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形成外科

ケロイド」と「ケロイド外来」について

ケロイドとは?

ケロイドとは何?   

 ケロイドとは、創傷治癒過程が遷延して炎症が続くために、炎症細胞の集積、血管の増生、線維組織の蓄積が起こる病気です。簡単に言うと「【コラーゲンやそれを作る線維芽細胞】と【血管】のかたまりの中に、様々な【炎症を起こす細胞(炎症細胞)】が散らばっている腫瘍」です。コラーゲンの塊が硬いので腫瘍は硬く、血管が多いので赤く見える、という訳です。その一番の特徴としては、「元の傷を超えて広がる」ことで、放置しても軽快することがほとんど起こらず、成長し続けます。見た目も悪くなるし、患者さんが最も苦労するのは、【炎症細胞】が発する物質により痒さ・痛さが強い事です。
 一言で瘢痕と言っても、専門的にはケロイド、肥厚性瘢痕、成熟瘢痕、瘢痕拘縮などがあり、瘢痕に似ている皮膚線維肉腫なども鑑別に上がります。ケロイドだと診断を受けて長期にわたり治療を受けていても、実は全く違う腫瘍だったという事は外来で時々経験することでもあります。
 ケロイドは特に意識しないような小さな傷やにきびなどからもでき、まるで何もない場所に突然できたようにも思えることがあります。患者さんが「突然できた」とおっしゃるときは、ほとんどがニキビから発生したと思って良いでしょう。それ以外に手術や外傷、BCG接種痕やピアスなどが原因になることが多いです。
 好発部位は、前胸部や肩まわり、上腕、下腹部、耳、下顎角部などです。それ以外には、臀部や大腿、上腹部、前腕などにも発生する場合がありますが、下腿、手足、頭、下顎角部以外の顔は非常にまれです。

ケロイド外来について

 ケロイド外来では、赤く盛り上がる「きずあと」である【ケロイド】や【肥厚性瘢痕】を診察・治療しています。これらの腫瘍は、赤く盛り上がって痒みや痛みを伴う、たいへん不愉快なものです。多くの患者さんが、「治らないと言われてきた」「いろいろ試したけど嫌になってやめてしまった」「このくらいは治療の必要がないと思っていたけど酷くなってきた」と言って来院されますが、その苦しみや不安は本人にしかわからないものです。
 この腫瘍は治療が難しい上に、体質、年齢、できた場所によって最適な治療法が異なり、ベテランの形成外科医でも判断に苦慮することが多い疾患です。そのためこの外来は、ケロイドに特化した専門の知識を有し、そのような患者さんの苦しみを少しでも減らすことを目的としてつくられました。
 異常瘢痕の患者さんはもちろん、そうかどうか分からない方でも、少しでも心配なことがありましたらどなたでもお気軽に御相談ください。

ケロイドの原因究明

  •  ケロイドの原因は、私がケロイドの治療や研究を始めた20年ほど前においては全く分かっておらず、いわゆる「不治の病」とされていました。いまだに年配の外科医や皮膚科医の先生方の中には、「治らない病気だから放置するように」と患者さんに指示する方が少なからずいらっしゃると聞きます。

 その発生頻度は人種によって差があることはわかっておりましたが、「アレルギーによっておこる」「真菌が原因」「悪性腫瘍の性質を持った良性腫瘍だ」とさまざまな意見があり、「線維芽細胞や膠原繊維の異常である」というのが一般的な常識でした。したがって、線維芽細胞に対して数多くの基礎研究がなされてきましたが、線維芽細胞の明確な異常は見つからずにおりました。
 そこで「耳の形によってケロイドの発生率が違う(*1)」ことから、「ケロイドはそこにかかる張力によって形態が変わるのではないか」という仮説を考えました。その仮説を確認するためコンピューターシミュレーションを行ったところ、「ケロイドは張力によって形態が変わり、張力こそが拡大の原因である」というケロイドの概念を大きく変える事実を突き止めました(*2)。またその後、留学先のスタンフォード大学形成外科において、傷にかかった力がどのように細胞に伝わっていくのかを研究し、その経路を突き止め、医学雑誌の最高峰であるNature Medicine紙に掲載されました(*3)

ケロイドの原因究明 ただ未だに、「患者さんのどこの細胞に異常があり、張力を細胞に伝える経路が暴走しているのか?」は不明であり、引き続きその研究を行っております。

*1、赤石諭史、河邊京子、小川令、百束比古:耳部ケロイドの伸展機序に関する考察.瘢痕・ケロイド治療ジャーナル. 1. 99-100. 2007.
*2、Akaishi S, Akimoto M, Ogawa R, Hyakusoku H. The relationship between keloid growth pattern and stretching tension: visual analysis using the finite element method. Ann Plast Surg. 2008 Apr;60(4):445-51.
*3、Wong VW, Rustad KC, Akaishi S, Sorkin M, Glotzbach JP, Januszyk M, Nelson ER, Levi K, Paterno J, Vial IN, Kuang AA, Longaker MT, Gurtner GC. Focal adhesion kinase links mechanical force to skin fibrosis via inflammatory signaling. Nat Med. 2011 Dec 11;18(1):148-52.

原因究明と治療とのつながり

 上で示したように、ケロイドや肥厚性瘢痕の原因には張力が大きく関与しています。わかりやすく図に示すと

ケロイドの治療

①張力や感染はケロイド悪化の根本原因であり、下記で示す『手』の役割を果たします。焚火をしている時のうちわをあおいでいる『手』ですので、張力や感染が多いと、たくさんあおぐことになります。
②たくさんあおぐと次に動くのは血管です。血管が拡張して様々な炎症細胞が集まってきます。
③集まってきた炎症細胞は風を送るかのように、炎症を強めるサイトカインを出します。
④サイトカイン(風)を送られた、線維芽細胞(薪)はメラメラと燃え上がり、コラーゲンをたくさん作ります。
⑤燃えた薪は、大きな炎をあげるのです。この炎の強さがケロイドの強さを表します。

 治療というのは「薪に水をかけるのか(リザベン®など)」「風を遮断するのか(ステロイドなど)」「うちわを止めるのか(ステロイド、レーザーなど)」「手を動かさなくするのか(減張療法、手術など)」といった方法に分かれます。
 外来の治療では、うちわや風を止める方法が多く、重度のケロイドの患者さんには張力や感染源を根本的に除去して「手が動くのを止める」手術治療がより推奨されると考えられます。

外来でのケロイド治療方法

瘢痕治療の名医として

A)内服薬

 飲み薬ではトラニラスト(リザベン®)や柴苓湯(保険適応外)が有効であるとされています。トラニラストは抗アレルギー剤であり、腫瘍や肥厚性瘢痕の中の肥満細胞が出す伝達物質を抑制することにより作用をきたすと考えられています。一時、異常瘢痕とアレルギーには関係がないといわれていましたが、最新の研究ではその関係性が示唆されており、効果は弱いですが再度見直されているお薬です。

B)外用薬

 塗り薬として効果のあるものにはいくつかあります。炎症を抑える目的での、ステロイド軟膏やクリームや、非ステロイド系抗炎症剤があります。また、ヘパリン類似物質などには保湿の効果があります。テープかぶれしやすい患者さんには、優しく良い治療だとは思いますが、効果が弱いのが難点です。また海外では、シリコンクリームなどを使用している事があるようですが、保湿以外の明確な作用機序は分かっていません。

C)シリコンジェルシートと圧迫

 シリコーンジェルでできたシート状のシートにはさまざまな種類があります。また、より安価なポリエチレンでできたポリエチレンジェルシートもあり、同様の効果が認められます。ジェルシートは長期間貼っておくことで、保湿や創の安静・固定の意味があります*。素材が柔らかくクッション性もあるため、服でこすれたりする疼痛が強い部分などにやさしく使用できる利点がありますが、汗をかくと容易にはがれてしまう難点もあります。
 また昔から、やけどのきずあとはサポーターや包帯などで固定することが効果的とされてきました。ケロイドや肥厚性瘢痕は、絶えず力がかかる部位にできる傾向が強いので、傷を安静に保つ意味で重要です。シリコンジェルシートやシリコンクッションをテープや包帯で固定することは、圧迫・固定の作用も働いていると考えられています。

*Akaishi S, Akimoto M, Hyakusoku H, Ogawa R. The tensile reduction effects of silicone gel sheeting. Plast Reconstr Surg. 2010 Aug;126(2):109e-11e.

D)ステロイドテープ

 最も多く利用されているものには、抗炎症剤であるステロイドがついているテープ(ドレニゾンテープ®、エクラープラスター®)があります。しかし、ドレニゾンテープは2023年夏に販売中止となりました。2024年4月頃には在庫消尽見込みです。今後は、エクラープラスターのみがステロイドテープの選択肢になりますが、効果はドレニゾンテープよりも強いため、我々は問題はないと考えております。

エクラープラスター(ステロイドテープ)の貼り方

E)注射

ステロイド(ケナコルト®など)を注射するのはケロイド治療の基本であり、どこの病院でも行われます。注射によって赤みや盛り上がりは著明に減少しますが、周囲の皮膚の菲薄化が生じることもあるのが欠点です。また硬い瘢痕の中に注射するため強い痛みがあり、女性ではステロイドの影響で生理不順が生じることもあるため注意が必要です。

F)レーザー

 ケロイドや肥厚性瘢痕の治療に、レーザーを使うことがあります。ケロイドや肥厚性瘢痕の中の血管を破壊したり、コラーゲンの分解を促進させることを目的としたものが主流です。*
 ただ、現時点では保険適応外であり、治療で使用する場合は自費で行う必要があります。

 *Akaishi S, Koike S, Dohi T, Kobe K, Hyakusoku H, Ogawa R:Non-contact mode long pulse nd:YAG laser therapy for keloids and hypertrophic scars、Journal of Wound Technology、2012.1

G)その他

 ひげ、陰毛や胸毛などがケロイド内に埋入されて感染を繰り返す場合、ケロイド部分の脱毛が効果をきたす場合があります。

ケロイドの手術治療

 以上は外来での治療方法です。「ケロイド手術」は下記リンクからご確認ください。

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