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転写因子KLF5が筋萎縮の発症に重要であることを発見
KLF5の働きを抑える薬が筋萎縮を防ぐ治療法となる可能性

2021年8月17日
日本医科大学

東京医科歯科大学
千葉大学

日本医療研究開発機構

要旨

 日本医科大学生化学・分子生物学の大石由美子教授、東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科分子情報伝達学分野の中島友紀教授、千葉大学大学院医学研究院疾患システム医学の眞鍋一郎教授らの共同研究グループは、転写因子Krüppel-like factor 5(KLF5)が筋萎縮を促進することを明らかにするとともに、KLF5の働きを抑えるAm80という薬剤を飲むことにより、筋萎縮の発症が防げる可能性を新たに発見しました。

 今回、共同研究グループが着目したのは、Znフィンガー転写因子のファミリーKrüppel-like factor family of transcription factor(KLFs)に属するKLF5という分子です。後ろ肢に体重がかからないような装置でマウスを飼育すると、3日目には後ろ肢の筋重量が減り、萎縮を起こました。このとき、萎縮した筋肉ではKLF5が一時的に増加していました。次に、骨格筋特異的にKLF5遺伝子を欠損したマウスを、同様に後ろ肢に体重がかからないような装置で飼育すると、筋肉の萎縮が抑制されました。このことから、筋萎縮の発症に、KLF5が重要な働きを担うことがわかりました。
 また、KLF5の働きは、Am80という薬剤によって抑制することができました。マウスにAm80を飲ませておくと、後ろ肢に体重がかからない状態で飼育しても、筋萎縮が起こりにくくなりました。さらに、ヒトにおいても、加齢や寝たきりの生活では筋肉におけるKLF5の発現が増加することが確認されました。これらの結果は、KLF5がサルコペニアなどヒトの筋萎縮の病態にも関与している可能性を示唆しています。

 本研究で用いたKLF5機能を阻害するAm80という薬剤は、すでに前骨髄球性白血病の治療薬として使われているもので、その安全性や安定性は確立されています。KLF5の抑制薬は、筋萎縮に対するよい治療・予防法となる可能性が示唆され、今後の展開が期待されます。


 本研究は、日本医療研究開発機構(AMED) の革新的先端研究開発支援事業(PRIME)「生体組織の適応・修復機構の時空間的解析による生命現象の理解と医療技術シーズの創出」研究開発領域における研究開発課題「細胞代謝が規定するマクロファージの多様性に基づく筋修復メカニズムの解明」(研究開発代表者:大石由美子)、文部科学省科学研究費補助金等の支援を受けて実施したものです。

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