カテーテルアブレーション

カテーテルアブレーション(カテーテル心筋焼灼術)について

カテーテルアブレーションは不整脈を引き起こす異常な心臓内の局所をカテーテルで焼灼して正常のリズムを取り戻す治療です。正式には経皮的カテーテル心筋焼灼術とよばれカテーテル手術の1つに分類されます。

治療のしくみ

足の付け根や首の静脈から径1.3mm~2.6mmの細長い管(電極カテーテル)を挿入し、血管をたどって心臓の中に進めます。カテーテルの先端付近には電極と呼ばれる金属がついていてカテーテルを体外の専用機器に接続することによって、心臓内の電気現象を記録したり、心臓を電気刺激することができます。複数のカテーテルから記録される電気の情報から、不整脈の原因を突き止め、どこを治療すべきかを判断することができます。治療部位には焼灼専用のカテーテルを進め、高周波電流を流します。カテーテルと接した心臓組織は高周波電流によって温められ、細胞が壊死し電気を生じなくなり、対象の不整脈が消失します。
当院ではこれまで延べ2000件以上の治療経験があり、最新機器を揃え、すべての対象不整脈の治療を行えます。

治療できる不整脈

心房細動、発作性上室性頻拍(WPW症候群など)、心房頻拍、心房粗動、心室頻拍、心室期外収縮など

治療に要する時間

心房細動(1時間~3時間)、発作性上室性頻拍・心房頻拍(1時間~3時間)、通常型心房粗動(1時間)、非通常型心房粗動(2-4時間)、心室頻拍・心室期外収縮(1-4時間)

治療中の麻酔について

当院では治療中の苦痛がないように、静脈麻酔薬を用いて深く眠っている状態(深鎮静)で治療を行います。

心房細動のカテーテルアブレーションの方法と成績

心房細動は肺静脈の異常な電気興奮が引き金になっていることが発見され、その除去により治療できることが1990年代後半に発表されました。その後、肺静脈の付け根を焼灼して心房から電気的に隔離する方法(肺静脈隔離)が2000年代前半に行われるようになり、さらに2000年代後半には肺静脈周囲の心房筋も含めて大きく隔離する方法(拡大肺静脈隔離)が行われるようになり、発作性心房細動では複数回治療で85%程度の洞調律維持率が得られるようになりました。
当院では、さらなる治療成績向上のため、発作性心房細動に対しては、広範囲の拡大肺静脈隔離に加え、必要に応じて左右の肺静脈間の左房後壁や、右房につながる血管である上大静脈を隔離します。

発作性心房細動のカテーテル心筋焼灼術・持続性心房細動のカテーテル心筋焼灼術

また、持続性心房細動では、低電位領域という障害された領域の焼灼や僧帽弁峡部、僧帽弁輪部の線状焼灼も必要に応じて追加しております。このような治療を受けると、発作性心房細動や持続1年以内の持続性心房細動ではおおよそ85%、1年以上持続する持続性心房細動例では70%の方が1回の治療で正常リズムが維持されます。再発した場合2回目の治療を受けることにより、最終的に発作性心房細動および持続期間1年以内の持続性心房細動では90%、1年以上の持続性心房細動症例でも80%の方で正常リズムが維持されます。当院での1人あたりのアブレーション施行回数は、平均1.15回です。

ホットバルーン・アブレーション

当院では2016年より高周波ホットバルーンによる治療も行っております。肺静脈と心房の接合部にはめ込んだ直径26-32mmのバルーンを加熱することにより、肺静脈の付け根を一気に焼灼する方法です。通常のカテーテル焼灼よりも短時間で完了し、かつ確実に治療できる方法として期待されております。この治療は発作性心房細動の方のみが適応となり、また、肺静脈の形状によってはホットバルーンによる治療が適さない場合があります。

発作性上室性頻拍のカテーテルアブレーション

発作性上室性頻拍の原因のほとんどが、房室結節リエントリー性頻拍(房室結節につながる余計な通路と正常の通路を旋回する頻拍)、房室回帰性頻拍(副伝導路という心房-心室間の余計な通路(副伝導路)を介して大きく旋回する頻脈)です。心臓の各所の電極カテーテルを留置して、頻拍時の電気の流れやプログラム刺激という特殊な心臓刺激を行った時の電気の流れを調べることによって、不整脈の診断と原因部位を同定することができます。
そしてその原因部位をカテーテルで焼灼することによって、おおよそ90%の方がその後発作なく過ごすことができるようになります。リスクとして、心臓の周りに出血する心タンポナーデ、正常な電気回路に傷が付く房室ブロック、脳梗塞などがありますが、合計しても1%以下です。

発作性上室性頻拍のカテーテル心筋焼灼術

心房粗動・心房頻拍のカテーテルアブレーション

心房のある一点に発生する異常な電気が原因であったり、心房内の一定の回路を電気が旋回することによって生じる頻拍です。そのようは不整脈の起源や回路を同定して焼灼することによって治療することが可能です。

心房粗動・心房頻拍のカテーテルアブレーション

通常型心房粗動は、心房粗動の中で最も頻度が高く、右心房の中の三尖弁と下大静脈の間を通り、三尖弁輪に沿って電気が旋回する頻拍です。三尖弁と下大静脈の間を線状に焼灼することによって回路を遮断し、治療成功率は95%前後です。
非通常型心房粗動は、以前に心臓手術を受けたことのある方や心臓病をもっている方に発生する頻拍です。回路は人それぞれで様々であるため、三次元マッピングシステムという機器を用いて、詳細に電気の流れを調べ、最も効果的な場所を見つけて焼灼します。

回路が1-2個である場合の成功率は85%と良好ですが、3個以上ある場合はすべてを治療しきれないことがあり成功率は70%程度です。
心房頻拍は心房のある一点から発生する頻拍で、三次元マッピングシステムを用いて心房の中で最も早く興奮する場所を探して焼灼します。頻拍が容易に誘発される患者さまでは、治療の効果の判定が容易で成功率も90%となります。

心室頻拍のカテーテルアブレーション

心臓に異常のない方に発生する特発性心室頻拍は、心室流出路に発生するものと左室のプルキンエ線維という特殊な刺激伝導系に発生するもので大半を占めます。前者の心室流出路起源は頻度が高く、後者の左室プルキンエ線維起源の頻拍は比較的稀です。

心筋梗塞に伴う心筋頻拍のアブレーション

心室流出路起源の心室頻拍や心室期外収縮は、半数以上が右室からのアプローチで治療できます。治療時に心室頻拍や期外収縮が頻回に出現しないと起源の同定が困難ですが、最新の機器ではわずかな手がかりで起源を同定する機能が付加され、あまり多く出現しない場合でも起源を同定して焼灼できます。右室以外には、大動脈弁、あるいは大心静脈からの焼灼が必要な症例、まれに心外膜側からの焼灼が必要となることもあります。治療成功率は85%程度です。
左室プルキンエ線維起源の心室頻拍(特発性左室心室頻拍)は、ベラパミルという薬剤で停止・抑制されるのが特徴ですが、アブレーションの治療効果も高く90%程度の成功率が期待できます。

心筋梗塞などの心疾患に発生する頻拍は植込み型除細動器の適応ですが、カテーテルアブレーションで発作頻度を抑制することが可能です。三次元マッピングシステムを用いて、左心室の内部の電気の波高を調べ、傷んだ心室筋の領域を調べます。その傷んだ心筋の中に心室頻拍の回路があることがほとんどであるため、傷んだ心筋の内部を焼灼し、潜在的な回路も含めて焼灼します。