金田 誠 大学院教授
生理学(システム生理学)/感覚情報科学
金田 誠  大学院教授

生理学は正常な生命現象を機能の面から理解しようとする学問です。生理学が対象とする正常な生命現象は、正常機能の破綻で生じるさまざまな病気を理解する基礎知識となるものです。
感覚情報科学分野では、電気生理学的手法、生化学的手法、解剖学的手法、分子生物学的手法などの多様な研究手法を用いて、網膜における視覚情報処理機構の解明を目指しています。網膜は眼の中にある神経組織で、ヒトがものを見るのに欠かせない組織です。私たちは網膜の生理学研究を通じてヒトの視覚を理解し、医療に還元することを目指しています。また感覚情報科学分野では網膜の再生医学の研究も行っております。
医療分野では、再生医学や標的医薬をはじめとした高度先進医療の進歩に目覚ましいものがあります。こうした高度先進医療の開発は、多様な専門領域の方々の協力なしには成り立ちません。また視覚機能の再建には正常な視覚機能をより深く理解することも必要です。網膜における視覚情報処理機構の研究や網膜の再生医学に関心を持ってもらえる方と一緒に研究をすすめる機会が持てればと考えております。
生理学は基礎医学とよばれる分野に属しており、臨床の現場とは離れたところで医学研究を行っています。臨床の現場に出ることはないので何が面白いのだろうと思われる医学生諸君も多いかもしれません。しかし研究を通じて今までわからなかった生命現象を明らかにするということは大変面白いことです。私自身も内科にいたのですが、臨床医として働くよりも研究の面白さが勝ったので生理学に進んだ一人です。私は基礎医学で研究を一生の仕事とすることは、医学生が卒後一生をかけても悔いが残らない仕事と思っています。医学の発展には臨床医学の発展のみならず、基礎医学の発展も欠かせないものです。医学生諸君が将来基礎医学を志すことを願ってやみません。