Nippon Medical School ophthalmology website
image
image 外来案内 image 教室案内 image 入局案内 image 研究分野 image 研究業績 image 関連病院 image 学術集会主催
image
image 研究分野 TOPページへ
image
image
角膜
眼免疫
水晶体
糖尿病網膜症
網膜脈絡膜血管新生
網膜剥離黄斑疾患
手術教育
遺伝子治療
 
image
遺伝子治療
 遺伝子治療がはじまり10年の年月が過ぎた。世界中で4000人以上の症例を対象とし、400以上のプロトコールの元で臨床研究が実施されている。実施当初遺伝子治療は単一遺伝子疾患において異常遺伝子を修復するという試みから始まった。故障した遺伝子の変わりに正常な遺伝子を入れようと言う発想である。現時点では遺伝子治療が示す意味はもっと広義となり、疾患の治療を目的に、原因遺伝子ではないがその疾患に対してプラスとなる遺伝子を患者の体内に発現させることと考えられている。これは、多因子、多遺伝子疾患も対象に入ることを意味している。

 遺伝子治療では遺伝子を体内の細胞に入れる必要があるが、実際に体内に入れるにはどうするのか。細胞に遺伝子を入れる道具をベクターというが、現在最も広く使われているベクターはウイルスベクターである。ウイルスは人間を含む動物に入り込み自分の遺伝子を動物の細胞に送り込み、細胞分裂を利用して自分の遺伝子も増やし、細胞外にでてまた他の細胞に移り住むという性質を持っている。ウイルスベクターの原理は、ウイルスの自己増殖能や病原性をコードする遺伝子を取り除き、発現させたい遺伝子を組み込み、それを体内に導入して発現させたい蛋白を作り出すというものである。

 これまで米国で行われた遺伝子治療の結果としては当初期待された効果を上げることはできず、後述する多くの技術的問題に直面した。悪性腫瘍の場合、多くの対象例が他に治療法がない患者であったため、生命予後などから臨床成績が不良となったことが考えられるが、これまでの遺伝子導入技術では遺伝子導入効率、発現量、発現期間、特異的発現など様々な点で、実際の人間の体内で正常に発現しているレベルに届かないため、期待される治療効果が得られていないことが主因であろう。このことから現在の遺伝子治療研究は既存のベクターを用いた臨床的研究から、ベクターの基礎的研究が主流となり、研究の中心はベクターの性能向上に集中する方向へ移行してきた。

 眼科分野でも様々なウイルベクターを用いた基礎実験が行われてきている。我々は当大学の第二生化学教室と共同研究を行うことにより、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター(AAV)、レトロウイルスベクター、HIVウイルスベクターを用いて実験を展開してきた。レトロウイルスベクターは染色体に組み込まれる事で長期発現が可能であるが、逆に癌抑制遺伝子への挿入などの危険性を含んでいる事と非分裂細胞への導入は不可能である。HIVウイルスベクターはレトロウイルスベクターの欠点である非分裂細胞への導入を可能としたが、安全性の面で問題視されている。アデノウイルスベクターでは長期の遺伝子発現を行うことができない。AAVは細胞障害性や病原性がないため安全性の点で優れたベクターである。AAVの不顕性感染は一般的で、成人の85%以上がAAVの抗体を持っている。野生型AAVは19番染色体の特定の領域に組み込まれることが知られており、これはベクターとして重要な長所として期待されたが実際にはAAVのREP遺伝子を欠損した組み替えウイルスベクターではこの性質が失われていることが明らかにされている。AAVベクターは染色体に組み込まれるがその頻度はレトロウイルスに比べると低く、場所もランダムであると言われている。また非分裂細胞にも遺伝子導入できるが、その場合は染色体に組み込まれるのではなくエピゾーマルに留まると言われているため安全性が高いと言える。

 現在、我々は最も期待されているAAVベクターを主に使用して基礎実験を行っている。近年AAVにはサブタイプが数多く発見され、種類により導入しやすい、またしにくい組織があることが分かって来た。我々はこのような特徴を眼組織でどのような特徴をもつか比較検討を行いながら、様々な動物モデルに対し、治療遺伝子をウイルスベクターに組み込み、実験を展開している。