当院の新人看護師研修の目的は、新人看護師が周囲の職員から支援を受けながら看護実践の基礎能力を形成し、所属組織の一員として責任ある行動ができるようにすることです。当院看護部では、看護師に求められる姿勢及び態度、習得すべき知識・技術等を『ジェネラリストのためのクリニカルラダー』の中に示し、新人看護師として必要とされるコンピテンシー(看護実践能力)を獲得できるように支援します。
「レベル 新人」が認定されると認定証が授与されます。
1.新人看護師の支援体制
研修責任者の教育方針に基づき、各看護単位において、教育担当者ならびに新人看護師指導者(直接の指導者)が中心となって教育計画を作成します。臨床現場の特徴をふまえながら、新人看護師が現場に適応し臨床実践能力を獲得できるように、看護師長をはじめ看護スタッフ全員で支援します。

2.新人看護師研修の枠組み
厚生労働省の指針に基づいて研修を段階的に進めます。具体的には、当院に所属する看護師として必要な基本的姿勢と態度や、日々の看護実践に必須の看護技術とマネジメントを学びます。看護部による中央教育(Off‐JT)と配属部署における教育(On‐JT)が連動しながら進みます。
3.入職時オリエンテーション
入職した新人看護師が一堂に会して、当院の看護職員としての姿勢・心構えや、臨床現場で必須の安全な看護技術など、職務の遂行に必要なオリエンテーションを受けます。具体的には、当院組織の機能と特徴、看護部の概要、職員に求められる姿勢、病院内規則のほか、輸液法や内服薬の与薬、採血技術、医療安全・感染防止対策、ME機器の取り扱い、看護記録、電子カルテの操作などが含まれます。
4.新人育成コース
入職時オリエンテーションに引き続き、年間を通じて、新人看護師の成長段階に応じて必要とされる知識・技術の習得を目的とした教育プログラムが行われます。このプログラムでは、基礎看護教育(学校)において学習した知識・技術の復習のみならず、臨床看護師として確実な実践能力の獲得をめざします。また、対象理解を深め看護者としての自分自身を振り返ったり、同期入職者と親交を深めたりするプログラムも用意されています。
5.新人看護師支援システム
看護部では、新人看護師の職場適応を支援する目的で、同期入職者同士が配属部署を離れて、悩みを共有したり解決法を話し合うフォローアップ研修を開催しています。また、本人の希望や状況に応じて、看護部教育担当者やリエゾン精神専門看護師、臨床心理士に悩みや不安を相談することができます。
新人看護師研修スケジュール
4月 |
医療安全 感染管理 看護記録(電子カルテ) インシュリンの取り扱いなど
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5月 |
ME機器の取り扱い (輸液・輸注ポンプ、パルスオキシメーター、AED)など
摂食嚥下看護 フィジカルアセスメント
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6月 |
心肺蘇生 口腔ケア 心電図講習会 新人フォローアップ研修
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7月 |
多重課題シミュレーション など
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9月 |
受持ち看護と看護過程 看護過程演習 対象理解とコミュニケーション
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10月 |
対象理解とコミュニケーション
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11月 |
受持ち看護と看護過程演習
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1月 |
がん看護基礎
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2月 |
新人フォローアップ研修
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3月 |
クリニカルラダーⅠ授与
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臨床経験年数やジェネラリスト看護師の看護実践能力(クリニカルラダー)に応じて役割や能力を向上させることができるコースです。研修はすべて勤務時間内に受講することができます。
1.受け待ち看護育成コース
臨床経験2年目以上を対象に受け持ち看護師の役割を学ぶコースです。受け持ち看護師としての必要な知識を集合教育で修得し、所属部署で患者さんを担当し一連の看護過程を展開します。
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研修プログラム |
研修内容 |
1日目 |
医療・看護の動向と看護の専門性 |
・医療・看護の動向、看護の専門性、
看護の質についての講義
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看護部の理念 |
・本大学看護部の理念についての講義 |
看護倫理 |
・本大学の看護職員倫理規定についての講義 |
看護倫理事例検討 |
・事例における倫理問題をグループで検討 |
2日目 |
モジュラー型受け持ち看護方式と受け持ち看護師の役割 |
・看護提供方式、モジュラー型受け持ち看護方式、受け持ち看護師の役割について講義 |
看護過程 |
・事例動画を視聴し、問題点を抽出
・グループワークで看護計画を立案・発表
・電子カルテ看護システムについての講義
・看護記録の書き方についての講義・演習
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退院支援 |
・事例を用いた退院支援プロセスの講義・事例検討
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受け持ち看護師の演習オリエンテーション |
・演習に向けた受け持ち看護師としての自己の課題の明確化
・演習の進め方などの説明
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演習 |
受け持ち看護師としての演習 |
・自部署で受け持ち看護師として患者を担当し、看護過程を展開 |
2.リーダー看護師育成コース(ベ-シック・アドバンスト)
1)ベーシックコース
モジュラー型ナーシングにおけるリーダー看護師の役割を理解して、リーダー看護師としての役割を担うことのできる看護師を育成します。
研修プログラム |
編集内容 |
リーダー看護師の役割 |
・リーダー看護師の役割基準についての講義
・自部署の特徴を踏まえ自己のレポートをもとに課題についてグループ内で共有
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リーダーシップ |
・自部署でリーダーシップがとれている看護師はどのような看護師かグループで共有
・リーダーシップのとは何かについて講義
・自己のリーダーシップの傾向をチェック
・PM理論についての講義
・ワーク"ディレクション"でメンバーへの関わり方と自分のスタイルについて理解
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リーダー看護師の教育的役割 |
・受け持ち看護師として役割モデルの実践、受け持ち看護師への指導についての講義 |
リーダー看護師の管理的役割 |
・ケア管理、安全管理、業務分担と調整、カンファレンスの運営についての講義 |
看護の質 |
・ドナベティアン・モデルの質の構造と評価、PDCAサイクルについての講義 |
看護倫理 |
・事例の看護場面を倫理的視点で検討 |
2)アドバンストコース
熟達したリーダー看護師として、所属部署における問題や課題を見出し、解決・目標達成に向けてマネジメントサイクルをまわすことができる看護師を育成します。
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研修プログラム |
研修内容 |
1日目 |
リーダー看護師に求められるコンピテンシー |
・リーダー看護師に求められる能力・資質の条件、リーダーシップとは(SL理論など)についての講義・GW |
教育的役割の実践 |
・受け持ち看護師への動機づけ、教育的手法についての講義・GW
・記載基準に基づいた看護記録と監査についての講義・GW
・看護過程の指導についての講義・GW
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退院支援 |
・医療動向と退院支援の方法についての講義・GW |
2日目 |
管理的役割の実践 |
・看護の質、質改善活動についての講義・GW
・ケア管理・安全管理・時間管理、業務調整と業務分担、カンファレンスの運営についての講義・GW
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看護倫理 |
・リーダー看護師としての倫理事例の捉え方、看護倫理事例の分析(臨床倫理検討シート)についての講義・GW |
演習オリエンテーション |
・演習に向けたリーダー看護師としての自己の課題の明確化
・演習の進め方などの説明
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演習 |
リーダー看護師としての演習 |
・自部署でリーダー看護師としてリーダーの役割を実践
・臨床倫理検討シートを用いた事例の分析
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3.新人看護師指導者育成コース
平成22年度より、新人看護師の臨床実践能力を習得させるため、各病棟において専任で教育する指導者を育成します。院内の新人看護師の教育・支援体制、指導方法について学習し、定期的に実践状況や問題点を共有し、解決策について検討します。
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研修プログラム |
研修内容 |
1日目 |
当院の新人教育体制 |
・当院の新人教育体制についての講義 |
新人看護師の現状 |
・基礎看護教育の変遷と近年の若者の傾向について講義 |
新人看護師の精神的支援 |
・新人看護師の心理的な変化と支援方法について講義 |
看護技術の指導方法 |
・ポートフォリオ、看護技術評価表、ナーシングスキルの活用について講義 |
既卒看護師に対する支援 |
・既卒看護師の置かれた状況と支援方法について講義 |
2日目 |
ストレス・マネジメント |
・ストレス・マネジメントについてリエゾン精神看護専門看護師からの講義 |
指導の実際と今後の課題 |
・新人指導の状況・今後の課題についてGWで共有 |
臨床で必要な看護の専門性について、その知識や理論・技術を習得するコースで、新人看護師から経験者でも誰でも受講できるコースです。
講師は、専門看護師や認定看護師が担当し、最新の知識と技術を学ぶことができます。
クリティカルケアコース
急性期看護に必要な専門的な知識や技術を、救急看護認定看護師と集中ケア認定看護師が中心となって指導するコースです。このコースは講義のみに参加するコースと、講義と演習に参加するコースに分かれています。演習は集中治療室や高度救命救急センターにて実施されます。
呼吸ケア・呼吸管理コース
呼吸ケア・呼吸管理に必要な理論と実践を、講義やベッドサイドティーチングから学びます。呼吸ケアに必要な酸素療法をはじめ、閉鎖式吸引の実施、胸腔ドレナージの管理、呼吸不全患者のケアについて講義を中心に知識を深め、呼吸介助法や効果的な体位排痰法、スクイージングなどを演習によってスキルを習得します。
感染対策と感染看護コース
医療施設における正しい感染対策の実践は、病院におけるすべての人々を感染から守る上で大変重要です。感染管理コースでは、感染管理認定看護師を中心に、感染管理の知識と感染防止技術の向上を目指した年4回のコースを実施しています。根拠に基づいた知識と技術を基礎から応用まで学び、看護師として現場でどのように実践するのかを演習やグループワーク、受講者同士の意見交換を通して一緒に考えます。
ボディメカニクスコース
基本的な体位変換の方法や移動技術、そして日常生活の援助方法を理論や実践を交えて学習していきます。
指導者は、特別なトレーニングを受けた看護師が直接指導にあたります。実践を中心とした学習からは、患者、看護師にとって安全で安楽な方法であることが実感でき、日々の看護に役立っています。


皮膚・排泄ケアコース
皮膚・排泄ケアは、患者さんの身近にある問題ですが、そのケアには専門的な知識を必要とします。このコースでは皮膚・排泄ケア認定看護師が中心となり、専門分野の医師や薬剤師、栄養士の協力を得て講義を進めていきます。初歩的な段階から学べるため、新人看護師でも参加することが可能です。コースでは実習を多く取り入れ、実際に体験することで実践に還元できるようなプログラムを組んでいます。
がん看護コース
がん看護においては、集学的治療(手術、化学療法、放射線治療、緩和ケア)に関連した看護ケア、疾患の初期の段階から緩和ケアが実践できるよう、講義・グループワークを通して学習します。
糖尿病看護コース
糖尿病は日々の生活そのものが治療や病状に結びつく疾患であり、患者さん自身によるセルフケアが求められます。しかし、生涯病状と向き合うことは容易なことではありません。
患者さんが病状をコントロールしながら、その人らしいより良い人生を送れるよう支援するために、講義やグループディスカッションを通して糖尿病看護の知識・技術を習得し、日常の看護実践に役立てることを目的にプログラムを企画しています。
精神看護コース
日々臨床現場で起こっている事象から精神看護に関する話題を取り上げ、少しでも看護師の皆さんを専門的な視点からサポートできるような教育プログラムを企画、実践していきます。講義内容には、せん妄患者の理解とケアの実際、希死念慮のある患者のケア、抑うつ状態の看護、統合失調症の患者の理解とケアなどがあります。
老人看護コース
急性期病院に入院中問題になることが多い老年症候群(認知機能障害、廃用症候群、摂食嚥下障害)について理解し、日々の看護実践につなげられるようなプログラムを関連する領域の認定看護師(認知症看護、脳卒中リハビリテーション看護、摂食・嚥下障害看護)と共に企画しています。学習方法には、講義とグループワークがあり、認知症高齢者の生活のしにくさと身体的不調を見逃さないためのケアと観察、廃用性萎縮を予防するための介助法、嚥下機能が低下した高齢者のケア方法について学んでいきます。
透析看護コース
現在8人に1人が慢性腎臓病と診断され、透析患者さんも日本で30万人を超えました。
本コースでは、透析に至る前の慢性腎臓病の看護と、透析療法をはじめとする血液浄化療法という器械や装置に依拠した状態で患者さんがその人らしい生活が送れるように支援する看護について、知識を習得します。
摂食・嚥下看護コース
摂食・嚥下のメカニズムを理解したうえで摂食・嚥下障害のアセスメントができるよう学んでいきます。演習では、摂食・嚥下障害患者のケア方法ができるよう食事介助方法やトロミ剤の使用方法、その他、回復に向けたケアの各種訓練方法を学んでいきます。

中途採用看護師研修の目的・目標
中途採用看護師研修の目的は、中途採用看護師(既卒採用看護師も含む)が円滑な職場適応ならびに能力発揮ができるよう支援することです。中途採用された看護師の皆さんが、1日でも早く当院に適応し、これまで培ってこられた知識や技術、臨床看護経験などの臨床実践能力を発揮できるよう支援します。
目標は、1)当院看護部職員としての姿勢・態度、安全な医療提供するために必要なシステム・ルールなどを理解できる、2)早期の職場適応するために配属部署の組織風土を知り、安心して働ける人間関係を築くことができる、3)個人のキャリアにあった能力発揮をするために院内教育やリソースを活用できることです。
ジェネラリスト看護実践能力の考え方
入職当日看護部(教育担当師長)が面談を実施し、ジェネラリスト看護実践能力レベルを確認します。看護実践能力レベルに基づいて、配属部署は教育計画を組み立てます。
原則として、看護実践能力の高い中途採用看護師であっても、「レベル2 一人前」であることを配属部署で実践状況を確認してから次のレベルに進んでいただきます。
研修の進め方
1)個人の目標設定はジェネラリスト看護実践能力評価を基本に未達の内容や配属部署特有の知識・技術、中央の教育コースでの目標などを考慮して目標設定をします。
2) マイゴールシートに前期3ヶ月・後期3ヶ月の中期目標・毎月の目標を立案、月末に評価を行っていただきます。教育担当者(主任)・指導看護師からコメントします。目標が達成できていない場合は、どのような支援が不足しているのか、どのような支援方法やフォローがより適切であるか本人と相談していきます。
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時間 |
内容 |
担当 |
資料 |
第1日目 |
9:00~10:30 |
庶務課オリエンテーション |
庶務課 |
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10:30~12:00 |
医療安全管理部オリエンテーション
医療安全
感染制御部 |
安全管理部・感染制御部 |
ポケット版医療安全管理の手引き |
12:00~13:30 |
昼休み |
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13:30~14:30 |
当院の概要
看護部の概要(理念・倫理規定・職務記述・4病院の教育体制・服務心得・心の相談窓口・組織図・配置図・看護師業務・看護手順・看護基準・報告システム) |
看護部長 |
看護職員の手引き |
14:30~16:00 |
看護部の教育
・自己紹介ファイル記載
・日本医科大学ジェネラリスト看護実践能力評価表
・ポートフォリオの活用
・看護技術評価表の記載
・中央集合教育と分散教育
・ジェネラリスト看護実践能力評価表評価1と集合教育参加計画
・今後のフォローアップ計画 |
教育担当 |
看護職員の手引き
ポートフォリオ |
16:00~16:30 |
配属部署案内
挨拶・紹介
タイムカード・休憩室などの案内 |
教育担当配属部署師長 |
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第2日目 |
8:00~16:30 |
配属部署オリエンテーション |
配属部署 |
構成基準 |
第3日目 |
8:00~16:30 |
受け持ち看護師につきシャドウイング
当院や配属部署で提供している看護のイメージを掴んでいただきます |
配属部署 |
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第4日目 |
8:00~16:30 |
配属部署の計画に沿って教育の実施 |
配属部署 |
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第1週目 |
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・マイゴールシート記載
部署側からゴールの目安を提示し本人の希望とすり合わせをします |
フォローアップ1
配属部署を訪問し、勤務状況・マイゴールシートを確認します |
配属部署師長/ 教育担当 |
マイゴールシート(既卒者用) |
第2週目 |
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フォローアップ2
看護部教育担当が面談で適応状況を確認し、配属部署責任者と共有、必要な調整を行います |
配属部署師長/ 教育担当 |
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第2ヶ月目目 |
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フォローアップ3
看護部教育担当が面談で適応状況を確認し、配属部署責任者と共有、必要な調整を行います |
配属部署師長/ 教育担当 |
マイゴールシート(既卒者用) |
(第3ヶ月目) |
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(必要時フォローアップ4)
看護部教育担当が面談で適応状況を確認し、配属部署責任者と共有、必要な調整を行います |
配属部署師長/ 教育担当 |
マイゴールシート(既卒者用 |
第6ヶ月目 |
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ジェネラリスト看護実践能力評価表評価2
配属部署で半年後の評価を行い、看護部担当に報告し、必要であれば調整を行います |
配属部署師長/ 教育担当 |
ポートフォリオ |