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胎児・胎盤の発育を支える新たな仕組みを解明
―子宮筋層由来 IL-18 が胎盤内の「適切な炎症」を誘導する―

日本医科大学

要旨

 日本医科大学微生物学・免疫学教室(女性診療科・産科) 井野 創 大学院生、根岸 靖幸 准教授、森田 林平 大学院教授、女性診療科・産科 鈴木 俊治 大学院教授らの研究グループは、子宮筋層に存在する平滑筋細胞から産生される炎症性サイトカインinterleukin (IL)-18が、胎児・胎盤の発育に重要な役割を果たしていることを明らかにしました。
 胎児は母体由来だけでなく父方由来の抗原も有しているため、免疫学的に胎児は母体にとって「異物」といえる存在です。妊娠の維持には、そのような異物である胎児を体内に保持する必要があります。そのため、母体免疫が胎児に対して過度な炎症・免疫応答を起こさない「免疫寛容」の状態が不可欠です。一方で、胎盤形成や感染防御、さらには分娩に至る過程では、適切な炎症反応も必要とされます。すなわち、妊娠期間を通じて、炎症と抗炎症の間で精緻に制御された免疫バランスの維持が、生児獲得のために極めて重要です。
 本研究ではマウス妊娠モデルを用いた解析により、妊娠期の子宮筋層に存在する平滑筋細胞が炎症性サイトカインIL-18を恒常的に産生し、子宮内の免疫環境を調整することで、胎児・胎盤の発育を促進していることを明らかにしました。さらに、子宮筋層からのIL-18産生が低下した場合、胎児および胎盤の発育障害が生じるだけでなく、妊娠後期の母体血圧上昇に寄与することも明らかになりました。これらの結果は、子宮筋層由来IL-18の分泌不全が、胎盤形成異常を介して妊娠高血圧症候群の発症に関与し得ることも示しています。
 本研究は、子宮筋層を胎児の入れ物としての「受動的な構造体」ではなく、妊娠期免疫制御における能動的な調節因子として位置づけ、妊娠維持における新たな生理的メカニズムを提示するものです。


 *本研究成果は、2026年1月に「Cell Reports」誌に掲載されました。

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