1.網膜二次ニューロンの機能解析(金田、石井、尹、雁木)


網膜には水平細胞、双極細胞、アマクリン細胞と呼ばれる二次ニューロンがあり、視細胞から情報を受け取って高度な視覚情報処理を行っています。私たちはこうした網膜の二次ニューロンで、どのような情報処理が行われているのかを明らかにすることを目的として、電気生理学的技術を中心にして研究をすすめています。

網膜の層構造の模式図(左)と微分干渉像(右)

網膜二次ニューロンの機能解析

網膜は視細胞(灰色、赤、青、緑)、水平細胞(橙)、双極細胞(黄緑)、アマクリン細胞(茶)、神経節細胞(青緑)の五種類の神経細胞が神経回路を構成しています。

パッチクランプ法による可視化した網膜コリン作動性アマクリン細胞(グリーンに光っている細胞)からの電流応答記録

網膜コリン作動性アマクリン細胞

パッチクランプ法を用いることで、目的とする細胞の電流応答を直接記録して解析しています。

2.網膜神経節細胞機能の解析(金田、石井、雁木)

網膜二次ニューロンの情報はさらに網膜神経節細胞に送られます。網膜神経節細胞は、さまざまな視覚情報を符号化して脳に送っています。私たちは網膜神経節細胞がどのように視覚情報を符号化しているのかを明らかにするため、マルチ電極法を用いて網膜神経節細胞の機能を調べています。

マルチ電極法を用いた光刺激システムと記録用電極(緑色パネル)

網膜神経節細胞機能の解析

記録用電極の中心部には64個の電極(マルチ電極)が配置されています。網膜をマルチ電極上に置くことで、神経節細胞の光応答を細胞外記録法によって記録するシステムを使っています。

3.視細胞の再生医学(金田、石井)

 iPS細胞を用いたヒト視細胞の再生技術の確立開発を目指して研究を進めています。また国立障害者リハビリテーションセンターと共同で、ダイレクトリプログラミング法と呼ばれる手法を用いた視細胞の再生に取り組んでいます。

4.グルタミン酸受容体の細胞内輸送(金田、荻原、赤木)

 網膜の神経細胞はシナプスと呼ばれる構造を使って細胞間の情報伝達を行っています。シナプス部ではグルタミン酸と呼ばれる神経伝達物質が細胞間の情報伝達に使われています。私たちはグルタミン酸受容体がどのようにしてシナプス部に運ばれるのかを可視化し、グルタミン酸受容体の輸送メカニズムの解明を目指しています。mGluR6型受容体のN末端、C末端に蛍光タンパク質をつけることで、mGluR6型受容体の動きを調べることができるシステムです。

mGluR6型グルタミン酸受容体は樹状突起にしか輸送されない

グルタミン酸受容体の細胞内輸送

mGluR6型受容体(青)は樹状突起にしか運搬されません。グルタミン酸受容体輸送のメカニズムをmGlur6受容体を蛍光タンパク質(緑、橙)で標識することで可視化することができます。

5.網膜ATP受容体の機能解析(金田、石井)

 網膜のATP受容体はプリン受容体とよばれます。プリン受容体にはP2X型とP2Y型の2つのサブタイプが存在します。私たちはプリン受容体の局在を免疫組織化学的に検討してきました。現在はWestern blot法を用いたATP受容体を介した細胞内シグナル伝達経路の解析をすすめています。

GFPで可視化したコリン作動アマクリン細胞(緑)とP2X2型ATP受容体(赤)

網膜ATP受容体の機能解析

P2X2型受容体はコリン作動性アマクリン細胞にしか存在していません。コリン作動性アマクリン細胞はON型とOFF型に分かれますが、P2X2型受容体はOFF型に強く発現し(左の写真の赤いバンド)、ON型にはほとんど発現しません。左の写真は網膜全層、右の写真は赤いバンドの部分付近のみを拡大したものです。赤と緑が重なったところは黄色になります。