石井庸介2


外科学(心臓血管外科)/心臓血管外科学
石井 庸介  大学院教授

 心臓血管外科学は、外科手術によって多岐に亘る循環器疾患を治療する学問です。循環器疾患は、虚血性心疾患、弁膜症疾患、不整脈疾患、心不全疾患、大動脈疾患、末梢動・静脈疾患、小児循環器疾患など多くの領域をカバーします。日本医科大学 心臓血管外科学教室ではすべての領域を分け隔てなく研究・診療しています。循環器内科、小児科、放射線科、脳神経内科、腎臓内科、糖尿病・内分泌内科、救命救急科などの関連診療科教室と協力しながら、病理学教室、分子細胞構造学教室などの基礎医学教室、先端医学研究所と密接に協力して研究を行っています。また、心臓血管外科学は、医療だけでなく医用生体工学に対する研究も重要です。低侵襲手術、人工心肺、人工心臓、ペースメーカ、IMPELLAや大動脈バルーンパンピングのような補助循環装置、人工弁、人工血管、さらにはAIを用いた手術室の構築などの研究を行っています。さらに心臓血管外科手術には精緻な技術が必要です。そのためにはトレーニングも重要な要素であります。匠の技の伝授を科学的に検証し、次世代への伝承を目的に基礎研究も行っています。


 心臓血管外科領域では、2000年頃から“Academic surgeon”をどのように育てるかということが、重要な課題として国内外の学会で毎年議論されています。医師は単なる医者ではなく医学者でもあります。科学者の一員として疾患を観察し、病態を把握した上で、外科手術としての治療法を実践することが望まれています。直感や過去の経験則だけで診断・治療するのではなく、科学者としての眼を持って、客観的に判断、対処できる外科医を育成することが重要なのです。大学病院のような学術研究機関(Academic institution)だからこそできる科学に基づいた外科治療を目指します。


 心臓血管外科学教室では、心臓血管外科のトレーニングとともに消化器外科、呼吸器外科、甲状腺・内分泌外科、乳腺外科でのトレーニングが必要と考えています。上記診療科と協力しながらトレーニング プログラムを作成しています。特に消化器・一般外科研修は1年間かけてしっかりと基礎から学ぶことが重要です。日本医科大学 心臓血管外科教室では50年以上前から一貫した教育プログラムを作成し、多くの臨床医の育成をしてきました。さらに、手術に対するトレーニングとして、Dry Lab、Wet Labなどを定期的に行っています。