末梢血管手術

近年、生活様式の変化や高齢化に伴い末梢動脈疾患(Peripheral arterial disease; PAD)が増加しています。初めは症状がない人もいますが、病気が進行すると数百メートル歩くと太ももやふくらはぎが痛くなり、立ち止まって休むとまた歩ける、これを繰り返す間欠性跛行という症状が出てきます。
特に、糖尿病や慢性腎不全に合併したPADでは安静時の痛みや足の壊死を伴った状態になりやすく、放置すると下肢の切断となり不自由な生活を送ることになります。また、足だけではなくこうした患者さんは通常脳血管や心臓の血管(冠動脈)などにも動脈硬化を伴うことが多く、1年後には約20%が死亡、5年生存率は約40数%と生命予後が良くありません。したがって、重症に至る前の段階でPADの早期診断を行い、予防と治療を行っていく必要があります。

症状

上から下に向かって重症と判定されます。

  • 動脈拍動の消失:鼠径部・膝の裏・内くるぶし
  • I:皮膚温の低下:皮膚温の左右差、冷感
  • II:間欠性跛行:歩行時に下肢の張りや痛み、休むと治る
  • III:安静時の疼痛:皮膚の色調も変化する
  • IV:皮膚潰瘍:皮膚に穴(潰瘍)ができる

検査

下肢慢性動脈閉塞の検査では、下肢(足首)の血圧と上肢(上腕部)の血圧を比べるankle brachialindex(ABI)という検査を行います。足と腕の血圧の比は、正常では足首血圧/上腕部血圧の比1.0前後ですが、0.6以下(上肢の血圧の方が高い)になると血行障害の可能性が高いといえます。

治療

当科では、こうした疾患に対して外科的血行再建(人工血管や自家静脈を用いたバイパス手術、置換術および内膜剥離術など)を施行しています。特に重症の方では膝下の血管が閉塞していることが多いのですが、以前までは下肢の切断が避けられないと思われていた重症例に対しても『足の切断をしない』を目標に自分の静脈を用いたバイパス手術を積極的に行い、Quality of Lifeの向上を目指しています。また、当院の再生医療科、放射線科と連携し、『自己骨髄単核球細胞移植や血管新生因子蛋白(b-FGF)を用いた血管新生治療』や『ステントを用いた血管内治療』を併用し、院内全体で下肢末梢動脈疾患に対する集学的治療を行っています。
また、他にも慢性腎不全による透析用動静脈シャントの作成、下肢の血管が浮き出てむくみの原因となる下肢静脈瘤に対するストリッピング療法や硬化療法(日帰り手術も可能)も多く行っています。

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「心臓血管外科」

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