公開日:2026.02.06

「人を看る力」を、ここから――変わりゆく医療を支える看護師を育てる

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「人を看る力」を、ここから――変わりゆく医療を支える看護師を育てる

超高齢社会や医療DXが進む中、医療現場は日々変化を続けています。

現場の第一線で活躍する医師と、看護教育を担う大学がどのように連携し、次代の看護師を育てていくのか――。

日本医科大学医療健康科学部看護学科の開設にあたり、本学医学部長/医療健康科学部準備室室長 近藤幸尋が、神奈川県立循環器呼吸器病センター所長 小倉髙志先生と、医療現場の変化や求められる看護師像、そして看護師の教育のあり方について語り合いました。

小倉 髙志(おぐら たかし)
神奈川県立循環器呼吸器病センター 所長/間質性肺炎センター長。1983年に自治医科大学を卒業後、神奈川県内の複数の医療機関で臨床経験を積む。現職では患者さんに寄り添い、呼吸器の幅広い高度専門医療を提供している。

近藤 幸尋(こんどう ゆきひろ)
日本医科大学 医学部長/医療健康科学部準備室室長。日本医科大学付属病院 泌尿器科 主任教授。泌尿器科腫瘍、特に内視鏡手術を専門とする。長年にわたり、泌尿器科学やライフサイエンスの研究に携わる。現在は看護学科の開設準備を統括し、現代の医療現場で求められる看護師の育成に尽力している。

医療の進化とともに広がる、看護師の役割と可能性

――ここ数年の医療現場で、どのような変化を感じておられますか?

小倉先生
コロナ禍を経て、医療現場は大きく様変わりし、看護師の役割はこれまで以上に広がりました。感染管理やチーム内での調整など、これまで医師が担っていた一部の領域にも踏み込み、現場を支える中心的な存在になっています。誰も正解がわからない状況の中、その場で判断しながら柔軟に対応することが求められたコロナ禍を通して、看護師の存在がより可視化された――そんな印象です。

同時に、社会全体からも「看護師は専門職だ」と広く理解されるようになりました。医療の安全性を守るうえで、看護師が果たす役割の大きさが再認識されたのだと思います。

近藤先生
小倉先生からコロナ禍の話がありましたが、医療現場の状況は、日々変化しているのが現状です。AIやロボット支援手術の普及、在宅医療の拡大、患者さんの高齢化にともなう慢性疾患や複合的な疾患の増加など、大きな変化を見せています。

このような変化に対応するためには、「技術と人間性の両立」「多職種連携」「在宅や地域包括ケアへの対応」「リカレント教育」を重視した看護教育が必要だと考えます。

患者さんとのコミュニケーションから信頼が生まれる

――これからの医療現場では、看護師にどのような力が求められるとお考えでしょうか?

小倉先生
これからの看護師に大切なのは、まず「観察力」です。患者さんの表情やしぐさ、声のトーンといった非言語的なサインを感じ取ることで、言葉にできない思いや変化がわかります。

その上で、自分が感じたことをどう伝えるかも重要です。「なんとなく違う気がする」で終わらせず、具体的な言葉で説明できる言語化能力が、安全で信頼される医療を支えることにつながります。

もう一つは、自分を客観的に見つめる「メタ認知」の力です。「なぜ自分はこう感じたのか」「なぜこう判断したのか」を一歩引いて考えられる人は、うまくいかなかったことを振り返って次に活かせるようになります。失敗しても、次はどう対処するかを考えられるでしょう。

そして、「コミュニケーション能力」も大切です。コミュニケーションというと話すことを意識するかもしれませんが、まず相手の話を聞くことから始まります。患者さんに寄り添い、相手の言葉の奥にある思いを受け止めることが、看護の原点だと感じます。

近藤先生
先ほどお伝えしたように、医療現場は大きく変化しています。こうした時代に求められるのは、変化に対応できる看護師です。

AIや最先端のICT機器を使いこなすスキルはもちろんのこと、患者さん一人一人に寄り添う力、ほかの職種と協力するためのコミュニケーション能力などの強化が重要だと考えています。

このように、技術革新に対応しながらも「人を看る力」を中心とした教育が、これからの看護には必要でしょう。

本学では、予測的観察力や倫理的判断力、人間性を兼ね備え、ICTを駆使しながらチーム医療の中心で働き、地域にも適応できる持続力のあるプロフェッショナルな看護師の育成を目指しています。

知識だけでなく「人を看る力」を養う看護教育

――現場で活躍できる力を、どのように育てていくべきだとお考えですか?

近藤先生
看護師に必要なのは、人間性と科学的根拠に基づいた実践力です。どちらか一方だけではなく、両方をしっかり身につけてこそ、現代の医療現場で求められる看護を提供できると考えています。

そこで、本学が基礎教育として提供するのが、生命科学や人間の成長発達、心理、社会的側面を統合的に学ぶカリキュラムです。これによって、単に患者さんの疾患を看るのではなく、「人を看る力」を育むことができます。

臨床実習では、急性期から慢性期、在宅、地域包括ケアまで幅広く経験し、予測的な観察力やアセスメント力の養成を重視しています。その中で、本学の理念である「ナースコールを鳴らさせない看護」を実現するために、患者さんが訴える前に何を求めているかを察知し、先回りして支援できる感性を目指しています。また、いきなり臨床の現場に出すのではなく、低学年のうちからVR(仮想現実)を使ったシミュレーション教育を通して、あらゆるケースに落ち着いて対応できるような力を養っていく予定です。

このほかに、他職種との協働を意識したコミュニケーション教育や最新機器の活用法の学習、患者さんの尊厳と意思を尊重する倫理観の育成にも注力しています。

また、現場に即応できる看護師になるには、変化の早い時代に適応するために学び続ける姿勢を育てることも、重要だと考えます。

小倉先生
現在の医療現場はシステムや安全管理が整い、失敗が起こりにくい環境になってきています。もちろん、患者さんにとっては良いことですが、一方で、学生や若い看護師が「失敗から学ぶ機会」が少なくなっているとも感じます。

シミュレーション教育は、そうした現場の特性を補う重要な機会になると思います。頭で理解するだけでなく、実際に体を動かして試行錯誤することで、自分の中に染み込んでいくような学びになるはずです。

大学と病院が連携して密に情報を共有し、学ぶ目的を明確にした実習環境を整えること。そして、学生が安心して挑戦できるような環境づくりをともに進めていくことが、今後さらに大事になっていくと思います。

看護の道を志すあなたへ

――最後に、受験生の皆さんへメッセージをお願いします。

近藤先生
本学の看護学科は、「人間性と科学性を兼ね備えた看護師」を育てる環境を整えています。日本医科大学付属病院と一体となって看護教育をするので、フライトナースをはじめとする高度医療の現場での臨地実習を通じ、観察力や判断力、チーム医療のスキルを磨くことが可能です。

そして、本学の看護学科では「ナースコールを鳴らさせない看護」という理念を大切にしています。この理念に基づいて、患者さんが症状を訴える前に気づいて先回りする姿勢を学ぶことで、真に信頼される看護師へと成長できるでしょう。

また、看護学科のキャンパスの立地も大きな魅力です。武蔵小杉は交通アクセスが良く、付属病院や地域医療の現場がすぐ近くにあります。身近な現場で学べる環境が、実践的な力を育ててくれるでしょう。

看護師は、人の生命と生活に深くかかわる尊い仕事です。本学での学びを通じて、確かな専門性と豊かな人間性を養い、自分自身の未来を切り拓いてください。私たちは、意欲と情熱をもって挑戦する皆さんを心から歓迎します。

小倉先生
看護師の仕事は、人の人生そのものに寄り添う仕事だと思います。「もし自分の家族だったらどうするか」という想像力を持って、患者さんと向き合ってください。

医療現場では大変なことがいろいろとありますが、一人で抱え込まず、チームの中で助け合いながら働くことも大切です。仲間と支え合い、学び合うことで、自分の力をより発揮できます。

大学では、多くのことを学ぶため大変に感じることもあるかもしれませんが、楽しみながら学ぶことが一番大切です。深刻になりすぎず、前向きな気持ちで取り組んでいきましょう。資格は大きな財産ですし、ぜひ、自分らしいペースで、長く続けられる看護の道を歩んでください。

まとめ

医療の進歩や社会の変化が加速する今、看護師には「知識」や「技術」を超えた力が求められています。

その力を育てるために、日本医科大学は病院と一体となって教育に取り組み、学生一人一人が「人を看る」看護師として成長できる環境を整えています。

患者さんの気持ちに寄り添い、確かな知識と温かい心で支えられる看護師を育てていく――。それが本学の目指す看護教育です。

日本医科大学は長年の看護教育の実績をもとに、神奈川県の武蔵小杉から、現代医療を支える看護師を輩出します。

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