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  • 一般向けの放射線治療に関するQ&A

Q

「がん」に放射線治療はなぜ効くのですか?

A

放射線は、正確に言うと電離放射線は、細胞の設計図であるDNAを障害(損傷)します。障害の程度にもよりますが、通常の細胞は障害を修復する機能が備わっていて、元通りに回復する能力をもっています。それに対して癌細胞は回復機能が不十分で障害が残ってしまいます。ある程度のDNA損傷を受けた細胞は細胞を複製することができないために、その細胞の寿命が尽きたときに消滅してしまいます(分裂死)。それ以外にも、細胞はDNAに損傷を受けた時に自分自身を破壊することもあります。これは元々細胞に備わっている機能でアポトージス(細胞の自殺)と呼ばれています。老化した細胞を排除するアンチエイジング機構ですが、腫瘍細胞により多くみられる現象です。分裂死とアポトージスの二つの現象により同じ量の電離放射線の影響を受けた正常細胞と腫瘍細胞の反応の差により「がん」の放射線治療が可能となるわけです。

Q

放射線治療では副作用が怖いと聞きますが。

A

まず申し上げたいのは、最近の放射線治療は「がん」治療のかなでも副作用の少ない治療法とされています。それには多くの技術革新があっての結果ですが、一般にピンスポイント照射とも呼ばれている高精度な三次元治療計画が最も重要な役割を果たしています。それは副作用のでやすい臓器を避けて病巣に放射線を集中照射する技術です。写真4をご覧ください。
赤い肺癌に放射線照射を行うときに最も注意しなければならないのは緑の脊髄です。画像情報を駆使して、脊髄障害を起こさずに肺癌病巣に照射する方法を事前に十分検討してから、最も良い方法を選んで実際の治療を行うのです。写真5は主に食道に放射線を集中しものですが、ここでは前後にある心臓と脊髄を避けて4方向から照射しています。この方法で癌病巣や脊髄・心臓にどの位の放射線があたるのかを写真6のようなグラフを描いて評価します。したがって、昔のコバルト治療時代の副作用とは比較にならないほど軽く済むことが多くなりました。それでも副作用には個人差があり、特に治療中に発生する早期反応は化学療法でも強まり、ある程度は我慢しなければならない場合もあるでしょう。さらに副作用に対応する腫瘍看護学も進歩しており、日常のケアが行き届くようになっていますので、何か辛いことがあれば医療スタッフに遠慮なく相談したほうがよいでしょう。

写真4:脊髄を避けて肺がんを狙う
写真4:脊髄を避けて肺がんを狙う 

写真5:食道癌放射線照射の実際
写真5:食道癌放射線照射の実際

写真6:線量分布の評価
写真6:線量分布の評価

Q

放射線治療をおこなうのは進行癌や末期癌なのですか?

A

放射線治療をおこなう対象は3つに分類できます。(1)末期癌での痛みなどの辛い症状を緩和するのも放射線治療の重要な役目です。(2)進行癌はひとつの治療法だけでは治ることが少ないため、放射線治療を含めた集学的治療を行うことが多いのも事実です。しかし、(3)早期癌でも機能や美容面で問題となる領域では手術を行わずに放射線治療が第一選択となっていますし、小さな手術にとどめておいて放射線照射を追加することもあります。早期喉頭癌の機能温存治療や早期乳癌の乳房温存療法がそれに相当します。ますます「がん」の早期発見が可能となっている現在でこそ、早期癌に対する放射線治療の応用範囲は広がってきています。

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