オートファジー始動複合体の進化的多様性の解析
本研究ではオートファジー始動複合体が進化の過程でどのように多様性を獲得したかについて解析を行い、特にAtg101およびAtg29-Atg31サブ複合体がどのように獲得、喪失、または機能的に変化してきたかを明らかにしました。
オートファジー始動複合体を構成するタンパク質の進化的保存性について独自に構築したデータベースを用いて解析したところ、真核生物の共通祖先はAtg1、Atg11、Atg13、Atg17、Atg101からなる始動複合体を有していたことが示唆されました。しかし、現生の一部の酵母(出芽酵母・サッカロミセス酵母)はAtg101を持っておらず、代わりにAtg29とAtg31を持っています。本研究の進化的な解析から、Atg29とAtg31を獲得した後にAtg101を失ったことが示唆され、実際に中間型としてAtg29、Atg31、Atg101をすべて持つ生物(ピキア酵母など)が発見されました。ツーハイブリッド法による相互作用解析、AlphaFold3を用いた構造解予測、ピキア酵母を用いた実験などから、Atg101の喪失は複数の進化的・構造的要因と関連していることが示唆されました。一つは、Atg9との相互作用部位がAtg13とAtg101の結合面からAtg13の側面へと移動したこと、もう一つはAtg101とAtg29-Atg31サブ複合体の間に機能的冗長性があることです。このような理由から、Atg101の重要性が徐々に小さくなり、最終的に一部の酵母でAtg101が喪失したことが分かりました。
原著論文
Evolutionary diversification of the autophagy initiation complex: reduced Atg101 dependency and changes in Atg9 binding to Atg13
Zefeng Lai, Yutaro Hama, Masahide Oku, Sidi Zhang, Yasuyoshi Sakai, Hayashi Yamamoto*, Noboru Mizushima*
Autophagy (2025) doi: 10.1080/15548627.2025.2559683
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