■特集〔膵疾患診療のトピックス〜基礎から臨床まで〜(2)〕
膵がん早期発見のための血液バイオマーカーの探索から臨床実装まで
本田 一文
日本医科大学大学院医学研究科生体機能制御学

膵がんは難治かつ頻度が低い.膵がんの早期発見には非侵襲的に膵がんリスクを濃縮し精密画像で早期診断する方法の開発が望まれている.膵がん患者血漿のプロテオミクス解析から膵がん血液中でapolipoprotein A2(apoA2)2量体のC末端切断異常(apoA2-isoforms:apoA2-i)が惹起されることを発見し,その状態を確認することで切除可能膵がんを診断できる可能性を報告してきた.ApoA2-iを測定するenzyme-linked immuno sorbent assay(ELISA)法を作製し臨床性能試験を実施したところ,CA19-9と同等以上の臨床性能が確認できたため,膵がんの診断を補助する体外診断用医薬品の製造販売承認を受け,2024年に保険適用された.本稿では,オミクス研究を用いた基礎研究による発見から,研究用試薬を用いた国内多施設研究や国際共同研究による臨床的有用性の概念実証,レギュラトリーサイエンスに従った臨床性能試験による体外診断用医薬品臨床実証まで,その過程を概説する.
日医大医会誌 2024; 20(2), 37-44
受付:2024年3月14日 受理:2024年3月15日 |