神奈川県で学び、未来の医療を支える看護師へ――地域と大学がともにつくる学びの環境
多職種が連携して医療を支える、神奈川県。
この地に新たな看護学科を開設することは、地域の声と期待に応える大きな一歩でもあります。日本医科大学は医学部教育で培ってきた伝統と、神奈川県の医療との強い連携を活かし「地域で学び、地域で働く看護師」をどう育てていくのか――。
日本医科大学医療健康科学部看護学科の開設にあたり、本学医学部長/医療健康科学部準備室 室長 近藤幸尋が、公益社団法人 神奈川県病院協会 会長 吉田勝明先生と語り合いました。

吉田 勝明(よしだ かつあき)
公益社団法人 神奈川県病院協会 会長。県内約85%の病院が加盟する協会をまとめ、「公衆衛生及び地域医療の推進に関する事業」と「病院医療の向上に関する事業」を柱に活動している。横浜鶴見リハビリテーション病院 院長でもあり「愛し愛される病院」を目指し、地域に寄り添う医療の実現に尽力。

近藤 幸尋(こんどう ゆきひろ)
日本医科大学 医学部長/医療健康科学部 準備室 室長。日本医科大学付属病院 泌尿器科 主任教授。泌尿器科腫瘍、特に内視鏡手術を専門とする。医学部教育100年以上の歴史を受け継ぎ、人間性と専門性を重視した教育改革を推進。武蔵小杉キャンパスで始まる看護学科の開設準備を主導している。
看護師不足という課題に応えて生まれた、看護教育の新拠点
――看護学科を開設した背景について教えてください。

近藤先生
医療界、特に神奈川県の需要に対して看護師の数が不足していることに加え、各付属病院のニーズに応えるため、という2点が看護学科を新設した背景として挙げられます。
少子化や高齢化が進むにつれ、慢性疾患・複合疾患を抱える高齢の患者さんが非常に増えています。地域包括ケアシステムなど、必要なケアの範囲は広がっているといえるでしょう。しかし、実際に医療の現場を支える看護人材は不足しており、特に都市部と地域の間では大きく偏りがあります。この課題を解決するには、看護師の人数を増やすだけでなく、質の高い教育を受けた看護師を育てることが重要だと考えています。
また、日本医科大学には医学部教育で培ってきた「人間性・倫理性を重視した教育の蓄積」と、付属病院群を中心とした豊富な臨床実習の場があります。4つの付属病院にはそれぞれ特徴があり、付属病院では高度急性期医療、武蔵小杉病院では周産期などの若い世代に向けた医療、千葉北総病院ではドクターヘリなどの救急医療、多摩永山病院では高齢化が進む地域での医療などを強みとしています。
日本医科大学の看護専門学校は以前からあるのですが、各付属病院のニーズが教育に十分に反映されていない状況が課題でした。大学として各付属病院との連携も強化しながら現場のニーズにも応えたいという想いもあり、今回の看護学科の新設につながっています。

吉田先生
神奈川県は、対人口比で見ると病床数が47位、看護師数も47位と“全国最下位”です。病床数を増やすことももちろんですが、まずは看護師数をしっかり確保することが、喫緊の課題だと感じています。
神奈川県には、横浜やみなとみらいのような都市部もあれば、真鶴や湯河原のような高齢化の進む地域もあり、神奈川は多様な医療ニーズを抱えています。このような幅広い需要がある神奈川県内に看護学科が新たにできることは、大きな意味を持ちます。大学での学びと付属病院での実習がつながることで、地域医療を支える即戦力として地域に定着することを期待しています。
支え合う医療の文化が根づく、神奈川で学ぶ
――神奈川県で医療を学ぶことに、どのような魅力がありますか?

吉田先生
先ほど申し上げた通り、神奈川県内には若年層に対する医療から、救急医療、高齢者の医療までさまざまなニーズがあります。つまり、神奈川県にはそれだけ多くのフィールドで医療を学び、また活躍できるチャンスがあるということです。
また、神奈川県は病院同士の連携が取れていて、互いに支え合う文化が根づいています。人口あたりの病床数と看護師数が全国最下位であるにもかかわらず、神奈川県では救急搬送が滞ったり、たらい回しが起こったり、というニュースがほとんど出ません。それは「チーム医療」が浸透しているからです。
新型コロナウイルスの感染拡大時には、横浜港にダイヤモンド・プリンセス号が到着したこともあり、神奈川県の大学病院や民間病院が連携しながら対応しました。いわゆる「神奈川モデル」として日本中に模範を示した、それくらいの自負があります。
このようなチーム医療の最前線ともいえる神奈川県で医療を学ぶことには、大きな意義があると考えています。

近藤先生
吉田先生のお言葉通り、神奈川県の病院は支え合う文化が醸成されています。実は本学の看護学科のカリキュラムでも、多職種連携は重視している項目の一つです。実習では、医師、薬剤師、リハビリスタッフ、ソーシャルワーカーなど、病院を支えるすべての職種と協働しながら学ぶ経験を積んでもらいます。
急性期医療から在宅ケアまで多彩な現場で多職種と連携しながら学べば、状況に応じた優先順位を正確に判断できる能力を養えるようになると思います。
また、本学の理念である「ナースコールを鳴らせない看護」は、まさにチーム医療の中で活きる考え方です。チーム医療を意識しながら学ぶことで、患者さんの変化を迅速に察知して適切な看護ケアを提供できる力を養えるでしょう。
学びも暮らしも充実する街、武蔵小杉
――武蔵小杉にはどのような魅力がありますか?
近藤先生
看護学科の学びの拠点となる武蔵小杉キャンパスは、首都圏有数のアクセス環境を誇ります。武蔵小杉駅にはJRと東急各線が乗り入れており、東京や横浜、新宿などに30分以内でアクセスできます。付属武蔵小杉病院とは3階の渡り廊下でつながっており、学びと実践が結びつく環境でもあります。
これは、付属病院を要する日本医科大学ならではの特徴です。大学によっては、キャンパスから実習をする病院まで離れている場合もありますが、そのようなストレスが少ないことは学生にとって恵まれたことだと思います。
吉田先生
武蔵小杉は、街の中に医療が溶け込んだ場所です。私自身の学生時代も同じでしたが、実習先の病院が生活圏のすぐそばにある環境というのは、とても恵まれています。「医療が日常のすぐ隣にある」という感覚が、自分の成長にもつながりました。
また、医療者として働くうえで、オンとオフの切り替えも本当に大切なことです。武蔵小杉からは、少し足を延ばせば鎌倉のような歴史ある場所や、箱根のような自然あふれる場所にも行けます。学生にとって、リフレッシュを適度にしながら勉学に励みやすい環境だと思います。
神奈川県の幅広いフィールドでの活躍を期待
――神奈川県で看護師として働く魅力、卒業生への期待についてお聞かせください。

吉田先生
看護師は女性が特に多い職業ですが、最近では神奈川県の病院でも時短勤務や日勤のみなどさまざまな働き方がしやすくなっています。ライフステージの変化にも応じて働き続けやすい環境だといえます。
病院同士のネットワークもとても充実しているので、例えば事情があって今まで通り働けなくなっても、他の病院に移るなどのキャリアチェンジもしやすいです。
神奈川県の医療は、全国の“フロントランナー”でありたいと思っていますし、日本医科大学で学ぶ学生にも、その一翼を担ってほしいと強く期待しています。ぜひ神奈川で働くメリットを存分に活かして成長し、多くの現場で活躍していただきたいです。

近藤先生
本学で学んだ学生には、神奈川県の多様なフィールドを活かしながら、幅広い医療の現場で力を発揮してほしいと考えています。地域全体を見る視点を持ち、チーム医療の中で調整役を担える看護師として活躍することを期待しています。
また、吉田先生の“フロントランナー”という言葉にとても共感します。武蔵小杉を拠点にしながら、日本全国へと活躍を広げる看護師が本学から育っていくと信じています。
看護師を目指す受験生へ
――看護師を目指す皆さんへ、メッセージをお願いします。
近藤先生
本学の看護学科では「人を全人的に看る力」と「科学的根拠に基づく実践力」の両方を大切に、まずは患者さんを1人の人間として理解する姿勢を身につけてほしいと思っています。医学部で培ってきた教育や豊富な環境を活かし、最先端医療から地域ケアまで、一貫して学べるのが本学の特徴です。
そして「ナースコールを鳴らさせない看護」という理念のもと、患者さんの変化を敏感に察知し、先回りして支援できる力を一緒に育んでいきます。
武蔵小杉キャンパスは、病院と直結した環境の中で学びと実践、そして地域とのつながりを実感しながら成長できる場です。地域とともに学び、地域を支える看護師になってくれることを願っています。
吉田先生
看護は、病気を治すだけの仕事ではありません。患者さんの“人生そのものに寄り添う仕事”です。私は長い間、治す側として医療現場に立ってきましたが、あるときに自分が入院して改めて、看護の力を強く実感しました。入院中の当時は言葉にできない不安もありましたが、看護師さんがそばで声をかけてくれたり、ふと笑顔を向けてくれたり、その一つ一つが心に染みて、本当に救われました。
医師が「これ以上できる治療がない」と思う場面でも、看護師は患者さんや家族の心を癒すことができます。「治せない病気はあっても、癒せない悲しみはない」のだと、信じています。
看護師は誇り高い仕事であり、患者さんと家族の心を支える存在です。神奈川県という豊かなフィールドで学びながら、一緒に未来の医療をつくっていきましょう。
まとめ
日本医科大学は、武蔵小杉キャンパスを拠点に最先端医療から地域ケアまで、幅広く学べる環境を整えています。学生のうちから神奈川県のチーム医療に触れ、学びを重ねた先には、自分の成長を実感できる多彩なフィールドが待っています。
「ここで学ぶ時間が、神奈川の医療と自分の未来を変えていく」そんな想いを胸に、一歩を踏み出してみてください。