure time and leukocyte telomere length. Cherkas LF, Hunkin JL, Kato BS, Richards JB, Gardner JP, Surdulescu GL, Kimura M, Lu X, Spector TD, Aviv A. Arch Intern Med. 2008 Jan 28;168(2):154-8.



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(C)Copyright 2001, Dept. of Biochem. and Cell Biol.

最終更新日
10.12.26


Q3: (190頁) 栄養バランスは「3:1:1」で摂りなさいと書かれていますが、根拠は何ですか?
Tunco”CR・IF”という方からamazonのカスタマーレビューで以下のコメントが寄せられています(2010/12/22)。 http://www.amazon.co.jp/体が若くなる技術-太田成男/dp/4763199943/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1288067160&sr=8-1
「190pの栄養バランスの項で、炭水化物・蛋白質・脂質の比は「3:1:1=6:2:2」はブ~。 正解は「炭水化物・蛋白質・脂質」=「1:3:6」。



A3: Tunco”CR・IF”という方は、いろいろな事情を詳しく知っておられる専門家からのコメントだと思います。まず、非常によく読んでいただいた事に感謝の意を表します。
 食事の栄養バランスについては、いろいろな説が出されています。しかし、栄養バランスについては、多くの有識者が実情も踏まえ検討され農林水産省から提唱されている「食事バランスガイド」と厚生労働省が多くのエビデンスに基づいて出されている「日本人の食事摂取基準」を参考にしています。
農林水産省「食事バランスガイド」 http://www.maff.go.jp/j/balance_guide/
厚生労働省「日本人の食事摂取基準」 http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/05/dl/s0529-4f.pdf
日本人の食事摂取基準では、
蛋白質:成人男子推奨量60g(240kcal)、炭水化物:カロリーの50~70%、脂質:カロリーの20-30%となっています。  
 脂質を下限の20%におさえ、炭水化物の平均の60%を採用し、残りを高蛋白質になるようにやや多めに20%と設定した値が、3:1:1です。
 Tunco”CR・IF”という方は、「炭水化物・蛋白質・脂質」=「1:3:6」を
推奨していますが、これでは極端に炭水化物が少なく、脂質が多いように思われます。最近は、炭水化物を少なくすると良いという説がありますが、まだ標準的な説ではないと思います。


Q4 (123頁) 脳は糖以外もエネルギー源として使うというのは本当ですか?
Tunco”CR・IF”という方からamazonのカスタマーレビューで以下のコメントが寄せられています(2010/12/22)。
http://www.amazon.co.jp/体が若くなる技術-太田成男/dp/4763199943/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1288067160&sr=8-1
123pの「ミトコンドリアは脳ではグルコースしか使わない 」も完全に間違い。 だから、炭水化物・蛋白質・脂質の比は「3:1:1」になってしまうのであろう。 もちろん脳のミトコンドリアはケトン体も利用出来る。 ケトン体は血液-脳関門を通過出来るからだ。」


A4: ケトン体についてですが、2010年の日本抗加齢医学会の研修用講演会では、私は専門家に対して「脳はグルコースだけでなくケトン体もエネルギー源として利用できる」と講演しました(注:ケトン体とは、ミトコンドリア内で脂質から作られ、別の場所へ輸送されて別の組織のミトコンドリアでエネルギー源として使われる物質)。しかし、脳がケトン体をエネルギー源として用いるのは、炭水化物を少なくしたケトン食を利用している場合と、絶食状態のとき、重篤な糖尿病患者に限られます。絶食状態は2日間くらい食事をとらないときのことです。ですから、普通の状態では、脳はもっぱらグルコースをエネルギー源として使っています。この本で書いている状況は、夜食をどうするかという日常の状況で、1~2日絶食をしている時ではないですので、「脳は糖(グルコース)しか使わないのです」という記載をまちがって書いたわけではありません。
 
  一般の方々を対象にする場合と、専門の方々を対象にする場合では、状況を見極めながら記載内容を選択するということになると思います。「(条件を詳しく説明して)正確に」を説明することを求められる場合と「(特殊な状況の説明は省いて)わかりやすさ」を優先的に求められる場合では、少しずつ記載をかえないとかえって混乱する事になりかねません。このような配慮をしながら、本を執筆していることをご理解ください。


Q5ミトコンドリアは運動すると1週間で増えると書かれていますが、人間のデータなのですか?どうやって調べるのですか?


A5運動によってミトコンドリアが増える事はかなり以前から証明されています。太腿の筋に針をさして採取して調べています。 Mitochondrial enzymes increase in muscle in response to 7-10 days of cycle exercise. Spina RJ, Chi MM, Hopkins MG, Nemeth PM, Lowry OH, Holloszy JO. J Appl Physiol. 1996 Jun;80(6):2250-4.


Q6: 運動すると老化してもミトコンドリアが増えているという根拠はあるのですか?それは動物実験に基づいて推論しているのですか?それとも、人間で研究したデータがあるのですか?


A6平均70才の運動していた人のミトコンドリアと運動をしなかった人のミトコンドリアを比較した研究があります。70才でも運動をよくしている人は、若い人のミトコンドリアと遜色ありません。
運動の大切さをしめした論文です。
Aberrant mitochondrial homeostasis in the skeletal muscle of sedentary older adults. Safdar A, Hamadeh MJ, Kaczor JJ, Raha S, Debeer J, Tarnopolsky MA. PLoS One. 2010 May 24;5(5):e10778
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Q7: カロリー制限をした時に、長寿遺伝子が発現して、ミトコンドリアを増やすとのことですが、長寿遺伝子のはたらきの中心がミトコンドリアを増やすというのは言い過ぎではないでしょうか?太田教授の立場からするとミトコンドリアを中心に置きたいというのはわかるのですが、ミトコンドリアに我田引水すぎるのではないかとも思えるのですが、いかがですか?

A7: 長寿遺伝子を発見したのはGuarente教授です。その本人が、老化とカロリー制限と長寿遺伝子の関係で、ミトコンドリアを重視している論文を書いています。その中で、酵母菌のような単細胞生物、長さが1mmくらいの線虫、マウス、人のカロリー制限したときのメカニズムについて書いているのですが、共通するのは、ミトコンドリアの増加だと書いており、最もミトコンドリアに対して注目しています。ただし、長寿遺伝子のはたらきは、ミトコンドリアを増やすことだけではないので、ミトコンドリアが増えたから長寿になると断定しているわけではありません。
Guarente教授の論文は、
Mitochondria--a nexus for aging, calorie restriction, and sirtuins? Guarente L. Cell. 2008 Jan 25;132(2):171-6. Review.


Q8: サルがカロリー制限すると生活習慣病にならずに長寿になるということはわかりましたが、人間がカロリー制限した時に健康によいなどの研究はまだないのですか?


A8: 人間の場合、強制的に数十年もカロリー制限をするわけにはいかないのですが、自主的にカロリー制限をしているグループがあるそうです。皆さん、健康に過ごしているという話を聞きました。
 太った人への大規模な研究は以下のような結果で、カロリー制限は効果有りという結論です。
Effect of 6-month calorie restriction on biomarkers of longevity, metabolic adaptation, and oxidative stress in overweight individuals: a randomized controlled trial. Heilbronn LK, de Jonge L, Frisard MI, DeLany JP, Larson-Meyer DE, Rood J, Nguyen T, Martin CK, Volaufova J, Most MM, Greenway FL, Smith SR, Deutsch WA, Williamson DA, Ravussin E; Pennington CALERIE Team. JAMA. 2006 Apr 5;295(13):1539-48. Erratum in: JAMA. 2006 Jun 7;295(21):2482.

 健康な人に対する、6ヶ月間25%のカロリー制限をした研究は、以下の論文にその結果がまとめられています。
Effect of caloric restriction in non-obese humans on physiological, psychological and behavioral outcomes. Redman LM, Martin CK, Williamson DA, Ravussin E. Physiol Behav. 2008 Aug 6;94(5):643-8. Epub 2008 Apr 18. Review.


Q9: カロリー制限をするとミトコンドリアが増えるというのは、人を対象にした研究はあるのでしょうか?「長寿遺伝子が働くから、ミトコンドリアが増えるはずだ」と言う推論に基づいた議論なのでしょうか?あるいは、動物実験の結果から類推した内容なのでしょうか?


A9 人間の結果もでています。はじめに、動物実験で、ミトコンドリアが増える事を示した論文を2例挙げておきます。
Calorie restriction promotes mitochondrial biogenesis by inducing the expression of eNOS. Nisoli E, Tonello C, Cardile A, Cozzi V, Bracale R, Tedesco L, Falcone S, Valerio A, Cantoni O, Clementi E, Moncada S, Carruba MO. Science. 2005 Oct 14;310(5746):314-7.
Calorie restriction induces mitochondrial biogenesis and bioenergetic efficiency. López-Lluch G, Hunt N, Jones B, Zhu M, Jamieson H, Hilmer S, Cascajo MV, Allard J, Ingram DK, Navas P, de Cabo R. Proc Natl Acad Sci U S A. 2006 Feb 7;103(6):1768-73. Epub 2006 Jan 30.

人間に対する結果は、以下の論文があります。
Calorie restriction increases muscle mitochondrial biogenesis in healthy humans. Civitarese AE, Carling S, Heilbronn LK, Hulver MH, Ukropcova B, Deutsch WA, Smith SR, Ravussin E; CALERIE Pennington Team. PLoS Med. 2007 Mar;4(3):e76.  

なお、これらの研究に対しては、様々な方面から活発に研究されており、反論もあります。
Does calorie restriction induce mitochondrial biogenesis? A reevaluation. Hancock CR, Han DH, Higashida K, Kim SH, Holloszy JO. FASEB J. 2010 Nov 4. [Epub ahead of print]


Q10: 鳥のミトコンドリアからは、活性酸素が出にくいということだそうですが、そのメカニズムはわかっているのですか?


A10 ハトのミトコンドリアからは活性酸素が出にくい理由が詳細に研究されています。
むしろ、ミトコンドリアの呼吸鎖の複合体Iが少ない事が原因である事が示されています。
Low complex I content explains the low hydrogen peroxide production rate of heart mitochondria from the long-lived pigeon, Columba livia. Lambert AJ, Buckingham JA, Boysen HM, Brand MD. Aging Cell. 2010 Feb;9(1):78-91. Epub 2009 Nov 25.