整形外科学とは、筋骨格組織を対象にした感覚運動機能再建学です。筋骨格系組織の外傷、スポーツ障害、加齢に伴う変性性疾患、感染、腫瘍、先天性疾患を対象に基礎的研究、臨床的研究を行っています。

 臨床的研究としては筋力の早期回復、関節可動域の改善、感覚受容体の温存、靭帯機能の温存、関節運動を再現するという観点で、人工関節置換手術に最小侵襲手術(MIS)、靭帯の張力を術者の感覚で行うのではなく定量的に手術を行えるコンピュータ支援技術の開発、術後に正座ができる人工膝関節デザインと手技の開発、前十字靭帯を温存して行う新しい術式の開発を行っています。さらにAugmented reality (AR)を応用する研究を行っています。

 関節手術に対しては内視鏡を用いた手術を積極的に行っていますが、脊椎手術にも内視鏡を導入しました。また、脊椎、肩・肘・股・膝関節、手の外科、足の外科、骨・軟部腫瘍などを対象とした疾患ならびに外傷に対する系統的臨床研究を行い、部位別には、脊椎では頚・腰椎部疾患の診断・治療、手術手技、手の外科では手関節周辺骨折、末梢神経・腱の障害に対する治療法、骨延長術の工夫、肩関節周辺骨折に対する手術的治療の新知見などを発表しています。関節症の生化学的分析、足関節手術法、腫瘍増殖能の検討なども行っています。


 基礎的研究では、生体力学的手法による運動解析、応力分析を股関節、膝関節に対して行っています。分子生物学的研究では細胞外micro RNAと疼痛メカニズムに関する研究や、関節軟骨の発生・分化・形成に関係が深いSOX9発現を制御する転写因子(TF)を含む転写ネットワークの解明を行っています。骨組織再生における分子生物学的研究、ES細胞による研究も学外研究機関と共同研究を行っています。また疼痛緩和に関する電気生理学的研究、骨粗鬆症に対する遺伝子学的・分子生物学的研究を行っています。