アトピー外来

アトピー性皮膚炎について

アトピー性皮膚炎は、かゆみのある湿疹が悪くなったり良くなったりを繰り返す病気で、患者さんの多くはアトピー素因という皮膚のバリア機能が壊れやすくなる遺伝的な体質をもっています。最近、アトピー性皮膚炎の患者さんの4人に1人は、フィラグリンというたんぱく質を作る遺伝子に異常があることがわかってきました。フィラグリンは、皮膚の角質にあるケラチンという線維同志を接着させて、皮膚のバリア機能を保つのに必要なたんぱく質です。さらにフィラグリンが分解する時に天然の保湿因子になり、皮膚に潤いを与えています。したがって、ファイラグリンが変性すると、皮膚の表面から水分が失われ乾燥肌(ドライスキン)になります。
健常な皮膚であれば、ダニやホコリなどに含まれるアレルゲン(アレルギーを引き起こす物質)の侵入をブロックしますが、ドライスキンになって皮膚のバリア機能が壊れると、さまざまなアレルゲンが皮膚に侵入して、かゆみを引き起こすようになります。かゆみのために、皮膚を引っかくことによって更にバリア機能が壊れて行く、悪循環を繰り返すことになります。さらに、これらのアレルゲンが免疫グロブリンIgEの産生を誘導するため、花粉などに対するIgEも誘導され、花粉症も発症しやすくなります。
また、精神的なストレスがあると、頻繁に皮膚を引っかくようになることが多く、皮膚のバリア機能が壊れてかゆみを引き起こすようになります。
アトピー性皮膚炎は、現在に至るまで根治する治療法は発見されていませんが、なるべく早く健常な皮膚に戻すことによって皮膚のバリア機能も回復し、さまざまなアレルゲンの侵入もブロックできると私たちは考えています。そのためには、スキンケアなど日常生活の工夫や、ストレスを避けること、症状に合わせた治療を受けることが必要です。

スキンケアについて

スキンケアのポイントは、清潔と保湿です。すなわち、汚れや汗の刺激でかゆくなることがあるので、汗をかいたままにしないこと、および、乾燥肌は刺激を受けやすくかゆくなりやすいため肌にうるおいを与えること、の2点が重要です。

洗いすぎにご注意!

清潔を気にするあまり、洗いすぎて皮膚の必要な脂分まで取り除いてしまうことがあります。入浴時には、乾燥肌用の固形石けんをよく泡立て、泡でなでるようにやさしく洗い、その後、石けん成分が残らないように洗い流すことが大切です。かゆさのあまり、ボディブラシやアカすり、ナイロンタオルなどでゴシゴシ擦ると、乾燥やかゆみがよけいひどくので、使わないようにしましょう。冬は石けんを使って体を洗うのは1日おきでも構いません。お風呂の温度は、ぬるめの38~40℃が良いでしょう。入浴剤は硫黄の含まれていないものなら構いません。

保湿剤を塗る

洗いっぱなしで、そのままにしておくと、皮膚は乾燥しがちです。自前の皮膚の脂分だけで保湿できない時は、入浴後などに保湿剤を塗って外からうるおいを与える必要があります。

引っかいても傷をつくらない

引っかき傷ができると皮膚のバリア機能が壊れて、アトピー性皮膚炎はどんどん悪くなってしまいます。
そこで掻いても傷をつくらないための工夫が必要です。

1.手袋をする

乳幼児ならミトン型の手袋を、大人でも、寝るときに綿製の布手袋をすると、寝ている間にかきむしるのを防ぐことができます。子供の爪の伸びるスピードは成人より早いため、週に2回、深爪しない程度に爪を切りましょう。

2.長袖・長ズボンの綿の下着を着る

寝巻きやパジャマの下に長袖・長ズボンの綿の下着を着るとよいでしょう。下着の下まで手を入れて皮膚をかいてしまう患者さんも多いようです。そのような時には、下着の袖口や裾の部分を伸縮包帯で巻き、止めておくと効果的です。

かゆみが我慢できない時

1.冷やす

皮膚が温まると血行が良くなり、かゆみが増してしまいます。局所的にかゆい場合は、かゆい所に氷枕やアイスノンなどを当てて冷やしましょう。(布やタオルで覆って使用します。)
全身がかゆい時には室温を調節しましょう。特に寝ている間にかきむしるのを防ぐために、夏は寝る前に弱くクーラーをかけ、寝室の室温を2~3℃下げると効果があるようです。冬は寝室の暖房は弱めにし、電気毛布などは使用しないようにします。

2.薬をのむ

かゆみをおさえる目的でのみ薬が処方された場合は、用法・用量を守り、正しく内服してください。

アトピー性皮膚炎の治療

当科では下記の治療法を組み合わせ、症状に合わせた治療を行っています。

ぬり薬

  1. 炎症とかゆみを抑える薬(ステロイド外用薬、免疫抑制薬(タクロリムス))
  2. 皮膚にうるおいを与える保湿薬
  3. 皮膚を保護する薬

のみ薬

  1. 炎症とかゆみを抑える薬(抗アレルギー薬、抗ヒスタミン薬)
  2. アレルギーや免疫反応を抑える薬(抗アレルギー薬、免疫抑制薬(シクロスポリン)、漢方薬)
  3. 細菌やウイルスによる感染を抑える薬(抗生物質、抗ウイルス薬)

その他の治療

  1. 炎症とかゆみを抑える治療(紫外線療法(ナローバンドUVBなど))
  2. ストレスを抑える治療(入院)

患者さんへのお願い

当科では日本皮膚科学会の診断基準とガイドラインに基づいた診療を行っています。
アトピー性皮膚炎は、医局員全員が診療にあたっています。月曜日~土曜日のご都合の良い日の午前中(9時~11時)にご来院ください。
来院される際には、現在おかかりになっている病医院からのご紹介状をお持ちください。ご紹介状をお持ちでない場合でも、現在までの治療や処方薬の書かれたお薬手帳や薬剤の説明書をご持参ください。
なお、重症なアトピー性皮膚炎の場合、月曜日と金曜日の午後に専門外来を設置して診察しています。

担当医 佐伯 秀久 教授

お問い合わせ

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日本医科大学付属病院

〒113-8603 東京都文京区千駄木1-1-5
TEL: 03-3822-2131(代表)

夜間・休日救急外来
TEL: 03-5814-6119
(午後4時00分~翌日午前8時00分・土曜:午後2時00分~翌日 午前8時00分)

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