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Abstract

第18巻 2022年4月 第2号

全文PDF (2,453K)

■特集〔With Corona,Post Coronaにおける医学教育の展望(4)〕

コロナ禍時代のシミュレーション教育:VRを用いたOff the Job Trainingの展開
横堀 將司1,2, 藤倉 輝道3
1日本医科大学付属病院救命救急科
2日本医科大学救急医学
3日本医科大学医学教育センター

わが国における救急搬送は664万件/年を超え,人口高齢化に相まって益々増加傾向にある.個々の患者に迅速かつ最善の治療を施すのが医師の使命であり,常に診療の質を保つことが不可欠である.
しかし今,このコロナ禍で学生教育や若手医療者育成はそれに追いついているであろうか? 医学生・看護学生は国家試験対策,若手医師・看護師は働き方改革による労働時間制限やコロナ禍による実習中断からOn the Jobによる自己研鑽の場を失われつつある.緊迫した医療現場では,患者救命優先のため,医学生・看護学生や若手医師・看護師は患者に近寄ることもできない.教育の現場では,よりリアルで,インプレッシブな医学教育手法が求められている.
われわれは患者やご家族の許可をいただき,熟練した医療スタッフによる淀みない初期診療をVirtual Reality(VR)化し,学生授業や若手医師・看護師教育に生かす取り組みを始めている.学生や若手医療者が救急医学のエキスパートスタッフによる診療を繰り返し疑似体験でき,場所や時間を問わず的確な診療手順を体得できる.Smart Syncによるマルチモードにより複数の受講生目線を共有することでタイムリーなフィードバックも可能になっている.遠隔による授業展開をすることで,コロナ禍に負けない医療体制を構築するのみならず,教育の地方間格差も無くすことで医師の地域偏在解決などにも貢献できればと思う.
「机上の学問」という言葉は従来,実地的でない教育の代名詞として蔑まれてきた.VR教育ツールがわが国の医療のクオリティを保ち,多くの患者の救命に貢献することで,この言葉の概念を根底から変えることを強く期待している.

日医大医会誌 2022; 18(2), 129-134

Key words
Virtual Reality(VR),クリニカル・クラークシップ,救急医学

受付:2021年12月15日 受理:2022年3月4日

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