脳神経血管内治療

脳神経血管内治療(のうしんけいけっかんないちりょう)について Neuroendovascular therapy

概要

血管内治療は、大腿動脈などから細い管(カテーテル)を血管病変まで挿入して、血管の中から病気を治療する方法です。
血管撮影という検査から発展し、カテーテルを用いた手技は画像装置、マイクロカテーテルなどの技術の進歩により、血管内で作業するまでに進化を遂げました。従来の手術が開頭を伴うのに比較して、侵襲が小さいため近年注目を浴びている分野です。
例えば次のようなものがあげられます。

  1. 開頭による手術が困難な脳動脈瘤に対するコイル塞栓術
  2. 脳動静脈奇形に対する液体塞栓物質を用いた塞栓術
  3. 頸動脈狭窄症に対する血管形成術(ステント)
  4. 脳腫瘍の開頭手術前の腫瘍栄養血管塞栓術

当施設では、脳神経血管内治療学会の専門医を中心に、低侵襲かつ安全な治療法を確立するべく努力を進めています。

治療の対象となる主な疾患

  1. 脳動脈瘤(破裂、未破裂)
  2. 脳動静脈奇形
  3. 硬膜動静脈瘻
  4. 脊髄動静脈奇形
  5. 血管外傷
  6. 頸動脈、頭蓋内動脈および鎖骨下動脈狭窄症
  7. 血管性腫瘍
    その他

代表症例

(1)破裂脳動脈瘤に対するGDC(コイル)塞栓術

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*術後  コイルにより動脈瘤が写らなくなりました。

(2)脳動静脈奇形に対する液体塞栓物質を用いた治療

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*治療により異常血管は閉塞されました。

(3)頸動脈狭窄症に対するステント留置術

(現在、ステントは保険適応となっておりません。)

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(4)髄膜腫

血管に富んだ腫瘍に対して、手術前に腫瘍を栄養する血管に対して塞栓術を施行しています。

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血管内治療の利点

  1. 一般的に体への負担が少なく、高齢者や合併症を伴った患者さまにも、治療の機会を開くことが出来ます。
  2. 同様な理由から、治療後の入院期間が開頭手術に比較して短く、早期に社会復帰が可能となります。
  3. 開頭手術で直接見にいくことが困難な病変でも、血管の中から到達すれば、容易に治療可能なことがあります。

血管内治療の欠点

  1. 治療中に合併症が発生した時には、開頭手術よりも症状が重篤になる危険性があります。
  2. まだ歴史の浅い治療法であることもふまえ、治療後も定期的に十分な経過観察が必要です。
  3. 血管の屈曲、蛇行などにより病変に到達出来ず、治療が出来ないことがあります。
  4. 放射線を用いた治療なので、常に被曝による合併症を念頭に置く必要があります。

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「脳神経外科学教室」

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