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【プレスリリース】アルコール依存症治療薬「ジスルフィラム」が新しい標的タンパク(FROUNT:フロント)を阻害してがんを抑制することを発見

2020年1月30日
日本医科大学

東京理科大学

熊本大学

千葉県がんセンター研究所

東京大学

要旨

日本医科大学解析人体病理学教室の遠田悦子助教、清水章教授および東京理科大学生命医科学研究所の寺島裕也講師、松島綱治教授らの研究グループは、免疫細胞の一種であるマクロファージの働きを制御する細胞内タンパク質FROUNT(フロント)を阻害することでがんを抑制できることを新たに発見し、 その成果を報告しました(Nature Communications 30th January 2020, https://doi.org/10.1038/s41467-020-14338-5)。
マクロファージは免疫細胞の一種で、がんの悪化に影響を与えることが知られていますが、マクロファージを調節する抗がん剤は例がなく、標的分子の発見と制御方法の開発が求められていました。この研究グループが2005年に発見、命名したFROUNTは、マクロファージが体内を移動(遊走)する際に動きを制御する細胞内タンパク質の一つです。今回の研究では、FROUNTを欠損させたマウスではがん細胞の増殖が弱まっていること、がん組織中のマクロファージの数や活性化も減少していることを見出しました。ヒトにおいても、FROUNTの発現の低い患者さんでは、発現の高い患者さんと比較して手術後の予後が良いことがわかりました。そこでFROUNTを標的とした新たな抗がん剤の開発を目指し、およそ13万種類の化合物について創薬スクリーニングを行った結果、既存のアルコール依存症治療薬「ジスルフィラム(DSF)」がFROUNT分子内の特定の部位へ結合することで機能を阻害してマクロファージを調節して、がんを治療できることを発見しました。更に、免疫チェックポイント阻害薬が効きにくいがん細胞に対してジスルフィラムを併用したところ、抗腫瘍免疫応答の増強を介してがん細胞の増殖を相乗的に抑えられることもわかりました。この成果をもとに、ジスルフィラムと免疫チェックポイント阻害薬を併用した新しいがん治療法の実用化を目指し、臨床研究を実施中です。
マクロファージは様々な疾患で問題になっていることから、幅広い疾患に対するFROUNT阻害薬の適用が期待されています。

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