診療内容
消化器外科
上部消化管(胃・食道)疾患
カンファランスを行い、治療方針を検討します。手術適応の際は、腹腔鏡・胸腔鏡手術を中心に多くの手術を外科で行っております。食道・胃の早期がんに対して内視鏡下粘膜下層切開剥離術(ESD) を行っております。また、放射線科と連携し根治的化学放射線治療を行うなど、個々に合った治療を幅広く行っております。食道・胃疾患でお悩みの方は是非ご相談ください。
食道とは?
食道は喉から胃につながる約25cmの細長い管状臓器です。食物を胃へと輸送する働きをしており, 消化吸収機能はありません。
食道の壁は大きくは内側より, 粘膜層, 粘膜下層, 固有筋層, 外膜と4層に分かれています。
食道がん
食道がんは粘膜から発生し, 粘膜下層, 固有筋層, 外膜と深く進展していきます(図1)。粘膜までのがんを早期がん, 粘膜下層までのがんを表在がん, それ以深のがんを進行がんと呼びます。食道の壁は他の消化管の壁より1層薄いため, 早期に転移が生じることが多く, 様々な治療を合わせた集学的治療が必要となります。
図1
食道がんの症状としては胸がしみるような感覚, 食物のつかえ感, 胸痛, 体重減少, 声のかすれなどが挙げられます。
食道がんに対しては病期診断を行い, 放射線治療科との密接な連携のもと, 進行度と患者さまの全身状態に応じて, 手術療法, 内視鏡治療, 化学療法, 放射線療法, 化学放射線療法を組み合わせて行なっております(図2)。
図2
- 木曜日午後に食道外科外来を開設しております。手術をはじめとして食道がんの治療をご希望の際はご来院ください。
- 当院は日本食道学会食道外科専門医修練施設で、日本食道学会食道外科専門医の部長牧野浩司を中心に診療しております。
- 2016,2017年の週刊朝日、手術数でわかるがんの「いい病院」、2018年読売新聞社「病院の実力」で食道がん症例数の多い病院として掲載されました。
当科での手術療法は従来の開胸手術に加えて, 現在では胸腔鏡下食道切除術・縦隔鏡下食道切除術を中心に行なっております。当科部長の牧野浩司は腹臥位胸腔鏡下食道切除術の手技・成績を学会シンポジウムなどで多数発表を行なっており, 2011年, 2014年, 2017年とタイ王国チェンマイ大学に招聘され, タイの外科医への胸腔鏡下食道切除術のレクチャーや指導を行い, 国際的な貢献も行なってきております。
当科では部長 牧野浩司を中心に, 食道癌診療ガイドラインに沿って患者さまひとりひとりに合う最適な治療を行なってまいります。
胸腔鏡・縦隔鏡食道手術の創部
術式の内容(2019年度)
食道癌に対する手術 (胸腔鏡下食道切除術、バイパス術、リンパ節郭清手術)20例
食道裂孔ヘルニア・逆流性食道炎
食道裂孔ヘルニアとは食道の出口の筋肉が緩く, 胃の一部が胸腔内に入り込んでしまっている状態です。このため食道と胃の逆流防止機構が弱くなってしまい, 胃酸が食道へ逆流することにより食道炎や食道潰瘍が生じたり, 嚥下障害など様々な症状を引き起こすことがあります。
当科では胸やけ・嚥下困難, 慢性咳嗽といった食道裂孔ヘルニア・逆流性食道炎で悩まされている患者さまで, 内科的治療で効果が不十分な場合などに腹腔鏡下噴門形成術を行なっています。当科では食道癌のみならず良性食道疾患に対しても積極的に取り組んでおりますのでご相談下さい。
Weblio 辞書 小児外科の病気より
食道アカラシア
また若年者でつかえ感があるにも関わらず、腫瘍などを認めない場合は食道アカラシアが疑われます。これらの疾患に対しても、消化器科と連携し、内視鏡下拡張術で対応不可能な症例に対しても腹腔鏡下手術を行っております。
当科では食道疾患に対して豊富な治療実績と他科との連携により, 患者さまに様々な治療を提供できるよう準備しております. 食道疾患の患者さまは一度御来院下さい。
臨床研究
食道癌診断・治療におけるLiquid biopsy(リキッドバイオプシー)の研究について
近年、血液中を循環している微量のがん細胞(循環腫瘍細胞)とがん関連遺伝子が採取できるようになり、この技術をリキッドバイオプシーと呼びます。日本医科大学付属病院の消化器外科では2012年からリキッドバイオプシーの研究に取り組んでおり、その研究成果を発表してきました。リキッドバイオプシーと手術または内視鏡で組織を採取し、両者のがん関連遺伝子を比較し、腫瘍依頼の遺伝子を同定します。これらについて多摩永山病院でも倫理委員会の承認を得て、2019年より食道癌について臨床研究を開始しました。
リキッドバイオプシーはがんの早期発見や再発の早期発見、手術や抗がん剤、放射線治療効果の診断への応用も期待されています。つまり、CTなどの画像診断や腫瘍マーカーでは発見できないがんをリキッドバイオプシーで発見できる可能性があることがわかってきました。また、手術後に再発するリスクが高いかどうかをリキッドバイオプシーで予測できる可能性もあります。
今後、リキッドバイオプシーを用いて、がん遺伝子パネル検査、良性疾患への応用、新薬の開発などに医学の分野での応用が期待されています。
胃十二指腸
胃癌、胃ポリープ、胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍
胃がん
当科では、次図のように治療ガイドラインに準じて、進行度により内視鏡手術、腹腔鏡下手術、開腹手術、抗がん剤治療を選択します。胃癌は検診の普及や食生活の変化、喫煙率の低下、ピロリ菌の除菌などもあり減少傾向にありますが、2016年時点では男性1位、女性3位、総数では大腸癌についで2位の罹患率となっています。早期癌のうち、ごく早期の癌は内視鏡治療で治る可能性があります。しかしごく早期を除いてはリンパ節に転移する可能性があるため、早期がんで治る見込みが高いのは外科的手術です。
進行癌では、手術が中心ですが、術後に抗がん剤治療を行うことが標準治療となってます。手術においては、術直後の患者さんの負担を極力減らすべく、傷の小さな腹腔鏡手術を積極的に行うようにしています。現時点で胃癌手術の約30~50%前後の方を傷の小さな腹腔鏡手術で行っています。また他施設で切除不能と診断された併存疾患があったり、高度進行胃癌症例も手術や導入化学療法、分子標的薬治療も積極的に検討します。
腹腔鏡手術の創部
また近年、増加傾向にある食道・胃接合部癌に対しても腹腔鏡・胸腔鏡手術で切除・吻合をしております。2014年,2015年,2018年はその方法が胃癌学会日本内視鏡外科学会のスペシャルビデオワークショップ,パネルディスカッション,ビデオワークショップに採択されました。
食道胃接合部手術の創部(胸)
日本胃癌学会 第5版 胃がん治療のガイドラインより
更にクリニカル・パスを積極的に導入し治療の向上と入院期間の短縮を試みます。医師、看護師、薬剤師、栄養管理士など多職種によるチーム医療を導入し、栄養管理を中心として全面的にサポートします。胃癌と診断され、治療に悩まれている方はぜひご相談ください。
多摩地区で先進的な胃癌治療をお考えの方は是非ご相談ください。
胃がんの化学療法 免疫療法
進行胃がんの切除不能・再発がんに対する抗がん剤治療は、S-1またはカペシタビン+シスプラチンが1次治療Aでしたが、シスプラチンの代わりにオキサリプラチンが1次治療Bとなりました。また、分子標的薬ラムシルマブ+パクリタキセル(Ramcirumab+PTX)が2次治療の推奨度Aとして認められました。このため、シスプラチンで無効または副作用で治療を断念していた患者さまにも抗がん剤治療の幅が広がりました。さらに、進行がんの際には、さらに3次治療へ進む、あるいは2次治療でRam+PTXが選択できないなどの状況に遭遇します。2018年に大きな変化があり、胃がんで初めて免疫チェックポイント阻害薬ニボルマブ(Nivolumab)が認可され、3次治療の推奨度Aとなりました。
それ以外にも2019年にはMSI-high固形がんに対して免疫チェックポイント阻害薬ペムブロリズマブ(Pembrolizumab)が認可されており、胃がん治療に用いることができます。
臨床研究
これまで、2次治療、3次治療に対して、ドセタキセル、塩酸イリノテカン、パクリタキセルの単独療法を選択しておりました。どの薬剤に効果があるかは実際にやってみないとわかりませんが、その指標として、どの薬剤に効果がありそうか(感受性)を調べるのが、抗がん剤の感受性検査です。1次治療のみ決まっていた2012年より、当院で手術された胃進行がんの患者さまに、同意の上で抗がん剤感受性検査を当科の臨床研究としてCD-DST法による抗がん剤感受性検査を行っておりました。
CD-DST法は癌細胞を培養して、抗がん剤の感受性を調べる検査です。当科では検査会社に提出して検査を行い、当科では臨床研究として行うため無料で行っておりましたが、2次治療、3次治療がガイドラインで示されたため終了しました。3次治療の推奨度Bでドセタキセル、塩酸イリノテカン、パクリタキセルの選択の指標としてCD-DST法を希望される際は、保険診療で行いますので、希望の際はお伝えください。
胃GIST(消化管間質腫瘍)
胃粘膜下腫瘍の一つです。胃GISTは悪性疾患であり、小さなものの悪性度は低い場合が多いですが、大きくなると肝臓や肺などに転移し、命にかかわる場合もあります。
術前にGISTとの確定診断を得ることが困難な場合も多くありますが当院では、EUS-FNA(超音波内視鏡下穿刺吸引法)を導入し、胃粘膜下腫瘍の診断が可能となりました。
治療ガイドラインに沿って治療を行います。GISTを疑わない2cm以下の胃粘膜下腫瘍は経過観察、2cm~5cmの大きさの胃粘膜下腫瘍や小さくても胃GISTを疑うものは相対的な手術適応です。5cmを超える腫瘍は手術適応です。手術の際は腹腔鏡(補助下)胃局所切除、幽門側,噴門側胃切除・胃全摘術を施行し、その他、イマチニブ(グリベック)内服による分子標的療法を行っています。
胃粘膜下腫瘍を指摘され治療方針に悩まれている方もいつでもご相談ください。
GIST研究会 GIST診療ガイドライン 胃粘膜下腫瘍(SMT)の治療方針
肝臓・胆道・膵臓疾患
当院は日本肝臓学会認定施設、日本肝胆膵外科高度技能専門医修練施設、日本膵臓学会認定指導施設に認定されております。
肝胆膵外科高度技能指導医である吉田寛教授、横山正准教授の指導のもと、2015年に平方敦史、2017年に上田純志(現在所属:武蔵小杉病院)、2019年に高田英志が難関である肝胆膵外科高度技能専門医に認定されました(南多摩地区で最も多い人数です)。
当院では肝胆膵疾患を専門とする医師が5人常勤しており、常に肝胆膵疾患の患者さまを受け入れております。肝胆膵癌に対する手術件数はグラフに示した通り、年々増加しております。肝胆膵疾患でお悩みの方は是非当院へお越し下さい。また、肝胆膵疾患でお悩みの先生方へ、是非当院へご紹介ください。
(火曜日:横山正、水曜日:当番医、木曜日:平方敦史・古木裕康、金曜日:当番医、 土曜日:横山正・高田英志)
肝疾患(担当:講師 平方敦史、助教 高田英志)
肝悪性腫瘍
肝臓は腹腔内では最大の臓器であり、右上腹部に位置しております。再生能力および代償能力に優れ、多少のダメージでは痛みなどの症状を出すことがあまりなく、異常に気づいたときには病気が進行しているいわゆる沈黙の臓器と言われています。肝臓の悪性腫瘍は肝臓そのものから発生する原発性肝癌と他臓器の癌が原因となる転移性肝癌にわかれます。原発性肝癌の90%は肝細胞からなる肝細胞癌です。いずれも根治治療には切除が必要で、可能であれば手術を行います。切除の適応は、病変を完全切除することができ、残った肝臓に十分な機能があることです。
当院では症例に応じて、より低侵襲な『腹腔鏡を用いた肝切除』も行っております。
肝細胞手術の治療成績
当院には肝臓専門医が3名、肝胆膵外科学会高度技能医が3名在籍しており、肝切除を含め原発性肝癌の治療を積極的に行っております。肝細胞癌に対しては手術、放射線血管治療、化学療法を行っております。特に根治が望める肝切除においては良好な成績を修めており、ご高齢の方や肝硬変など、他の疾患を合併している患者さまにも積極的に手術を行っております。
また、他施設にて手術を断られた方も様々な工夫をしながら安全に手術を行っております。
2010年から2018年の8年間に当院で施行した肝切除の成績です。
高齢化する多摩エリアにおいて、さまざまな持病を抱えた方にも安全に手術を行っており、いわゆる高齢者とされる65歳以上の患者様が全体の87.2%を占めます。さらに80歳以上は20.2%を占めております。他施設から断られた高齢者、高度進行癌、合併症のある方に対しても工夫して切除しております。これらを考慮しても他の施設に遜色のない良好な治療成績を修めております。
肝臓腫瘍と診断された方、肝切除が必要と診断された方、是非、当院を受診し、ご相談ください。また、肝疾患の治療が必要と診断されたクリニックの先生方、是非、当院をご紹介ください。
多数の施設から切除不能と診断された方(ご高齢者を含む)を御紹介いただき、多くの方を部分的脾動脈塞栓術(PSE)(注1)や門脈塞栓術による肝予備能を改善、化学療法による腫瘍縮小、合併症のコントロールなど、工夫して切除しております。クリニカル・パスを導入し、全国に先駆けて手術翌日から早期離床、経口摂取を開始し、合併症を減らし早期退院(5~10日後)を実現させています。
切除不能な方でも、ラジオ波凝固療法、経動脈的化学塞栓術(TACE)など、より患者さまの全身状態に適した治療を選択しています。
門脈圧亢進症
胃、小腸、大腸、脾臓、膵臓など消化管・腹部臓器の殆どは各々の動脈から血液が入り、静脈から出て行きます。肝臓には肝動脈と門脈の2種類の血管を通して血液が入り、肝静脈から出て行きます。2種類の血管が入る臓器は肝臓だけです。消化管・腹部臓器から出てきた静脈は門脈に集合し肝臓に入っていきます。肝硬変つまり肝臓が硬く変わってしまうと、門脈は流れにくくなり圧が上昇します。門脈圧(正常値10-15cmH2O)が常に20cmH2O(14.7mmHg)以上に上昇した状態が門脈圧亢進症です。
門脈圧亢進症になると、消化管・腹部臓器から出てきた静脈血流は肝臓以外へ逃げ道(側副血行路)を作ります。食道や胃の静脈を逃げ道にすることが多く、食道胃静脈瘤を形成します。食道胃静脈瘤は圧が高いために静脈が瘤(こぶ)のように膨らむ状態です。食事が通過する場所ですから、胃酸などで表面を損傷した場合に大出血をきたすのです。
当施設では、食道静脈瘤に対する治療法として内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL)を2ヶ月毎に計3回治療するBi-monthly法を考案し、良好な成績を収めるとともに短期入院を実現させています。また塞栓術、手術療法も多数施行しておりますので、患者さまの状態に適した治療を選択いたします。
また門脈圧亢進症では、腹水が出現する場合があります。利尿剤ではコントロールが難しい難治性腹水に対してはデンバーシャント(腹腔内と静脈の間に管を挿入する)を造設し、QOL(生活の質)を改善させています。
門脈圧亢進症では、脾機能亢進症(脾臓が大きくなり血小板などを減少させる)が出現します。当施設では脾機能亢進症に対し腹腔鏡下脾臓摘出術も施行していますが、脾を温存する部分的脾動脈塞栓術(PSE)(注1)を多数施行しております。
門脈からの逃げ道が多くなると肝臓で処理されなければいけないアンモニアの血中濃度が高くなり、意識が朦朧となり時には昏睡状態(肝性脳症)に陥ります。そのような高アンモニア血症に対しては、原因である血管を塞栓(詰める)するとともにPSEを施行する方法を開発し、再発率を低く抑えることができた事を報告しております。
注1:部分的脾動脈塞栓術(PSE):日本医科大学が得意とする治療法で、多数例の経験があり論文も多数報告しています。脾臓の動脈から塞栓物質(スポンジ)を注入し脾臓の一部を梗塞させます。
治療後には血小板(止血に必要な血液成分)が上昇し、門脈圧が下がり、肝機能が改善することを報告しています。肝切除前、脾機能亢進症、食道胃静脈瘤に対し施行しております。
肝嚢胞
巨大肝嚢胞や多発性肝嚢胞に対して、経皮的ミノサイクリン注入療法を施行し、良好な成績を報告しております。
皮膚から嚢胞内に細い管(カテーテル)を挿入し、ミノサイクリン(抗生物質)を注入します。特に多発性肝嚢胞に対して施行している施設は殆どないため、他施設からご紹介いただいております。是非、ご相談ください。
良性胆道疾患
胆石症、胆嚢炎、胆管炎、胆嚢ポリープ
胆道良性疾患には胆石による胆嚢炎、胆管炎が多く、発熱、腹痛、黄疸などが発症します。胆石は胆道にできる結石で原因はコレステロール高値や胆道感染など様々です。胆石による胆嚢炎と診断された場合は、急性期では胆嚢に直接針を刺すことで胆嚢内の膿を出す、経皮経肝胆嚢ドレナージ(PTGBD)を行い、胆管炎の場合は胃カメラを用いて胆管内の胆汁を排泄する、内視鏡的胆道ドレナージ術を行います(ERCP, ENBD)。これらにより急性期の炎症を抑えた後に胆嚢摘出術を行います。
また、胆嚢ポリープに関しても、増大傾向や、痛みなどの症状を伴う場合は胆嚢摘出術を行っております。
当院では胆嚢摘出術のほぼ全例、腹腔鏡を用いて行っております。1.5cm程度の小さな傷から内視鏡を挿入し、5mm程度の切開を3か所追加し鉗子を用いて胆嚢を摘出いたします。体の傷はほとんど目立たず、術後の疼痛も軽いため早期に退院することができます。症例によっては1カ所の創で手術する単孔式胆嚢摘出術も行っています。毎年120件前後の腹腔鏡下胆嚢摘出術を行っており、良好な成績を治めております。
悪性胆道疾患
胆道とは肝臓で生成された胆汁を十二指腸に運ぶ通り道のことで胆管、胆嚢、そして十二指腸の入り口となる十二指腸乳頭部の事を指します。そこにできる悪性腫瘍を胆道癌とよび、胆管癌、胆嚢癌、十二指腸乳頭部癌の総称です。
胆道癌の初発症状は黄疸、腹痛が多く、医療機関を受診して発見されることが多いです。
黄疸の症状は
1.皮膚の黄染、2.眼瞼結膜の黄染、3. 尿の黄染、4. 白色便、5. 皮膚の掻痒感(かゆみ)です。特に胆道に閉塞を認める黄疸を閉塞性黄疸といい胆道癌による閉塞の可能性があります。その場合は内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査(ERCP)を施行し、内視鏡的経鼻胆道(ENBD)ドレナージチューブを留置し黄疸の治療をします。その際に、胆汁の細胞診や胆管の擦過細胞診を行うことで癌細胞の有無を診断いたします。
胆道癌の治療には
1.手術、2.化学療法(抗癌剤)、3. 放射線治療があり、いずれも当院にて治療可能です。
手術療法
胆道癌において治療の第一選択は手術です。手術による切除により癌を体内から取り除ける可能性があります。しかし、胆道癌の手術療法は多くの種類があり、広範な切除を必要とするものもあります。その理由は胆道癌の場所により術式が大きく異なることと、周囲に主要な臓器があり浸潤しやすいため合併切除を要すことがあるからです。
胆道癌の手術術式は
1.亜全胃温存膵頭十二指腸切除術
2.肝切除術+肝管空腸吻合術
3.肝膵同時切除術
4.肝切除術
5.胆嚢摘出術
6.胆管切除術
多くの症例は癌の局在により1や2を行いますが、場合によっては3のように肝臓と膵臓の両方を切除する事もあります。多くの場合は3~4週間の入院を必要とします。また、肝臓の内部にできる肝内胆管癌は4となり、癌の進行度によっては5や6となることがあります。
化学療法
胆道癌の化学療法で科学的根拠のある治療薬はゲムシタビン、シスプラチン、TS-1の3種類です。これらを組み合わせながら癌の増殖を抑える効果が期待できます。
放射線治療
切除が難しい症例や再発などによる局所制御や腫瘍による疼痛制御を期待する場合に行います。しかし、照射量に制限があるため治療の限界もあります。
膵・胆管合流異常
通常、胆管と膵管は十二指腸壁内で合流し共通管を形成します。膵・胆管合流異常は、胆管と膵管が十二指腸壁外合流する先天性の形成異常です。胆汁と膵液が逆流し、膵炎の原因、胆道がん発生のリスクとなると報告されています。
治療は胆管に拡張を認める場合(先天性総胆管拡張症)では、『分流手術(肝外胆管切除+胆嚢摘出+胆管空腸吻合)』が推奨されております。当院では術後の疼痛軽減、早期の社会復帰の観点から、症例に応じて『腹腔鏡を用いた分流手術』をおこなっている全国でも数少ない施設のひとつです。また、この疾患には胆管に拡張を認めない場合もあり、この場合は『腹腔鏡下胆嚢摘出術』をおこない経過をみていきます。
発癌する前に適切に治療がなされれば予後は良好な病気です。『膵・胆管合流異常、あるいは、総胆管拡張症』と診断された際は、是非我々にご相談ください。
当院は『日本膵臓学会認定指導施設』であり、担当医の横山正は『日本膵臓学会認定指導医』です(2020年現在、外科医として南多摩地区では1名のみ)。
膵疾患では、主に膵臓の腫瘍(膵癌、嚢胞性膵腫瘍、内分泌腫瘍、など)と炎症性疾患(急性膵炎、慢性膵炎など、)の診断と治療を行っています。『膵がん』は未だ予後不良疾患でありますが、当院では、『膵癌診療ガイドライン』に則った診療のみならず、独自の治療方針を構築、診断法の進歩、化学療法(GEM(ゲムシタビン)+nab-PTX(ナブ-パクリタキセル)、FOLFIRINOX、S-1(内服)、その他、などを状況に応じて組み合わせる、また、本年度から承認された2nd lineされたリボゾーム・イリノテカン(®オニバイド)も既に使用)や放射線療法の充実、また、安全で安定した手術と術後経過を確立する(膵頭十二指腸切除術クリニカル・パスの実施、膵体尾部切除術クリニカル・パスの実施)ことで、治療成績が格段に向上しています。切除困難や切除不能とされた患者さまに対し集学的治療を行った上で切除していること(術前補助化学療法)、など、予後改善にも積極的に努めており、肝胆膵外科高度技能専門医修練施設、日本膵臓学会認定指導施設として誇ることができる医療の実践、を自負しております。
(2019年度:膵がん:65例、膵がん手術:27例(そのうち、病期0が1例)、膵切除術:39例*)
また、2012年度に保険診療が認められたこともあり、適応疾患については『腹腔鏡下膵切除術』も積極的に実施しておりますので、こちらについてもお気軽にご相談ください。
※膵切除術例は膵がん以外に他の膵腫瘍や胆管がんや胃がんなども含まれます。
膵がんの手術実績
膵がんの化学療法治療実績
下部消化管(大腸・肛門・小腸)
対象疾患:大腸がん、小腸腫瘍、大腸憩室症、腸閉塞など
大腸がん
取り組み:1.低侵襲治療―腹腔鏡(補助)下手術
2.肛門機能温存―超低位前方切除、術前放射線化学療法
3.テーラーメイド医療―遺伝子変異検査、癌遺伝子パネル検査
当院では、火曜日午前中、金曜日午前中に2名の医師による専門外来を行っています。それ以外の曜日でも、ご来院頂きました患者さまは検査予約など対応しております。大腸の病気の症状は、腹部膨満感や排便の回数や形状の変化(便が細くなる、やわらかい便)、血便などが主な症状です。症状がある場合は、大腸を含めた腹部の精密検査が必要です。また健康診断や検診の便潜血反応陽性を指摘された方も大腸の精密検査が必要です。大腸の精密検査は、鎮痛剤を使用した無痛の内視鏡検査(火・水・木・金)の他、3D-CT検査(水)も実施しています。(当院は準備中、現在関連病院で施行)また、女性の患者さまにおかれましては、土曜日に女性医師による大腸内視鏡検査をお受けいただけます。大腸ポリープや早期がんに対しては、消化器内科と連携をとり内視鏡的治療を積極的に行っております。手術療法では、当院より内視鏡技術認定医を輩出し、大腸グループで内視鏡技術認定医2名在籍のもと患者さまの負担が少ない治療を心がけ、腹腔鏡補助下の大腸切除を2004年から導入し、現在では癌手術の約80%を占めています。(写真)またさらに肛門から近い部位にできた腫瘍に対して積極的に肛門を温存する術式を選択しております。とりわけ、高度に進行した癌患者さまには、抗がん剤治療や放射線治療などを組み合わせて行い、癌を縮小させてから手術を行う術前治療を取り入れ予後の改善に努めています。特に抗癌剤治療に関しては、内視鏡検査で診断された際に遺伝子検査を行うことで個々の患者さまに適切な治療を提供すること、専門的な知識をもつ薬剤師による副作用やその対処法に対する情報提供や心療内科部門によるサポートなどきめ細やかな治療を行っています。また、抗がん剤による初回治療で効果が得られなかった患者さまのがん遺伝子パネル検査にも対応しております(付属病院遺伝診療科と提携)。人工肛門を造設されている患者さまについては、金曜日にWOCナース(皮膚・排泄ケア認定看護師2人)による外来を設置し、手術前から連行し、きめ細やかなケアができるようにしております。受診の際は、かかりつけの先生よりのご紹介をいただき、お電話での外来予約をお願いします。
大腸診療グループの腹腔鏡手術
CTコロノグラフィーを使った大腸検査
1)CTコロノグラフィーとは
CTコロノグラフィーとは、肛門・直腸から全大腸へ空気を注入したうえでCT撮影を行い、画像処理を行って実際の内視鏡でのぞいているように画像を再構成する方法です。実際の検査では、内視鏡より少ない量の下剤を服用し大腸の中を空にして、当日、CT検査台の上でお尻から炭酸ガスを注入し、CT撮影を行います。炭酸ガスを入れるため、おなかが張った感じがしますが、痛みはほとんどありません。撮影は仰向けとうつ伏せの2回行いますが、10分前後で終了します。
2)大腸CTコロノグラフィー検査と大腸内視鏡検査の比較
CTコロノグラフィの画像
CTコロノグラフィー検査後に、確定診断のため大腸内視鏡検査を施行する場合や症状や状況によっては、先に大腸内視鏡検査をおすすめすることもあります。検査方法を含め消化器外科の担当医にご相談ください。
肛門疾患(担当:若林秀幸 日本大腸肛門病学会専門医)
痔核、裂肛、痔瘻
肛門の痛み、でっぱり、あるいは出血があったときにはまず「痔がある」とお考えになるかと思います。市販薬での治療で治せることもあるものの、痔の内訳を誤解すると治らないどころか悪化の一途を辿る場合があります。まずはご相談ください。薬での治療や外来手術など、負担の少ない治療を提示させていただきます。
痔には外側がむくんだり肛門の内側から腸のようなものが飛び出る痔核(いぼ痔)、硬すぎや緩すぎの排便の際に肛門が切れる裂肛(切れ痔)、肛門の脇に細いバイパスができて膿を繰り返す痔瘻(あな痔)に大別されます。また肛門の清拭過剰による皮膚炎など痔以外の病態もあり、適切な診断により正しい治療が可能となります。相談のしづらい部位の疾患ですが、肛門に症状がおありの際は是非受診して頂けたらと思います。
当院では主に外来での治療を行い、手術治療は、近隣の専門病院(多摩肛門科病院)への紹介など連携して行っております。
排便障害
便秘や下痢は比較的コントロールされずにいる方が多いです。そのような排便習慣が将来的に痔核や裂肛、痔瘻のリスクに繋がります。肛門疾患におかかりの患者様は勿論のこと、そうでない方も自分の排便に苦慮されていれば一度ご相談ください。
一般外科(ヘルニア、下肢静脈瘤)・救急・小児外科
腹部救急疾患(胃穿孔、出血、腸閉塞、腹膜炎、急性膵炎、外傷)は随時対応しております。
- 成人ソケイ、大腿ヘルニア手術は数多く手掛けております(年100例以上)。人工膜(メッシュ)を挿入する手術を積極的に取り入れて術後の突っ張り感の軽減に努めています。また最近は腹腔鏡下手術を約半数の方に施行し、整容面にも配慮し早期回復に努めております。
- 下肢静脈瘤は平成26年12月より第1木曜午後に東京デイサージェリークリニックの柳院長(レーザー下肢静脈瘤手術は、日本トップクラスの5,000例以上)が外来を担当しております。
- 小児外科は第4週月曜午後に日本医科大学武蔵小杉病院小児外科部長の高橋翼准教授が外来を担当しております。
通院治療・制がん化学療法通院治療
消化器がん(胃・大腸・食道・肝・膵)乳腺・肺の患者さまに対して外来通院にて化学療法・分子標的療法を行なっています。治療方針に関しては各専門領域の担当医と連携しつつ施行しております。2005年8月より、専任の看護師と薬剤師を擁する「外来輸液療法室」が開設され通院中の患者様が快適かつ安全に化学療法が施行できる体制を整えております。私共は抗がん剤の臨床試験(治験)を多施設共同で行っております。現在4種が進行中です。
NCD (National Clinical Database) へのご協力のお願い
何卒趣旨をご理解の上、ご協力賜りますよう宜しくお願い申し上げます。
なお、データの提供を希望されない場合は、担当医までお知らせください。
甲状腺外来
甲状腺外来は月曜午後に、日本医科大学付属病院内分泌外科の軸
【取扱い疾患】
悪性・良性腫瘍、悪性リンパ腫、甲状腺機能亢進症(バセドウ病)・低下症(橋本病)、甲状腺炎(亜急性、急性化膿性)、副甲状腺疾患等
健診・人間ドックでの胸部CT検査や頸動脈エコー検査等で偶発的に甲状腺腫瘤や腫大等の異常を認める場合があります。また、いわゆる「不定愁訴」と思われる様々な自覚症状が、実は甲状腺機能異常(機能亢進症または低下症)による可能性もあります。機能亢進症の例としては、イライラ,動悸,多汗,手の震え,体重減少,下痢,眼球の突出,甲状腺の腫れ等が、低下症の例としては、肌のかさつき,気力の衰え,便秘,体重増加,寒がり,眉毛の脱毛等が挙げられます。また、トピックとして「不妊症」があります。甲状腺機能異常は、不妊症との関係や流産率の上昇が報告され、日常生活に差し支えない程度のごくわずかな潜在性甲状腺機能低下症でも流産率が上昇する可能性があるようです。軽症の機能低下症に対してホルモン補充(内服)を行うことにより、妊娠率や流産率が改善したとの報告があります。
甲状腺疾患を疑った場合、甲状腺関連採血と超音波検査を行います。腫瘤を認めた場合は、必要に応じて良悪性を診断するために甲状腺細胞診を行います。
また、原因不明の高カルシウム血症、尿路結石症、骨粗しょう症や病的骨折等の場合、副甲状腺機能亢進症の可能性があります。このような場合、カルシウムおよび副甲状腺ホルモン等の採血を行い、必要に応じて各種画像検査(超音波検査、造影CT検査、MIBIシンチ)でその局在診断を試み、副甲状腺腫大を認めた場合は手術適応となります。
以上、何かご心配な点がございましたら、ご遠慮なく受診して下さい。
研究概要
研究目的
臨床上の疑問点をテーマとし、臨床研究で得られた結果をフィードバックさせ治療成績の向上を目指すこと。
研究体制
消化器系臓器別に上部消化器管、下部消化器管、肝・胆・膵の3領域における病態生理、臨床病理的研究を行う体制をとっている。研究課題は癌に関連するものが多い。その他手術手技、腹腔鏡下手術、外科侵襲など。
研究材料・方法
診療業務から得た臨床データ、血液、組織、臓器等を材料としている。病理組織学的方法を用いる場合には、当院病理部との共同研究となる。分子生物学的方法を用いるには第二病院・先端医学研究所の協力、指導を得ている。文部科学省、厚生労働省の科学研究補助金による研究、多施設共同研究、日本がん臨床試験推進機構主導の臨床試験にも参画している。
研究結果の公表
医学会、研究会等で発表する、あるいは医学雑誌、著書等に論文として公表すること。
当科における2010年からの論文業績 (PDF:501KB)
お問い合わせ(平日・夜間・休日救急外来)
日本医科大学多摩永山病院
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