診療内容

胸部異常陰影

初診日に胸部CTを施行し、胸部CTの詳細な読影により診断を絞り込み、患者さんにできるだけ負担の少ない方法で正確に迅速に診断しています。組織検査による確定診断が必要な場合には、気管支鏡検査/超音波内視鏡検査(月曜日と金曜日に当科で施行)、CTガイド下生検(月曜日に放射線診断科で施行)、胸腔鏡下生検(呼吸器外科と連携)を行います。

年間の気管支鏡件数は以下の通りです。

2019年 2020年 2021年 2022年
229件 216件 261件 294件

肺がん

肺がんは日本のがん死亡の1位で年々増加しています。症状は持続する咳、血痰、痛み、体重減少などですが、無症状のことも多くしばしば検診で発見されます。胸部異常陰影で紹介されたり、上記症状で受診された場合、胸部CT、気管支鏡検査、PET-CT検査などで診断致します。
治療方法は、薬物治療、外科治療、放射線治療がありますが、呼吸器外科、放射線治療科とカンファレンスを行って充分に討議し、臨床腫瘍学をベースにしたエビデンスに基づいた最適な治療方針を決定しています。さらに患者さんの治療に対する希望を加味し、QOL(quality of life:生活の質)を損なわない治療方法を選択しています。
肺がんの薬物治療は、細胞傷害性抗がん薬(従来からの抗がん剤)、分子標的治療薬、免疫チェックポイント阻害薬の3種類に大きく分けられ、近年目覚ましい進歩をとげています。病理診断科と常に連携をして、組織の遺伝子変異検査(遺伝子パネル検査)やバイオマーカー検査の結果により治療方法を決定しています。
薬物治療は外来治療を基本とし、専任の看護師と薬剤師を配する外来化学療法室(室長:廣瀬部長)で、きめ細かな管理のもとで治療を受けることができます。
また、早期から緩和ケアを取り入れ、痛みのコントロールや、精神神経科や臨床心理士とも協力して心のケアにも積極的に取り組んでいます。

年間の肺がん薬物治療(点滴投与のみ)件数は以下の通りです。

2018年 2019年 2020年 2021年 2022年
1251件 1218件 1340件 1540件 1846件

その他の悪性腫瘍

アスベストが原因となる悪性胸膜中皮腫が増加しています。悪性胸膜中皮腫、縦隔腫瘍の治療は、薬物治療、外科治療、放射線治療による集学的治療が重要ですが、呼吸器外科、放射線治療科とカンファレンスを行って充分に討議し治療方針を決定しています。
原発不明がんは、成人固形がんの3-5%を占めますが、あまり知られていません。当科では、抗がん剤などによる最適な治療を行っています。

間質性肺炎

間質性肺炎には、原因不明なもの(特発性)から原因が特定されるものまで様々な疾患があります。症状は持続する咳、呼吸困難などです。胸部X線、胸部CTで間質性肺炎の有無を診断し、血液検査などで原因を特定します。また、呼吸機能検査、気管支鏡検査、必要に応じて胸腔鏡下肺生検、心臓超音波検査などで確定診断や重症度判定をします。
治療方法は、内科治療が基本で、ステロイド薬などの炎症を抑える薬と肺の線維化を抑える薬剤(抗線維化薬)の2種類に分けられ、原因や重症度、進行度に応じて最適な治療を行っています。また、進行すると酸素が悪化しますが、低酸素血症の程度に応じて在宅酸素療法を行っています。

気管支喘息

吸入ステロイド薬の普及により喘息発作での入院数はこの30年で劇的に減少しました。一方、罹患率は増加しています。持続する咳のみが症状の患者さんなどは気管支喘息が見落とされ、適切な治療を受けられていない場合も多くあります。呼気NO検査や気管支拡張薬を使用した呼吸機能検査により受診当日に診断が確定する場合もありますので、咳が止まらないなどの症状がある場合は受診をお勧めします。また、吸入ステロイド薬や内服薬で症状のコントロールができない患者さんには、IgE、好酸球などを標的とした抗体薬が上梓されており、重症喘息患者さんに投与しています。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)

COPDは喫煙が主な原因で、年々増加しており、世界保健機構(WHO)の報告では世界の死亡原因の第4位を占めています。しかし、わが国ではCOPDの診断が確定している方は1割程度です。症状は持続する咳、痰、呼吸困難などです。受診当日に呼吸機能検査で診断が確定しますので、持続する咳、痰、呼吸困難のある方は受診をお勧めします。
治療は、早期に診断を確定し、禁煙や気管支拡張薬の吸入療法を行うことが進行を抑えるうえで重要です。また、進行すると酸素が悪化しますが、低酸素血症の程度に応じて在宅酸素療法を行っています。

呼吸器感染症

細菌性肺炎、ウイルス性肺炎、胸膜炎、非結核性抗酸菌症、肺結核、肺真菌症など様々な呼吸器感染症があります。一般的な細菌感染症では、発熱、咳、痰を呈することが多く、喀痰や血液、尿検査で原因菌を同定し、抗菌薬を適正に使用し治療することが重要です。非結核性抗酸菌症、肺結核、肺真菌症では症状が乏しく、胸部X線や胸部CTで疑われる場合には気管支鏡検査で診断を確定し、薬物治療を行っています。

睡眠時無呼吸症候群

症状はいびき、日中の眠気、頭痛、日中の活動や思考能力の低下をきたします。睡眠時無呼吸症候群の方は、高血圧や糖尿病、高脂血症などの生活習慣病を合併しやすいことが分っています。スクリーニング検査は簡易診断検査器により自宅での検査が可能で、疑われる場合には1泊2日でポリソムノグラフィー検査で診断を確定します。治療は持続陽圧呼吸療法装置(CPAP)を装着することが主体となります。

研究概要

主な研究課題は、肺がんの診断、薬物治療に対する臨床研究と間質性肺炎を主体としたびまん性肺疾患の臨床研究です。

原著論文(代表論文15編)

  1. H. Iso, K. Hisakane, K. Atsumi, T. Hirose, et al: Thyroid transcription factor-1 (TTF-1) expression and the efficacy of combination therapy with immune checkpoint inhibitors and cytotoxic chemotherapy in non-squamous non-small cell lung cancer. Transl Lung Cancer Res, 12:1850-1861, 2023.
  2. K. Atsumi, K. Hisakane, T. Hirose, et al: Minimal effective dose of maintenance steroid therapy for relapse of cryptogenic organizing pneumonia. Respiratory Medicine, 2023 Nov 218.
  3. K. Hisakane, K. Atsumi, T. Hirose, et al: Platinum combination chemotherapy with or without immune checkpoint inhibitor in patients with postoperative recurrent non-small cell lung cancer previously treated with adjuvant platinum doublet chemotherapy: a multicenter retrospective study. Thorac Cancer, 14: 2069-2076, 2023.
  4. S. Takeuchi, T. Hirose, et al, on behalf of JMTO: Standard versus low-dose nab-paclitaxel in previously treated patients with advanced non-small cell lung cancer: A randomized phase II trial (JMTO). Cancer Medicine 12: 9133-9143, 2023.
  5. H. Iso, K. Hisakane, K. Atsumi, T. Hirose, et al: A remarkable response to combination chemotherapy with nivolumab and ipilimumab in a patient with primary pulmonary choriocarchinoma: a case report. Transl Lung Cancer Res 2023 12: 2212-2218, 2023.
  6. E. Mikami, K. Atsumi, K. Hisakane, T. Hirose, et al: Development of eosinophilic pneumonia from eosinophilic bronchiolitis without asthma: a case report. Respiratory Medicine Case Reports epub ahead print 2023
  7. K. Miyadera, K. Hisakane, K. Atsumi, H. T. Hirose, et al: Black pleural effusion caused by a pancreaticopleural fistula associated with autoimmune pancreatitis. Medicine 101: e30322-e30326, 2022.
  8. R. Noro, T. Hirose, et al: A prospective phase II trial of monotherapy with low-dose afatinib for patients with EGFR mutation positive non-small cell lung cancer: Thoracic Oncology Research Group 1632. Lung Cancer, 161: 49-54, 2021.
  9. T.Mai, T. Hirose, et al: Quantitative analysis and clonal characterization of T-cell receptor β repertoires in patients with advanced non-small cell lung cancer treated with cancer vaccine. Oncology Letters 14: 283-292, 2017
  10. S. Suzuki, T. Hirose, et al: Nivolumab-related myasthesia gravis with myositis and myocarditis in Japan. Neurology 89: 1127-1134, 2017.
  11. T. Hirose, et al: Association of pharmacokinetics and pharmacogenomics with safety and efficacy of gefitinib in patients with EGFR mutation positive advanced non-small cell lung cancer. Lung Cancer 93: 69-76, 2016.
  12. 寺島勇人, 久金翔, 渥美健一郎, 廣瀬 敬, 他:ニボルマブ+イピリムマブ投与後に胸膜炎様のpseudo-progression劇症呈した肺腺癌の1例. 肺癌62: 400─405, 2022.
  13. 寺師直樹, 久金翔,渥美健一郎, 廣瀬 敬, 他:デュルバルマブ投与後に劇症1型糖尿病を発症した小細胞肺癌の1例. 肺癌62: 323─328, 2022.
  14. 細矢 慶, 廣瀬 敬, 他:Mepolizumabとdupilumabとで上下気道の反応性が異なった喘息合併好酸球性副鼻腔炎の1例. 日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会誌2: 59–64, 2022.
  15. 小林由美子, 廣瀬 敬, 他:発症早期の肺生検にて診断したS-1による重篤な薬剤性肺障害の1例. 癌と化学療法 46: 1457-1460, 2019.

著書・総説(代表論文10編)

  1. 廣瀬 敬:肺癌診療Q&A第4版 一つ上を行く診療の実践:腫瘍マーカーの役立つ場面について教えてください. 214-216, 中外医学社, 2023.
  2. 廣瀬 敬:内科:内科疾患の診断基準、病型分類、重症度:肺癌. 531-533, 南江堂, 2021.
  3. 廣瀬 敬:最新ガイドラインに基づく呼吸器疾患診療指針:非癌性胸膜炎. 311-315, 総合医学社, 2020.
  4. 廣瀬 敬:保険収載された肺がん診療における遺伝子パネル検査とテイラーメイド治療. 臨床雑誌内科126: 330-332, 南江堂, 2020.
  5. 廣瀬 敬:呼吸器内科グリーンノート:類円形の影あるいは結節影. 33-35, 中外医学社, 2020.
  6. 廣瀬 敬:呼吸器内科グリーンノート:すりガラス影. 36-38, 中外医学社, 2020.
  7. 廣瀬 敬:日本臨床増刊号医薬品副作用学第3版:気管支拡張薬・気管支喘息薬. 268-273, 日本臨床社, 2019.
  8. 廣瀬 敬:オンコロジークリニカルガイド 肺癌化学療法改訂第2版:, DIF. 307-310, 南山堂, 2019.
  9. 廣瀬 敬:進行非小細胞肺癌薬物治療の進歩. 富士吉田医師会報 119: 22-23, 2019.
  10. 廣瀬 敬:分子標的治療・テクノロジー新時代のあたらしい肺癌現場診断学:腫瘍増大=悪化か?. 240-242, 南江堂, 2018.

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