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不妊症でお悩みの方(生殖医療外来のご案内)

不妊症とは

「不妊」という言葉がとてもネガティブに響きますが、不妊症とは“絶対に妊娠できない”体質ばかりを指すわけではなく“妊娠しにくい”体質も含まれます。現代日本のご夫婦の5組に1組に何らかの不妊原因があるとも言われています。
お子さんを望んで半年~1年経っているならば、ぜひとも不妊症の検査を受けてください。
基礎体温や精液検査など、スマートフォンアプリを利用した自分でできる検査もあります。
不妊の原因や検査の一般的な内容は、日本産科婦人科学会に解説があります。

2022年4月より、一定の条件を満たす場合に保険適用での不妊治療が可能となりました。

不妊症診療

当科は人工授精や体外受精といった生殖医療を行うだけではありません。不妊の原因となる子宮内膜症や子宮筋腫や、子宮奇形に対する手術療法なども数多く行っております。不妊治療中の不育症の検査や治療は当科で並行して行うことが出来ます。
また、内科で血糖・血圧・甲状腺機能のコントロールを行いながら不妊治療を進めるなど、合併症をもつ方の不妊治療も大学病院ならではと考えています。

受診方法

女性診療科の初診を予約してください。
女性診療科受診後、必要に応じて女性診療科再来や生殖医療外来の受診となります。
他院の検査結果などがある場合にはお持ちください。

⇒ 初診予約について

生殖医療外来

不妊症を専門に診るエリアです。不妊症検査・排卵誘発・タイミング指導・人工授精・体外受精・子宮鏡などを行います。
月曜から土曜の午前中(8:30~11:30)生殖医療専門医を含めた複数の担当医が診療を行います。担当医には周産期専門医や内視鏡技術認定医の認定を受けている医師もおり、さまざまな視点で診療を行えることが当院の特徴です。
またスタッフには不妊症看護認定看護師・生殖医療相談士・生殖補助医療胚培養士といった生殖医療の専門家が揃って、通院される方々に安心安全な治療を提供しております。
周産期専門医や助産師もおりますので、妊娠後のライフプランについてもご相談ください。

※完全予約制です。当日の受診希望の場合でもお電話で予約をお願いします。
※外来は午前中のみです。午後は医師がおりませんので、予約時間は厳守してください。
※担当医のご指名はできません。
※不妊に悩むご夫婦が多く来院されています。お子さま連れはご遠慮ください。

事実婚について

住民票上の住所が同一の事実婚(未入籍)夫婦の不妊治療については法律婚夫婦と同様、一般不妊治療・人工授精・体外受精などの治療を行うことができます。
住民票上の住所が異なる事実婚の方は、戸籍謄本による婚姻関係の確認のうえ一般不妊治療(タイミング指導まで)を行うことができます。パートナーの検査結果についてはお話しできません。

不妊症検査

女性の検査

不妊症スクリーニング検査

初診時のスクリーニング検査

まずは現在の身体が、すぐに妊娠・出産可能な状態かをチェックしながら、不妊原因を探っていきます。
甲状腺機能・肝機能・糖代謝などに異常がある場合には不妊治療に優先して内科の治療を行います。
AMH(抗ミュラー管ホルモン)の値は卵巣年齢を示すとも言われ、今後の治療方針の参考にします。
風疹は妊娠中にかかると胎児が風疹ウイルスに感染し、さまざまな障害が残ってしまいます。風疹抗体価が低く、ワクチンを接種した場合には2ヶ月間の避妊が必要となりますが、妊娠後にはワクチン接種できませんので治療を始める前に接種した方が安心です。

月経周期2~5日目

ホルモン値

FSH(卵胞刺激ホルモン)・LH(黄体化ホルモン)、エストロゲン(卵胞ホルモン)、プロラククチンの値を測定します。間脳視床下部・脳下垂体・卵巣機能の評価ができます。

月経終了後~排卵前

子宮卵管造影

子宮内に造影剤を注入し、子宮内腔の形態と卵管の通過性を検査します。

子宮鏡

直径3mmの内視鏡で子宮内を観察し、ポリープや筋腫の有無を確認します。

排卵期

フーナー試験

性交後試験ともいいます。子宮頚管粘液内の精子の状態を検査します。人工授精や生殖補助医療の適応を検討する目安になります。

黄体期

ホルモン値

プロゲステロン(黄体ホルモン)・エストロゲン(卵胞ホルモン)を測定し、黄体機能を評価します。

特殊検査(着床障害検査)

  • 子宮内フローラ検査

子宮内フローラ(子宮内細菌叢)をどの程度善玉菌(ラクトバチルス)が占めているか検査します。

  • 子宮内膜炎検査

子宮内膜を生検し、病理検査を行います。

  • Cine MRI

黄体期子宮内膜の異常蠕動を評価します。

  • ERA検査(子宮内膜着床能検査)

胚移植時と同じスケジュールで整えた子宮内膜を採取し、その子宮内膜が胚の着床に適した状態かを検査します。

男性の検査

出来るだけ早く行った方が良い検査

精液検査

3~5日間の禁欲期間を持った上で行います。結果によって、タイミング法からスタートするか、早期に人工授精や生殖補助医療を行う適応となるか判断します。

人工授精までに行う検査

感染症検査

その他

生殖医療外来には泌尿器科医はおりませんので、男性不妊専門施設へ紹介することがあります。

一般不妊治療

タイミング法

超音波検査による卵胞のサイズやホルモン値の測定により排卵日を推定し、性交のタイミングを指導します。
WHOの基準値から推定した、自然妊娠の可能な総運動精子数(精液中の全ての運動精子数)は900万~1500万個 と言われています。
精液検査やフーナー試験に問題がなく、卵管の通過性が確認できている方の治療となります。
月経不順や排卵障害のある方には排卵誘発剤を用いることがありますが、卵胞が複数発育した場合にはキャンセルとなります。

人工授精

排卵のタイミングに合わせて、濃縮した精液を子宮内へ注入する方法です。
精子は卵管内の卵子へ向かって自力で泳いでいくので、卵管の通過性が確認されていて、運動精子数が少ない、あるいはフーナー試験不良の方に対する治療法です。
人工授精の適応はおよそ総運動精子数1000万個で、精液中の運動精子が極端に少ない場合には人工授精による妊娠の可能性は低くなります。
月経不順や排卵障害のある方には排卵誘発剤を用いることがありますが、卵胞が複数発育した場合にはキャンセルとなります。

ステップアップ

タイミング法→人工授精→体外受精・顕微授精と治療をすすめることをステップアップと言います。ステップアップのタイミングは各3-6周期の治療を目安にします。3-6周期の治療で結果が得られない場合は、その治療ではクリアしにくい不妊原因があると考えられるからです。
治療を続けていくうえでステップアップの提示をしますが、ステップアップすればするほど通院回数や治療費が増えていきますので、ステップアップするかしないかはご夫婦の決断で構いません。
また、一度ステップアップしたあと体外受精→人工授精のようにステップダウンする選択もあります。

ART(生殖補助医療)

ARTとは

体外受精や顕微授精など、高度な不妊治療のことをART(生殖補助医療)といいます。卵巣で成熟させた卵子を一度身体の外へ取り出し、受精させた後に子宮へ戻す治療です。
日本では日本産科婦人科学会へ登録した施設のみがARTを行えることとなっており、全国で約600の施設が登録されています。
ARTで生まれるこどもの数は年々増えており、2019年分の統計ではおよそ14人に1人が体外受精の技術により誕生したことが報告されています。

ART学級

ARTによる治療をご希望の方には、外来にて卵巣刺激の方法・受精方法・胚移植方法や通院・費用負担などについて説明した動画を視聴して頂きます。他院での治療歴がある方にも全員受講をお願いしております。
所要時間は1.5~2時間程度です。ご夫婦揃ってお越しください。

卵巣刺激

当院では自然周期、簡易刺激(経口排卵誘発剤を中心とした通院回数が少ない方法)、低~高刺激(毎日注射による刺激を行う方法)のいずれの方法にも対応しています。卵巣の状態を評価して、可能な限りご夫婦のご希望に沿って選択していきます。

採 卵

採卵室には麻酔器や生体監視モニターを備え、かならず複数の医療スタッフで採卵にあたっています。
ご希望により無麻酔・局所麻酔での採卵も行うことができます。

受 精

ARTでの受精方法には媒精法と顕微授精法があります。
どちらを用いるかは、運動精子の数と、これまでの治療経過により選択していきます。
2021年の採卵255周期では、媒精法54.1%・顕微授精法37.3%・併用法9.9%により治療を行いました。
顕微授精にはSL-ICSIを導入しており、顕微授精全例で卵子の染色体の位置を確認し安全性を高めています。

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通常の顕微鏡の写真         偏光板を使用した写真(6時方向に紡錘体が確認できます) 

受精卵の培養

2017年にWOW培養法(LinKID)を導入し、全症例で用いています。
当院では全ての受精卵を胚盤胞まで培養し、一度凍結する方法(全胚凍結)で治療を行っています。
着床環境を整えた上で胚盤胞を移植することで、最も高い妊娠率が得られるためです。
卵巣刺激の方法にもよりますが、採卵した周期の40~60%で1個以上の受精卵が凍結できています。
また、2020年に導入したタイムラプスインキュベーターにより、胚発生の一部あるいは全期間を観察・記録しています。当院でのタイムラプスインキュベーターによる胚培養は先進医療として実施しているため、保険適用で体外受精を行う患者さんには先進医療費をご負担いただいております。

胚移植

当院では原則としてエストロゲン貼付剤とプロゲステロン座薬を用いたホルモン補充周期にて、凍結融解胚盤胞を移植します。
着床を補助するため、移植胚にはアシステッドハッチング(透明帯をレーザーで切開しています)を行い、EmbryoGlue(ヒアルロン酸を添加した、胚移植専用の培養液)を用いて移植を行っています。

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透明帯から孵化(ハッチング)中の胚   孵化後の胚

昨年の成績

2021年1月から12月までの期間で、139名の患者さんが283周期の採卵を行いました。139名の患者さんの年齢は20代が5名(3.5%)、30-34歳28名(20.4%)、35-39歳42名(30.2%)、40代64名(46.0%)でした。

2021年に凍結融解胚移植を行った155周期のうち、妊娠反応が確認されたのは106周期(68.4%)、胎嚢が確認されたのは72周期(臨床妊娠率46.5%)でした。そのうち53名の方が出産または妊娠継続中です。

凍結保存

胚の凍結保存

ARTでは複数の卵子を採取しますが、一度に移植できる胚はひとつです。
当院では原則として、移植あたりの妊娠率が最も高い、凍結融解胚盤胞移植(胚盤胞まで発育した胚を一度凍結し、別の周期に融解して移植する方法)により治療を行っています。凍結した胚は、毎年3月と9月に保存期間の延長をして頂きます。保存期間の延長は原則自費となりますが、保険適用で治療中の患者さんは保険診療のルールに則り保険で延長手続きを行える場合があります。延長手続きは、同意書にご夫婦の署名・捺印の上、生殖医療外来の予約を取ってお越しください。

胚の破棄を希望の方は破棄同意書に署名・捺印のうえ、「診療録添付用」と右上に印字してある方を生殖医療外来までお送りください。

精子の凍結保存

悪性腫瘍等の治療前に妊孕性温存を目的とした精子の凍結保存を行っています。
精子凍結の保存期間の更新は、毎年3月です。
延長の同意書に署名・捺印のうえ、生殖医療外来の予約を取ってお越しください。

凍結保存した精子の破棄をご希望の方は破棄同意書に署名・捺印のうえ、「診療録添付用」と右上に印字してある方を生殖医療外来までお送りください。

当院では健康な方のご希望による精子凍結は行っておりません。
また、原則として人工授精や体外受精には当日の採精をお願いしており、前もっての凍結保存は行っておりません。

着床前遺伝学的検査(PGT-A・PGT-SR)

着床前遺伝学的検査とは

着床前遺伝学的検査(PGT;Preimplantation Genetic Testing)とは、ARTで得られた胚(受精卵)から数個の細胞を生検し、染色体や遺伝子を検査する技術のことです。検査の対象と目的によって3種類のPGTに分けられます。

  • PGT-M(Monogenic)

  • 重篤な遺伝性疾患をお持ちの方が対象です。
  • PGTの中で唯一、遺伝子をターゲットにした検査です。
  • 検査して良い遺伝子は、日本産科婦人科学会によって厳密に審査されています。
  • 当院では実施しておりません。
  • PGT-SR(Structural Rearrangement)

染色体の構造異常を検査します。
ご夫婦のどちらかが染色体の転座保因者であることが判明している場合に行います。

  • PGT-A(Aneuploidy)

不妊症の方・反復流産の方が対象です。
染色体の数が正しい数(46本)揃っているかを検査します。
流産の約80%は偶発的に起こる胚の染色体異常が原因のため、染色体の数が正常な胚だけを移植することで妊娠率の上昇や流産率の低下が期待できると言われています。

PGT-A・PGT-SRの対象

当院は日本産科婦人科学会が認定したPGT実施施設です。日本産科婦人科学会の見解に則りPGTを実施しています。
対象となるのは、以下に当てはまる患者さんです。

(1)反復ART不成功の患者さん(PGT-A)

過去に臨床妊娠に至っていない胚移植を2回経験している患者さん(妊娠歴・出産歴は問いません)

(2)反復流産の患者さん (PGT-A)

過去2回の臨床妊娠(超音波検査による胎嚢確認後)の後、流産を経験した患者さん

(3)ご夫婦のどちらかに染色体の構造異常がある患者さん (PGT-SR)

ご夫婦のどちらかに染色体の構造異常があることが判明している方は、PGT-SRの対象です。妊娠歴は問いません。

  • 対象の患者さんで、PGT-Aにご興味のある方は診察時に医師にお申し出ください。
  • ※当院に通院中のご夫婦に限ります。他院にて治療中の方は当院でARTを行う必要がありますので、紹介状をご用意のうえ女性診療科の初診予約をお願いします。
  • ただし(1)(2)(3)に当てはまる患者さんでも、日本産科婦人科学会が別に定める除外項目に該当する場合は実施できません。

PGT-Aで分かること

ヒトの細胞には46本の染色体があります(図1)。
22種類の常染色体と呼ばれる染色体が2本ずつあり、サイズの大きい方から順番に番号がついています。残りの2本は性染色体と呼ばれる染色体で、X染色体とY染色体があります。X染色体が2本あると女性に、X染色体とY染色体が1本ずつあると男性になります。

PGT-Aとは、胚の染色体が正しい数(46本)揃っているかどうかを調べる検査です。
胚の細胞の染色体に数的異常(数が多い・少ない)があると、着床しないか、早期に流産することがほとんどです。

・染色体の数が足りない場合、ごく一部の例外を除いて、その胚は着床することができません。
・染色体の数が多い場合、早期に流産することがほとんどですが、21番(ダウン症候群)・18番・13番の常染色体や性染色体が1本多いだけの場合、出生に至ることがあります。
※異常の検出される染色体が1種類だけとは限りません

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PGT-Aで分からないこと

  • それぞれの染色体の微細な重複や欠失、構造異常については分かりません。
  • 倍数体(3倍体:染色体が69本、4倍体:染色体が92本)は分からないことがあります。
  • 個々の染色体にある「遺伝子」の異常を捉えるものではありません(がん遺伝子など)。
  • 検査の結果、胚の性別をお伝えすることはありません。
  • 児の心身の発達について保証するものではありません。
  • 検査の精度は80-90%と言われています。

カウンセリングについて

PGT実施前後、あるいは患者さんが希望する時にはいつでも生殖医療外来スタッフや臨床遺伝専門医のカウンセリングを受けることができます。

PGT費用について

保険適用外の検査です。混合診療禁止の原則によりPGTを希望される周期は卵巣刺激~採卵~PGT~胚移植まで全ての診療が自費となります。

費用について

検査費用(自費)

AMH値 ¥2,310
風疹抗体価 ¥8,316
子宮内フローラ検査(初回) ¥44,000
子宮内フローラ検査(2回目以降) ¥22,000
ERA検査(初回) ¥132,000
cineMRI ¥22,000

※別途、診察料、血液採取料・検体検査管理料・判断料が加算されます。

体外受精

局所麻酔 ¥11,000
静脈麻酔 ¥33,000
採卵 ¥44,000
精子調整 ¥33,000
媒精 ¥22,000
顕微授精セットアップ ¥33,000
顕微授精(実施1個あたり) ¥8,800
卵子活性化 ¥11,000
初期培養 ¥66,000
胚盤胞培養 ¥33,000
胚凍結保存 ¥38,500
凍結(実施1個あたり) ¥5,500
新鮮胚移植 ¥93,500
凍結融解胚移植 ¥115,500
PGTセットアップ ¥22,000
PGT(実施1個あたり) ¥88,000

※保険診療の場合は所定の点数に従って請求を行います。

体外受精のための薬剤

FSH/hMG注射(1アンプルあたり) ¥3,300
ゴナールエフ450(自己注射) ¥48,520
セトロタイド ¥7,700
ブセレリン点鼻薬 ¥6,930
ゴナトロピン ¥5,500
エストラーナ ¥121
ウトロゲスタン膣錠カプセル ¥550
クロミッド ¥121
フェマーラ ¥748
ジュリナ ¥71

※別途、調剤料・診察料が加算されます。
※院外処方は処方薬局により金額が変わります。

体外受精のための血中ホルモン値検査

卵胞刺激ホルモン(FSH)* ¥2,700
エストロゲン(E2)* ¥4,400
プロゲステロン(P4)* ¥3,498
黄体化ホルモン(LH)* ¥2,574
HCG ¥3,212
プロラクチン ¥2,200

*項目は、3項目以上で¥8,200

精子凍結

精子凍結                                                                               手技料:¥11,000
                                                       凍結保存料:¥2,200/月

※別途、診察料が加算されます。


私設サイト

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