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ほくろ」「できもの」と『がん

ほくろとは

ほくろとは (1)

 ほくろとは、皮膚の表面に見られる濃褐色の色素斑の通称で、医学用語的には母斑細胞性母斑や単純黒子を指すものとされています。ただ、「ほくろ」として受診する患者さんの中には非常に多くの種類の腫瘍を含みます。例えば、脂漏性角化症、尋常性疣贅、脂腺母斑、グロムス腫瘍、表在性脂肪種性母斑、脂腺腫、神経線維腫、皮膚線維腫、リンパ球腫、など、切除しても「いわゆるほくろ」ではないことが多々あります。

かゆい大きいほくろは除去した方が良いか

 上で述べたように非常に様々な腫瘍が「ほくろ」として含まれているため、一概に「隆起している」ほくろが悪いわけではありません。
 ただ、昔から生まれつきあったものでも、

 ・大きくなってきた
 ・盛り上がってきた
 ・色が変わってきた
 ・血が出てきた
 ・ジュクジュクしてきた
 ・かさぶたができてきた

 といったように、「変化してきた」腫瘍は注意が必要です。そういったできものの中には’皮膚がん’が含まれている場合があります。小さくても、直径が6mm以上だったり、色や形が不整な場合は気を付けなければなりませんし、足の裏や手のひらや爪部分に発生する悪性の皮膚がんもあります。しかし、さまざまな種類の腫瘍があるため、専門医でも外見だけでは100%の診断を行うことはできません。診断を確定させるためには、切除したものを顕微鏡で拡大して細胞を確認する「病理検査」を行う必要があります。ただ、誤って悪性を疑って、大きく切除したことで整容面に問題がおきるのは問題です。


ほくろの診断と手術は?

ほくろの癌(皮膚癌)ってそもそも何なのか

 「最近顔のほくろが随分大きくなってきたけど、このほくろは『がん』なのかな…?」「昔できたやけどのアトになかなか治らないきずができたけど、これも『がん』…?」「『がん』って怖い!このほくろのせいで、すぐに死んでしまうの??」

 皮膚は体の中で一番面積の広い一つの「臓器」であり、また体の一番外側にあるので自分で毎日見ることの多い「臓器」でもあります。そのためからだのあらゆる「臓器」にできる可能性のある「がん」の中で最も早期発見がしやすく、見た目にも最も気になる「がん」の一つと言うことができると思います。体の内部にある臓器、たとえば「胃がん」「肺がん」「乳がん」「大腸がん」などは、どうしても毎日自分でチェックすることができないために、症状が出ない場合は進行してから気づかれる、もしくは年に一回の検診で気づかれるということが多いかと思いますが、幸いなことに皮膚がんは自己チェックで早期に見つかることの多いがんです。もちろん「悪性黒色腫(メラノーマ)」などのように早く進行・転移し、予後の悪い皮膚がんもありますが、「皮膚がん」の中には様々な種類があり、その中には「早期に気づかれることの多いがん」「他の臓器に転移しにくいがん」「切除してしまえば予後のよいがん」も多くあります。

ほくろの癌とは

様々な「ほくろの癌(皮膚がん)」

 皮膚がんにはよくあるものから珍しいものまで数多くの種類があります。ここでは比較的多く、「皮膚悪性腫瘍ガイドライン」にも取り上げられている4種類の皮膚がん、「悪性黒色腫(あくせいこくしょくしゅ)(メラノーマ)」「有棘細胞癌(ゆうきょくさいぼうがん)」「基底細胞癌(きていさいぼうがん)」「乳房外パジェット病(にゅうぼうがいぱじぇっとびょう)」を特に取り上げてご説明します。
 病院では、皮膚科で特殊な虫眼鏡のような器械(ダーモスコピー)で拡大してよく見たり、よくわからないときには試しに切除してみて細胞を顕微鏡で覗いてみたり(生検)することで確定診断が可能ですので、心配なときには早めに皮膚科・形成外科をご受診ください。様々な皮膚がん

悪性黒色腫(メラノーマ)

 「あくせいこくしょくしゅ」と読み、その名の通り黒く見える癌、すなわち「ほくろのがん」と呼ばれるものです。英語で「Malignant melanoma」と呼ぶために、単に「メラノーマ」と呼ばれることも多いがんです。非常に転移しやすい癌なので、皮膚がんの中では最も恐れられている癌の一つです。しかしそのため研究もよく進んでおり、様々な新しい抗がん剤治療も行われています。原則は早期切除手術なので、早めの切除手術が必要となります。

メラノーマ 見た目はほくろのように見えるため、自分でみるだけでは診断が難しいがんではありますが、自分でも「怪しいほくろかな?」と疑うことのできるわかりやすい所見、「ABCDE」が有名です。

メラノーマ2

有棘細胞癌

 「ゆうきょくさいぼうがん」と読みます。「見た目に棘(とげ)がある」というわけではなく、この「棘(とげ)」は細胞の形のことです。皮膚表面の細胞は隣同士の細胞と密接に繋がり合うため、細かい手のようなもの(デスモゾームと呼ばれています)を出して隣の細胞とつながっています。この細かい手=棘を持つ、皮膚表面の細胞ががんになったものが「有棘細胞癌」です。つまり有棘細胞癌とは、皮膚表面の細胞の癌といえます。このがんの特徴は、「日光によって皮膚表面の細胞がおかしくなったがん」ということです。例外はありますが、顔や頭、手の甲などの衣服で隠れない部分にできることが多く、固く盛り上がったり、生傷ができてジュクジュクしたり、特徴的な匂いを伴ったりします。皮膚の非常に浅いところにだけこの癌がある場合には、「ボウエン病(ボウエンは発見した人の名前です)」や「日光角化症」などの別の名前で呼ばれることもあります。

有棘細胞癌 悪性黒色腫ほどではありませんが、この癌も長く時間が経過すると転移を起こしやすい癌の一つです。切除手術が基本ですが、体の他の部分への転移を伴う場合には、化学療法や放射線療法などを組み合わせる必要がある場合もあります。

有棘細胞癌2

基底細胞癌

 「きていさいぼうがん」と読みます。表皮(皮膚の表面側)の一番下の層(基底層)にある細胞に似た細胞が、塊を作って増えるがんなのでこう呼ばれています。「がん」という名前ではありますが、基本的に転移しにくいがんです。転移はしないもののその場に留まり、深くまで進んで正常組織を破壊し続ける性格があるので、発見したらなるべく早く切除してしまうほうがよいがんです。このがんも原因の一つに日光があると言われており、顔、特に鼻やおでこ、まぶたなど少し盛り上がっているところに多いがんです。肉眼では青黒く見えるためにほくろと間違われることもありますが、皮膚科でよく使われる特殊な虫眼鏡(ダーモスコピー)で見ると特徴的な所見を示すため、近年は切除する前から正確に診断されることが多くなっています。基底細胞癌

乳房外パジェット病

 「にゅうぼうがいパジェットびょう」と読みます。もともと「乳房パジェット病」という、パジェット医師が発見した乳がんの一種の癌があり、これに非常に似た性質なのに胸以外のところにできるがんが後から見つかったため、「乳房外パジェット病」と呼ばれるようになりました。このがんは乳房以外の場所にできますが、発生する場所がほぼ決まっており、「わきのした」「外陰部」「肛門」の3ヶ所に限ってできることが原則です。この部分は汗を分泌する組織の一つである「アポクリン腺」という組織が多いことが共通点ですが、今のところなぜこの3ヶ所に乳房外パジェット病が発生するのかについてははっきりしたことはわかっていません。転移することは少ないのですが、なぜか同時多発的に発生することが知られており、もしこのがんが「わきのした」に見つかったら必ず「外陰部」「肛門」も調べなければなりません。逆もしかりです。また、がんの周囲がもやもやしていることが多く、見た目が普通の湿疹にも似ていて境界がはっきりしないために、一回の手術で全て取り切れないことがあります。そのため、他のがんではあまり行わない「マッピングバイオプシー(がんのまわりのたくさんの場所から一部皮膚をとって顕微鏡の検査を行い、肉眼では判断が難しいがんの境界の地図をつくる)」を行うこともあります。またがんのはじを取り逃がさないために、少し広めに切除する手術も推奨されています。乳房外パジェット病

その他の皮膚がん

 皮膚がんの種類は非常に多く、全てを説明することは困難です。たとえば頻度は少ないものの忘れることのできない皮膚がんとして、皮膚粘液癌、メルケル細胞癌、悪性末梢神経鞘腫癌、隆起性皮膚線維肉腫、脂肪肉腫、血管肉腫、Kaposi肉腫、内蔵がんの皮膚転移、皮膚悪性リンパ腫などがあります。いずれの場合にも、まずは正確な診断、転移の検査、適切な治療(手術、化学療法、放射線治療を含む)が必要です。

その他の皮膚がん

ほくろ除去手術の方法

ほくろの切除やレーザー  皮膚腫瘍最終5

 一口にほくろと言ってもほくろ以外のものも含まれています。
 例えば、皮膚と同じ色の’できもの’である「尋常性疣贅(いぼ)・軟性線維腫・皮膚線維腫」、赤色や紫色に見える「血管腫」や、粉瘤と同様に感染して膿がでる「石灰化上皮腫・毛母種」などです。その他もちろん、皮膚がんの可能性も否定できません。珍しい例でいえば、顔面の腫瘍を取ってみたら、虫歯のばい菌が皮膚の下に膿をためていたものだったり、頭のできものを切除したら、「脳みそ」の一部であったようなぞっとする経験もあります。(もちろん、手術は安全に終了し、後遺症などはありませんでした)
 明らかに良性のものであり、とても小さなものであればレーザー治療は良い適応です。しかし、きずあとが盛り上がりやすい場所やある程度の大きさの場合は、手術の方があとが目立たない場合があります。また、少しでも悪性の可能性があったり、 「かゆい」「腫れている」などの症状がある場合は、切除したものをしっかりと病理検査で調べる必要があります。病理検査では、細胞を一つ一つ皮膚病理の専門家が観察し、明確な診断を下すことが出来るので安心です。上で示したようなぞっとする経験はめったにありませんが、診断を確定させると安心ですから。
 もちろん、傷跡を最小限に治療を行うことが形成外科の大きな役割の一つであり、疾患と患者さんの希望に合わせた治療法を提案します。

手術予約、当日、抜糸までの流れ

ほくろの手術

※皮膚悪性腫瘍の方は皮膚がんセンターをはじめに受診ください。
※再診の方は、皮膚悪性腫瘍・軟部悪性腫瘍外来を受診ください。

※診断のついていないほくろの方は、「ほくろ・粉瘤・脂肪腫外来」を受診ください。
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