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漢方・鍼灸の注目点ブログ

更新履歴(新しいものが上に来ます)
090814 本間棗軒と水戸の弘道館
090819 鍼灸は脳神経を再生し脳血液循環を向上し認知症治療に有望:国際フォーラム第5席のパネリスト
090818 鍼灸の基礎と鍼灸によるお年寄りのQOL:国際フォーラム第4席のパネリスト
090817 認知症に対する北京の対策と中国漢方の対応:国際フォーラム第3席のパネリスト
090816 認知症診療における漢方治療の採用:国際フォーラム第2席パネリスト
090815 手ほどきとしての日本漢方の概観:国際フォーラム第1席パネリスト
090813 認知症と小川村と本間棗軒(そうけん)と水戸藩
090812 鍼治療は五臓六腑にない“脳”を活性化する(ハーバードとNIH)
090809 中医学の臓器名は解剖学的臓器には一致しない
090808 中国の医学は日本で独自の発展をした。
090807 認知症の漢方治療のメッカ 北京中医薬大学訪問
090806 “漢方”は中国の用語ではない
090805 ブロガー自己紹介 川並汪一
090804 化学工業日報 漢方の国際標準化問題
090801 漢方鍼灸の情報国際化
090705 認知症市民公開講座 推進委員会 会則
090703 プログラム
090702 開催概要
090701 認知症市民公開講座認知症国際フォーラム  ―漢方と鍼灸による予防と治療―

ブログ090814

本間棗軒と水戸の弘道館

 本間棗軒(玄調)の銅像(写真)を水戸三の丸公民館前にあるのを見つけた。碑によると“水戸藩医で、小川村(現東茨城郡小川町)に生まれた。父祖の始めた稽医館に学び、17歳で原南陽に師事し、漢洋折衷の学識と医術を修めた。斉昭の招きによって弘道館教授に転じてからは、講義、治療、記述などに活躍し、水戸藩医政の第一線を担い、数多い著書は現代医学徒にも尊ばれている。” 大原八郎のはるか前に野兎病を発見し記載したのも棗軒である。
棗軒の8代前の本間道悦は近江の侍出身で松尾芭蕉との交流があったらしい。江戸から茨城県の潮来そして小川村に居を構えるまで本間家は優秀な養子をとり、すべて立派な医師として育った。その間小林一茶との交流もあり本間家の医師はみなさん教養ある文人でもあった。直系の子孫の方は、現在栃木県高根沢町宝積寺で整形外科を開業されているらしい。いつかお会いしたいと思っている。
水戸徳川斉昭により設立された弘道館へ行けば、関連資料の展示があるはずと思って出かけた。弘道館は17ヘクタールの敷地に医学、剣術、馬術、音楽、数学、天文学などを教授したというから、“天保時代の大学“であったといえよう。剣術試験の野外道場、斉昭アイデアによる潜水艦や大砲、戦車の設計図、その子徳川慶喜が江戸城を明け渡してから蟄居した部屋などが展示されていた。しかし、医学、天文学に関する展示は一切なく物足りなくも残念であった。
隣接する茨城県立図書館で見つけた棗軒関連文献の中で最も詳細な記載は、常陽藝文センター出版の常陽藝文1995,5月号であった。それによると、私事で恐縮であるが、“当時の本間宗家の所在地は小川町小川の横町と呼ばれる地域で、今は川並医院が建つ辺りとされる。しかし現在の医院やその建物は本間家とは直接関係がない。”とあった。
わが家は、大正時代の2階建てで、父の無きあと川並医院は看板を外してひっそりとたたずんでいる。

 

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ブログ090819

鍼灸は脳神経を再生し脳血液循環を向上し認知症治療に有望:国際フォーラム第5席のパネリスト

韓景献先生は1946年生まれで、天津中医薬大学第1附属医院院長として鍼灸学教授を務めている。
韓顔写真b プレゼンテーション1
韓景献教授は認知症の専門鍼灸家であり、ご自分で新しい鍼法をあみだされた。それには、
・「益気調血、扶本培元」「三焦の気を動かし、三焦の血を整え、後天の本を助け、先天の元を培う」という効果がある。老年性認知症患者の認知状態と生活能力を改善することができる。
・臨床研究および基礎実験研究により、本治療法は脳老化に対して確かな効果が認められることが実証された。
・435名の認知症患者に対する臨床試験研究を通じて、本治療の短期効果と長期効果が、ともにヒデルギンによる効果よりも著しく優れていることが実証された。
・本治療法は血管性認知症患者の記憶力、計算力を著しく改善することができ、見当識力の改善は特に顕著であった。
・アルツハイマー型認知症患者に対し、本治療法は記憶力、見当識の能力面で著しい改善がみられ24週後の追跡調査時でコントロール群(アリセプト服用群)よりも有意に効果があった。
・老化促進モデルマウス(SAM)に対しても「益気調血、扶本培元」鍼法は、寿命を延長させ、平均延長寿命は11%、最大では24%であった。またSAMの空間記憶の獲得と保持の改善、および再学習能力、思惟能力、分析判断能力に改善が認められ、認知症動物の全体的な認知機能において、ともに改善作用が認められた。

・神経病理学的研究によると、SAMマウスの海馬神経の脱落と神経膠細胞(グリア細胞)の異常増殖を減少させ、両者のバランスを維持させることが明らかになった。またSAMマウス脳内の新生細胞の増殖能を著しく促進し、有害物質による神経細胞の損傷を除去することができる。

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ブログ090818

鍼灸の基礎と鍼灸によるお年寄りのQOL:国際フォーラム第4席のパネリスト

兵頭明先生は1953年生まれで、後藤学園ライフエンス総研中医学研究部部長、天津中医薬大学客員教授として活躍中です。

鍼灸の興味ある注目点について平易にご紹介します。
・中国では2000年以上、日本でも1500年にわたって、継承されてきた、“1人1人が持っている力を大切に守り、そして発揮させる”という考え方が東洋医学の真髄です。
・脳、耳、腰、膝、骨、歯、髪といったキーワードとそれに関係する諸症状は、特定の病態と連動して起こってくると東洋医学では考えています。多くの症状に対し個々に解決していくのではなく、トータルに全人的な医療を提供するのが東洋医学です。
・日本では2025年を目標にした、「70歳現役社会で高齢者の健康・働き甲斐・満足度・QOLを大幅向上、老若男女一人ひとりが志を持ち心身ともに元気」のテーマを実現するためには、全人的な医療が必要とされることでしょう。
・認知症の問題についても認知機能の問題だけを見るのではなく、全人的な視点をもった取り組みが日本では行われはじめています。
・東西医学の連携をベースにして、認知症に対する医療ネットワーク、街ぐるみ支援ネットワークの中で日本の漢方、鍼灸の果たせる役割を一緒に考えてみたいと思います。

 

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ブログ090817

認知症に対する北京の対策と中国漢方の対応:国際フォーラム第3席のパネリスト

張允嶺先生は1963年生まれで北京中医薬大学東方病院神経内科教授として活躍中。

お話の内容は、

・2000年以来、北京中医薬大学付属東方医院は患者と介護者の意見から、認知症自己判別システム(A,B法)を独自に開発した。
・15万人の地域住民をカバーする東方医院は、所在の地域内に15の医療拠点を設置し、定期的に健康教育講座を開催している。認知障害自己判別システムの使用方法を指導して、軽度認知障害に対する承知率、診断率の上昇に繋がるか否かを検討中である。
・自己判別システムに加え、2006年のNINDS-CSN基準に基くスクリーニングシステムにより血管性の軽度認知障害の患者を、認知障害の中核症状と生活に密接に関わる周辺症状を観察した。
・また、脳白質疎松による軽度認知障害患者を3級目標群として設定した。
・●(※1)方●(※2)蓉益智カプセルをメインに、兪穴経絡按摩法等の中医の特有の方法で中医薬による総合展開した。中医薬による認知能力と周辺症状の改善、QOLの上昇に有効で副作用が少なく、安全性が高いという結果が分かった。

※1 ※2

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ブログ090816

認知症診療における漢方治療の採用:国際フォーラム第2席パネリスト

水上勝義先生は1959年年生まれで、現在筑波大学大学院人間総合科学研究科精神病態医学系准教授として従事されている。

講演の要旨は、

・認知症は、もの忘れと判断や実行機能の低下が中核となる疾患である。
実際には無いものが見えたり聞こえたりする幻覚、「お金を盗られた」などと主張する妄想、抑うつ、興奮などの精神症状や、暴言や暴力などの攻撃的言動、徘徊などを周辺症状といい、患者さんは環境面の影響をうけてこれらの症状を悪化させる。
・周辺症状は介護保険を介した福祉サービスの活用や環境調整そしてお薬により治療される。
・抗精神病薬とよばれるお薬は、向精神薬の中で副作用が大きく高齢者には問題となる。
・漢方薬抑肝散が、アルツハイマー病、脳血管性認知症、レビー小体型認知症の患者さんの周辺症状に有効なことが報告されてきた。
・漢方治療にも副作用の発生があり、中核症状に対する評価は不明で今後の課題である。


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ブログ090815

手ほどきとしての日本漢方の概観:国際フォーラム第1席パネリスト

秋葉哲生先生は、1947年生まれで、現在あきば伝統医学クリニック院長慶応義塾大学客員教授などをお勤め中です。

お話の要旨は、

・日本漢方の歴史、東洋医学と西洋医学の違い、東洋医学が認知症に果たす役割など。
・森谷尅久著『京医師の歴史』(講談社刊)に書かれている竹田千継(ちつぐ)という若い医学生のお話しを紹介します。
・当初日本は、固有の医学である和方を実施していたが奈良時代に、長寿の薬で老化を防止する枸杞(くこ)が伝えられた。沐浴にもその水を用いると、七十歳になっても顔色は少年のようにつややかで、髪は黒く皮膚はつやがあり長寿を全うできるというこの中国の逸話からも分かるように、平安朝には漢方が実践されるようになった。
・江戸時代には、日本の風土や考え方にふさわしい日本の漢方医学が盛んになった。
・明治に制定された医学制度をもとに、長所を伸ばし欠点を克服することで現代まで脈々と受け継がれている。


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ブログ090813

認知症と小川村と本間棗軒(そうけん)と水戸藩


私はかつて子供時代を過した田舎は東茨城郡小川町(現小美玉市)である。離れて半世紀近く経ち今や我が家に誰も住んではいない。しかし盆は蓬莱山永福寺で説教を聞き、そのあと頂くミョウガと唐辛子の利いた“冷やしうどん”は正に故郷の味と香りである。それゆえに毎年の墓参りは欠かすことが無い。  
10年ほど前に、町の片隅に“本間玄琢の生家”博物館をみて以来、玄琢の墓参りも習慣となった。驚いたことに母校の小学校に稽医館跡があり、それは水戸烈公(徳川斉昭)が水戸弘道館の医学研修の分校として玄琢に与えたことを知った。本間棗軒(そうけん)は玄琢の孫で文化元年(1804)小川村に生まれた。華岡流外科の大成者として、また種痘の普及にも努めたらしい。
水戸藩の名医原南陽になみなみならぬ薫陶を被っている。杉田立卿につきオランダ医学を学び、華岡青洲の門に入った。そのあと長崎で種痘の術を学びつつ、シーボルトの医術を観察している。
江戸時代といえば、曲名瀬道三、原南陽、浅田宗伯などの漢方と蘭学の知識をもつ医師がよく知られている。その中で本間棗軒(そうけん)はボケ(認知症)すなわち健忘の臨床症状について本邦ではじめて詳細な記載をしている。そしてそれを元に健忘処方をした日本での最初の漢方・蘭方医といえる。

(本間玄琢の生家;
出典 http://kouikikankou-ibaraki.jp/spot/ogawa/





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ブログ090812

鍼治療は五臓六腑にない“脳”を活性化する(ハーバードとNIH


中医学では、“気”が主張されておりギリシャ医学の“精気“に類似する。しかし西洋医学には経穴と経絡のような概念はない。この経穴・経絡は多くのヒトがその解剖学的存在を証明しようとしたものの、これまでに十分な証拠は提示されていない。解剖学で証明されない経穴と経絡を念頭に入れたヒトの生理的反応は、それにもかかわらず立派に認められていたし、現代医学でもそれを証拠立てる多くの業績が加わりつつある。
ハーバード大学医学部麻酔科では、鍼治療に関する講義が毎年定期的に開催され、多くの臨床医が大学院教育として参加している。日本の漢方から発展した長野式腹診を取り入れたという鍼治療法(kiiko style)は世界的に広く実践されしかも多くの支持を得ている。
一方でNIHやWHOが代替医療とか補完医療と称して数年前から大規模な宣伝を始めているのはご承知の通りである。身体の末梢部位に鍼治療を施すことで、ヒト脳はその活性度を大きく変化させるといわれている。functional MRI、CT、SPECTなどで分析されつつ、脳血流循環の改善、記憶力の増大、快活さの復活など情緒面での改善も認められつつあるらしい。それらの体系的な結果は知的財産としてハーバード大学で保護され現時点ではほとんど公開されていない。東洋医学の効能がアメリカのトップレベルの研究として多角的に分析されつつある。最先端の西洋医学的手法から、現時点で不明の中医学の疑問点が徐々に明らかにされるものと思われる。解剖学的には決して証明されなかった経絡、経穴の機能についてその新たな意味が紹介されるようになると思われる。近い将来大きな爆発的な話題として注目されるに違いない。

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ブログ090809

中医学の臓器名は解剖学的臓器には一致しない 

 ギリシャ医学ガレノスの体液論は、身体に起こる現象をきわめて推論的にあるいは哲学的に表現したという意味では、中国医学での理論的背景である陰陽五行論に相当するといえる。西洋医学は、その後、べサリウスが人体解剖により臓器を正確に記載し、古典派ガレノスの理論に反発したことは有名である。やや遅れてイギリスの科学者フック(1635〜1703)が顕微鏡を作りコルクの研究をして細かな仕切りを発見し“細胞”と名付けた。
中国医学では、この解剖学と顕微鏡学の発展による影響がみられず、陰陽五行論が継続してきたように思える。私の現在の知識が不足しているせいで、詳細は不明であり、実際には日本漢方の歴史的実情を反映しているだけかもしれない。
東洋医学でいう統一体観とは、ヒトも自然も宇宙を構成する要素であり、人体内部の組織も同じように統一体としてみなすことである。五臓六腑の五臓とは、心・肺・脾・肝・腎で六腑とは小腸・大腸・胃・胆・膀胱・三焦よりなる。三焦は別としてこれらの名称は、現在西洋医学で翻訳された解剖学的臓器名に相当するから話が複雑化するといえる。
漢方関連の書物を見ると、人体臓器のイラストが必ず付いており、その説明によると、西洋医学での臓器とは一部重なりつつも、全く異なっていることに気づかされる。

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ブログ090808

中国の医学は日本で独自の発展をした。 

 東洋医学には、中国伝統医学(漢方・鍼灸)、アーユルヴエーダ(インド)、イスラム、チベット医学などがある。中国の中医学は、紀元前の春秋・戦国時代から前漢、後漢にかけて医学としてのまとまりが出来てきたようである。
中国最古の(AD1〜2世紀)医書“神農本草経”には、生薬の薬効に関する記載がある。また春秋戦国時代以来の医学論文を整理した“黄帝内経”には、生理、病理、鍼灸治療法が記載されている。そして3世紀には張仲景が生薬処方集として“傷寒雑病論”を著わし、 “傷寒論”として現在に伝えられている。
中国の古典医学は “人と自然の統一体”であり、陰と陽のバランスで健康が保たれ、そのバランスが崩れることで未病から病気になってゆくという陰陽五行説で説明されている。
我が国最古の医学書は、帰化した中国人の子孫(丹波康頼)が平安時代にまとめた“医心方”がある。中国医書からの実用的部分の引用が主であるらしい。
16世紀になると、李時珍の“本草綱目“が広がり、日本では曲直瀬道三(李朱医学)が足利、毛利、織田信長、豊臣秀吉、天皇家の信任を得て発展し、”後世方派”といわれている。
江戸時代の中期以降、観念的医学を嫌い貝原益軒、山脇東洋、原南陽などが“傷寒論”を基礎にした実践的“古方派”が台頭し日本独自の漢方が発展していった。
19世紀の江戸末期には、シーボルトがオランダ医学(蘭学/蘭方)を伝えてきた。緒方洪庵、華岡青洲、本間棗軒らが漢方との折衷を図った。
ところでその後明治政府は、西洋医学を医学の中心にそえて、漢方廃止を決定した。その後漢方・鍼灸は主として民間レベルで存続した。
1950年に日本東洋医学会が設立され、1976年に漢方エキスが薬価基準に収載された。
2001年文部科学省は和漢薬の必要性を訴え、医学教育モデルカリキュラムに取り入れた。
2006年日本東洋医学会は専門医制度を発足させ現在にいたる。
一方、日本では、いうなれば独自の漢方を展開している間に、中国では、中医学がどのように進み、どちらに向かいつつあるかについては、ほとんど関心がもたれていない。今回のフォーラムではその不明の領域も明らかにしたいものである。

以上より分かるように、日本が独自に創造・開発したオリジナルの医学は無い。漢方、蘭方、ドイツ医学を吸収・折衷し、自分達の味付けをしながら展開してきたといえる。


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ブログ090807

認知症の漢方治療のメッカ 北京中医薬大学訪問 

 平成20年10月に、認知症街ぐるみ支援ネットワーク事業のメンバーは北京中医薬大学東方病院の神経内科・張允嶺教授を訪問した。この大学では、痴呆症(認知症)患者の相談・診断・治療を地域の医師たちと共同で実施している。大学の医療担当者が一定期間地方へ出張し、数週間の期間で数千人を対象に面談、診断し早期発見、治療の実践活動を積み重ねている。この事業は、日本医科大学老人病研究所が実施している“街ぐるみ支援“の取り組みと同じ趣旨を有している。この張允嶺教授は、本年10月31日の認知症国際フォーラムに特別パネリストとして来日し講演して頂く予定である。


北京中医薬大学東方病院の玄関前

前列左から、川並、張允嶺教授、大久保(本学精神科教授)、野村(同心理学教授)と後列右は老人病研究所病理部門認知症国際フォーラム推進委員の金恩京


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ブログ090806

“漢方”は中国の用語ではない 

“中医”の本来の意味は症状を「中和」することであったらしい。今では“中国の医学”と理解されている。
韓国では中医と区別して韓医と称される。韓医は西洋医学の全ての手法を応用できない。そして、西洋医師は韓医の手法を使うことができないので、完全に2分割されている。それが多くの係争の種になっている。
日本では、江戸時代に入ってきた蘭学の蘭方との対比から漢方と銘銘された。だから和製用語であり中国人も漢方とはいわない。しかしいまやKampoとして広まりつつある。明治維新から西洋医学が政府公認の医学教育となり、東洋医学教育は排除された。鍼灸専門学校だけで漢方東洋医学教育が残されているが、実態はほとんど西洋医学的な鍼灸学で東洋医学の内容は非常に少ない。
2001年以来、全国の全ての医学部に漢方医学の外来や教育時間が設けられている。また多くの診療所で漢方が処方されている。昔から馴染んだ漢方処方のせいであり、日本の医者が東洋医学を使え、健康保険が使用できるからである。
上海中医薬大学附属日本校の孫樹建(Sun Shujian)教授(JST中国総合研究センター提供第12回研究会2008.11.17)によると、現在の中医は最新のMRI,CTなどの機器を用いて西洋医学的に診断し、その結果中医薬を最初に使うらしい。
生命現象に対する中医学は整体観念(物事の全体を考える意識)を重んじ、生命現象の機能表現に対する認識に重きをおく。例えば中国医学の五臓六腑の一つとされる脾は解剖学にいう脾臓でも膵臓でもない。中医では、脾は、胃、小腸、大腸、肝臓、胆のうなどを統べる機能を持つものとされていますが、実際は架空の臓器であり存在しない。
中国医学における陰陽は、もともと中国哲学の理論で医学と関係がない。当時は、ほかの自然科学の理論がないから、医学者が陰陽五行の理論を用いて医学を解釈し説明していたのです。もともと医学的理論ではないから陰陽五行を用いて臨床の研究をしても意味あるものではない。
経穴の“合谷”に鍼術を施せば、歯の痛みを抑えることができる。“足の三里のツボ”で胃腸の活動が明らかに変化する。しかしそれぞれの経穴がどう関係しているか、今の解剖学では説明できない。
中国の漢の「傷寒論」には多くの処方が載っている。日本の製薬会社はその処方のままに薬をつくり番号をつけて、病気に対応するように使っている(漢方)。しかし2000年前の処方は、そのときの植物、そのときの人の体質、そのときの薬の使う量などを記述したもので、今の我々に合っているのか、あるいはその処方せんにある症と現代医学の臨床診断との関係が一致しているのか、不明である。中医では、患者さんにしばらく薬を飲ませた後に、患者さんの症状に合わせて薬を加減する処方をしている。日本の漢方は、ほとんど処方を変えずに患者さんに薬を与える西洋医学を実施している。このように日本の漢方は中国の中医の方法とは全く異なる方向で発展したことが分かる。

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ブログ090805

ブロガー自己紹介 川並汪一 

 お付き合いさせていただく川並です。
平成21年3月末日をもって日本医科大学(大学院老人病研究所所長)を退任、 文科省の社会連携事業の代表を北村伸神経内科准教授にお任せし、現在私は社会連携事業顧問・名誉教授として認知症相談センターに出かけ、主として認知症国際フォーラムの準備を進めています。
退職前は、退職後がどんな日々になるか不安もありました。しかし、現実には思う間もなく、5ヶ月がすっ飛んでゆきました。
ところで医学教育と教授会、学術論文と顕微鏡の世界から完全に足を洗う羽目になったのは確かです。現在は全く違う世界に踏み込んでおります。週末のjog-walkingは、今や毎朝5時半の習慣となり、1時間で6〜7,000歩を目安に続けています。週末はその倍近くとなりました。このせっかくの節制もときどきの飲みすぎと食べ過ぎで効果半減、体重を落とすことは至難の業です。
近来お付き合いしつつある関係者は、医療関係者と一味違うのが明らかです。わたしの生来の“のんびり魂“は、この他業種世界のスピードについてゆけないようです。仕事を進める周波数が違い、その長短、強弱さまざまな勢いはきわめて刺激的ですらあります。その波にサーファーとして臨むか、潜水泳法のスイマーとなるか勝負がかかります。ときには船か陸に上がり、模様を眺めたいのですが、その余裕を与えてはくれません。
新たなこの環境、その意味では面白くもやりがいがありそうです。

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ブログ090804

「漢方」の国際標準化問題で日・韓・中の対立 

一概に漢方・鍼灸というものの、中国の漢方は日本と韓国で独自に発展したといえる。
漢方・鍼灸の発祥は中国であるが、韓国と日本には紀元5~6世紀にそれぞれの国に紹介された。その後中国の古方を離れて、独自の発展の過程を辿ってきた。中国でやがて発展した「中医」と、日本の和漢方、韓国の韓方とはかなり異なり差別化されるほどの特徴をみせている。
WHOの先導により、その後国際疾病分類(ICD)に準拠した東アジア伝統医学の医療情報データベース策定を開始した。その一つとして、韓国は鍼灸の経絡300余りを韓国の標準に合わせてISOに提案した。ところがこの経絡は中国のものとは90余りの違いが生じたことで中国、韓国の間の論争が起きている。一方中国は、国際標準化機構(ISO)にtraditional Chinese medicine (TCM)の技術委員会(TC)設置を提案した。それに対して、日本(漢方)と韓国(韓医)は、医療は標準化になじまないし、中医の支配力強化を望まないことから反対している。その間、WHO植物薬モノグラフやESCOPモノグラフなど、植物薬・生薬製剤のグローバル・スタンダードを策定する試みが着々と進められている。中でも米国FDAによる植物薬ガイダンス(draft)の公表はその動きを加速させている。日本側の対応が急がれるところであるが、一子相伝的環境の中にある和漢方・鍼灸は統一見解を提示することに対して身構えるところが多いようである。
(2009年8月4日 化学工業日報 医療/ライフ&コンシューマーより)
*日本東洋医学会会長(千葉大学寺沢捷年和漢診療学教授)は日本東洋医学サミット会議(JLOM)にて産学官組織設置を期待し要請している。
*慶応大学漢方医学センター主催「漢方の国際医療情報に関するフォーラム」開催

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ブログ090801

一子相伝の漢方・鍼灸医学が国際標準化を模索
「第一回伝統医学の情報標準化に関する非公式協議」

毎年発行される全ての医学論文情報は、アメリカのNational Library of Medicine(NLM/NIH国立医学図書館)に収録されている。
漢方・鍼灸は長い歴史と伝統を持ち、アジアにとどまらずアメリカ、ヨーロッパなど世界中で広く利用されつつある。ハーバード大学麻酔科には、鍼灸の特別講座も開講され西洋医学の医師にも幅広い啓発活動がなされている。西洋医学には認めがたい効能と長所が経験的に認識されているため大変な人気である。しかしながらこの領域の大きな欠陥は、一子相伝的に伝えられた技術であるため世界標準語で語れない点にある。
その意味で、WHO 西太平洋事務局が試みた伝統医学標準化に関するプロジェクトは時宜を得た素晴らしい発想である。日中韓の3国から代表が参加し試みる内容は、1)経穴位置、2)専門用語、3)エビデンスに基づく診療ガイドラインを作成することである。具体的には、を設定するため、各国において統一化医療言語体系(UMLS)、疾病分類(ICD)、文献検索用語集(MeSH)、概念志向用語集(SNOMED)の応用がどの程度なされているかの現状紹介がなされた(表)。

表: 日中韓における伝統医学情報標準化の現況

  日本 中国 韓国
疾病(症候群)ICD  分類コードほぼなし GB/T 15657 (1995) KCDOM-2 (1994)
シソーラス MeSH 系統的なものはない TCM-MeSH-2 (1996) MeSHOM (1999)
標準化言語体系UMLS なし TCM-LS (構築中) 提案中
標準化への政府の関与 消極的 積極的 積極的

伝統医学における標準化の策定において中国が突出し、その後を韓国が走り、日本はまだ走り出してもいないほど、遅れている事実が明白となった。日本の鍼灸領域においては、国家レベルの標準化は国家試験出題基準のみである。中韓は伝統医学を自国の特徴ある資源としてサポートする態勢があり、政府が深く関与している。参加各国は伝統医学情報標準化の重要性を認識した上で、東アジア伝統医学の疾病分類、検索用語集、概念志向用語集の標準化を目指して3つのワーキング・グループを立ち上げた。
一方日本では、伝統医学に関する協議を海外から求められたときの政府機関の窓口すらない。全日本鍼灸学会や日本東洋医学会を含む日本の伝統医学関連学会が連携し2005年にJLOM(Japan Liaison of Oriental Medicine:東洋医学サミット会議)という新たな枠組みが発足した。(全日本鍼灸学会雑誌 2005年55巻 621-630)

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ブログ090705

日本医科大学老人病研究所は、認知症市民公開講座を開催するに当たり、以下の会則と推進委員会を設定した。その主たる目的に、国際フォーラムの開催がある。

【認知症市民公開講座 推進委員会 会則】

第一章  総則
第1条  本会は「認知症市民公開講座 推進委員会」と称する。
第2条  「認知症市民公開講座」は推進委員会(以下推進委員会)を組織する。
第3条  事務局は日本医科大学老人病研究所街ぐるみ認知症相談センターに置く。

第二章  目的
第4条  本会の目的は、社会連携事業「街ぐるみ支援ネットワーク」の趣旨である「認知症の早期発見と予防」と「認知症になっても安心して暮らせる街作り」を前提とし、一般の方および福祉・介護・医療関係者向けの認知症市民公開講座の開催を推進することにある。

第三章  推進委員
第5条  本会の目的を遂行するための推進委員によって構成される。
第6条  本会の構成は以下の通り。
1)  委員長     1名
2)  委員      6名
3)  監事      2名
4)  その他アドバイザーをおくことができる
第7条  監事は、推進委員会の実行に伴い監査、報告を行う。

第四章  推進委員会
第10条  推進委員会は本講座の運営について決定し実行する。
第11条  推進委員会の決定は出席者の過半数をもって行う。但し、欠席者の委任状は出席とみなす。
第11条  推進委員会は本講座の運営に関する事項を審議し決定する。

補則 本会則は平成21年7月1日から施行するものとする。

第6条に基づき推進委員は次の通りとする。

推進委員長
川並 汪一  認知症街ぐるみ支援ネットワーク事業 顧問
日本医科大学 名誉教授

推進委員
日本医科大学
北村 伸   認知症街ぐるみ支援ネットワーク 研究代表
武蔵小杉病院神経内科学 准教授
野村 俊明  基礎科学心理学 教授
金 恩京   老人病研究所 講師

川崎市
坂元 昇   健康福祉局 医務監
伊藤 和良   経済労働局 産業振興部長

社団法人老人病研究会
佐藤 貞夫   事務局長

特別アドバイサー
学校法人後藤学園
兵頭 明   中医学研究部長

NPO法人コミュニティ ケア ネットワーク
廉隅 紀明  理事長

監事
石橋 榮次  川崎市中原区小杉町一丁目町会 会長
上田 淳   上田会計事務所 所長

 

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ブログ090703

認知症国際フォーラム【プログラム】(予定)

第1部 講演 13:00〜14:40

認知症と中国漢方
張 允嶺   北京中医薬大学神経内科学教授
認知症と中国鍼灸
韓 景献   天津中医薬大学鍼灸学教授 第一医院院長
日本漢方の概観
秋葉 哲生  あきば伝統医学クリニック院長 慶應義塾大学客員教授
認知症と漢方
水上 勝義  筑波大学大学院精神病態医学分野准教授
日本の鍼灸
兵頭 明   後藤学園中医学研究部部長 天津中医薬大学客員教授

休憩

第2部 パネルディスカッション 15:00〜17:00

総合司会

北村 伸
宮川 泰夫

パネリスト

張 允嶺
韓 景献
秋葉 哲生
水上 勝義
兵頭 明

このパネルデイスカッションでは、認知症治療と予防策についてフロアからも積極的に意見を募り、討議してもらう予定である。
また、“中医“と”和漢方”それにそれぞれの国における鍼灸治療についてその特徴をまとめることも期待の一つである。
一般的な意味合いからすれば、世界中に広まった東洋医学の手法とその効果について、国際標準化をめぐっても話題は尽きないように思う

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ブログ090702

認知症市民公開講座 認知症国際フォーラム

開催が以下の内容で準備されつつある。
【開催概要】
1.会 期
平成21年10月31日(土)
13:00〜17:00

2.会 場
エポック中原 (南武線 武蔵中原駅前)
川崎市中原区上小田中6-22-5 電話:044-722-0185(代表)

3.主 催
日本医科大学老人病研究所文部科学省社会連携研究推進事業
川崎市
社団法人老人病研究会

4.実 行

認知症市民公開講座 推進委員会

5.後 援(予定・順不同)
厚生労働省、中国大使館、NHK、朝日新聞、読売新聞、神奈川新聞、日本医師会、日中医学協会、川崎市医師会、(社)全日本鍼灸学会、(社)日本東洋医学会、(社)日本伝統鍼灸学会、学校法人後藤学園、セイリン(株)、学校法人東京有明医療大学、日本認知症学会、日本認知症ケア学会、認知症介護研究・研修東京センター、日本老年医学会、老年精神医学会、日本精神医学会、認知症の人と家族の会、全国老人保健施設協会、日本リハビリテーション学会、日本精神科病院協会、全国地域包括・在宅介護支援センター協議会、アルツハイマー病研究会、NPO法人高齢者医療研究機構、レビー小体型認知症の家族を支える会

6.参加予定者数
約950名

7.対 象
一般市民
漢方・鍼灸医療および福祉・介護・医療関係者

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ブログ090701

認知症市民公開講座 認知症国際フォーラム  ―漢方と鍼灸による予防と治療―

日本医科大学老人病研究所は、2007年に採択された文部科学省私立大学学術研究高度化推進・社会連携研究事業の課題“認知症街ぐるみ支援ネットワーク”の一環として本年度も認知症国際フォーラムを開催することにした。

【目的】
身体的に健康な人でも85歳を過ぎると4人に1人は認知症に罹患するといわれる。治療法に限界のある現時点では、早期発見による予防がもっとも重要な課題である。近年、WHO(世界保健機構)やNIH(アメリカ合衆国国立衛生研究所)は、鍼灸や漢方が治療効果を発揮する可能性を見出し、西洋医学の補完候補としてその重要性を強調しつつある。

 2,000年以上前に著わされた中国最古の医学書『神農本草経』と漢代の『黄帝内経』『傷寒論』は三大古典といわれる。これらの鍼灸・漢方の伝統医学は奈良時代以来日本に伝えられて、この古典派から多くの専門流派に受け継がれて日本独自の大きな発展を示してきた。一方中国では現在、中国伝統医学と西洋医学を同時に重視することが憲法に盛り込まれており、国家戦略として新たな東西医学の連携が行われており、大きな成果をあげている。日本と中国は現在、ともに急速に超高齢化社会を迎えつつある。両国ともに東西医学のそれぞれの長所を活かしつつ、さらに東西医学の新たな医療連携を推進することによって、高齢者がかかえる様々な医療問題に対処していくことが急務とされている。認知症もその中の大きなテーマの1つである。

 北京中医薬大学東方医院は、認知症治療にアリセプトも応用しながら実績を上げ中国漢方医療界をリードしている。また認知症患者に対するコミュニティ・サポート(街ぐるみ活動)は当方の社会連携事業と共通の目的を持っている。一方、天津中医薬大学第一付属医院では、鍼灸を認知症治療に応用しその有効性を西洋医学的に実証(EBM)しつつあり、中国鍼灸医療界を牽引している。それぞれのトップの代表者に認知症対策の最先端を紹介していただく。また日本側の鍼灸・漢方の代表者にも参加していただき、日本と中国のそれぞれの取り組みによる成果と課題を発表してもらい、それらを比較対照しながら今後の認知症予防と治療に対する新たな展開と可能性を期待したい。

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