日本医科大学医学会雑誌 Online Journal メインナビゲーションを飛ばす
総目次 > 号目次 > Abstract ホームへ戻る
Abstract

第18巻 2022年2月 第1号

全文PDF (827K)

■特集〔COVID-19に打ち勝つために:日本医科大学の取り組み(2)〕

克己殉公の精神と日本医科大学の取り組み
横堀 將司
日本医科大学救急医学

新型コロナウイルス感染症の急速な蔓延に対して,感染指定医療機関以外の医療機関でも診療が行われた.特に在宅診療,一次・二次救急医療機関を支援する,三次救急医療機関側においても迅速な体制整備が必要とされた.
 日本医科大学は克己殉公,わが身を捨てて,病める人々に尽くす精神のもと,平時の医療のみならず,救急災害医療にも大きく貢献してきた.日本医科大学救急医学教室も,その半世紀に及ぶ活動の中で,災害医療チームDMATや国際緊急援助隊医療チームJDRなどの国内外の災害医療システムの構築に貢献をしつつ,常に災害医療現場からも多くの知見を得てきた.
 今回,重症新型コロナウイルス患者の診療に即応する際にも,克己殉公の精神とともにこれら多くの災害時医療活動の知見が生かされ,この難局を乗り切ってきた.
日本医科大学付属病院のCOVID-19患者受け入れ態勢は,いわゆる災害医療対応時のCSCA-TTTに即した形で,救命救急科と感染制御部を中心とした管理体制を構築した.まずCommand and Control(指揮命令系統)を確立し,医療者の個人防護具(PPE)装脱着訓練を繰り返し,診療上の安全を確立した(Safety).さらには院内連絡体制を確立(Communication),そして患者を的確にアセスメント(Assessment)することにより,被疑例を感染症の疑い病床に集約した(Triage).
非COVID-19救急患者の受け入れを最大限確保するため,新型コロナウイルスの感染ステージに応じた,柔軟な病棟ゾーニングを行った.これらの原則を守った対応で,現在まで新型コロナウイルスによる院内感染・水平感染は見られておらず,COVID-19診療と一般救急診療の両者を滞りなく応需することができている.
 地域包括医療の最後の砦として,救命救急センターが機能を持続させるためにも,災害医療で得られた知識を応用することも有用であると思われた.
 本項では,日本医科大学付属病院高度救命救急センターにおける重症新型コロナウイルス感染患者への対応を例に挙げ,災害医療と感染症診療の親和性の高さを提示するとともに,今後の同様な事態への対処のためにもわれわれの見地を広く共有したい.

日医大医会誌 2022; 18(1), 3-8

Key words
COVID-19, 三次救急医療機関, CSCA-TTT, 地域包括医療

受付:2021年6月25日 受理:2021年6月25日

メインナビゲーションへ戻る このページのトップへ戻る