1)卒前教育

 コース講義は、座学が中心であるが、その中で、体験的実習も工夫して取り入れている。内容は病院前救護や災害医療などの救急医学の社会的側面(emergency medicine)と脳蘇生学、外傷学(頭頸部、体幹、四肢骨盤、熱傷など)、中毒学、集中治療学(呼吸循環、脳神経、血液浄化など)など救命医療(critical care)です。
 臨床実習(クリニカルクラークシップ)は3~4人を1グループとして付属4病院の救命救急センター内で病棟実習が行われている。学生は各々主治医グループに配属され、担当患者の病態を学習している。

2)卒後教育

初期研修医

・行動目標

  • ①チーム医療の一員として自覚を持って行動する。
  • ②救急基本手技を行うことができる。
  • ③1次救命処置ができる。
  • ④2次救命処置が理解できる
  • ⑤外傷の初期診療が理解できる。
  • ⑥重症患者の初期診療が理解できる。
  • ⑦救急患者や家族に誠実に対応できる。

 1年目の初期研修医は救急を3ヶ月研修することが義務化されているが、例えば付属病院では三次救急医療を対象とした高度救命救急センターでの研修はもちろん、総合診療センターと連携し、初期・二次救急患者の初期診療を研修できるプログラムを作成している。このようなプログラムから軽症から重症、common diseaseから重症患者までの治療や管理の研修が可能で、初期研修医が研修すべき疾患や病態、手技を経験することが可能です。研修期間内には毎朝の症例検討の中で、外傷や中毒などの外因性疾患、循環器疾患、呼吸器疾患、消化器疾患、神経疾患など内因性疾患の救急患者のほかに特殊感染症などを経験することで治療の理解を深め、心肺停止症例の心肺蘇生術等の知識と手技を習得します。また、2015年9月に付属病院高度救命救急センターで研修した初期研修医の中には前述の鬼怒川堤防決壊による医療支援活動に参加する機会を得ることができました。

専修医(専攻医)

 一般社団法人日本救急医学会に登録しているプログラムに則って専修医教育を行っている。具体的には以下のような行動目標と指導方針を有していいます。

・行動目標

  • ①チーム医療の一員として自覚を持って行動する。
  • ②緊急検査の実施と判断ができる。
  • ③救急患者の重症度、診断、治療の優先順位を判断することができる。
  • ④救急基本手技を行うことができる。
  • ⑤1次、および2次救命処置ができる。
  • ⑥外傷の初期診療ができる。
  • ⑦重症患者の初期診療ができる。
  • ⑧救急患者や家族に誠実に対応できる。
  • ⑨国際災害医療を理解する。
  • ⑩学会に積極的に参加し、研究発表をする。
  • ⑪指導医のもとで学術論文を作成する。

・指導方針

  • ①診療はグループ制であり、重症患者を順番に全疾患を担当し、チーム医療の一員として積極的に患者治療にかかわる。
  • ②指導医のもとに、いわゆる屋根瓦式で初期研修医にアドバイス、指導をする。
  • ③毎朝のカンファレンス、受け持ち患者の症状報告、病棟回診、レントゲンカンファレンス、脳卒中カンファレンス、外科カンファレンス、整形外科カンファレンス、脳神経外科カンファレンス、災害医療カンファレンス等に参加する。
  • ④抄読会、研修医レクチャーに参加する。
  • ⑤救急基本手技(気管挿管、中心静脈穿刺、胸腔穿刺、緊急気管切開、人工呼吸器管理、血液浄化法)を習得する。
  • ⑥ACLSのアルゴリズム、VF, PEA, Asystoleの治療を習得する。
  • ⑦JATEC, JPTECのアルゴリズム理解と手技ができる。
  • ⑧ICUにおける呼吸循環管理、頭蓋内圧管理、低体温療法、輸液栄養管理、院内感染対策を理解し、実践する。
  • ⑨指導医立会いのもとに患者、および家族と接し、医療者側と患者側の良好な関係を構築する一役を担う。
  • ⑩指導医のもとにドクターカーによる現場活動、病院前治療を実践する。
  • ⑪指導医のもとに専門性の高い学会に参加、発表をする。
  • ⑫研究テーマを決定し、英文を含め学術論文を作成する。

 初期研修医が終了すると日本救急医学会救急科専門医(卒後5年)、指導医(卒後10年)取得を目標に研鑽することになります。その間、大学院に進学し基礎医学、臨床医学で研究活動にかかわることも奨励しています。大学院では主として当分野が持っている様々な実験系から、生体反応とその制御、管理、それにかかわる遺伝子の役割などのミクロ的視野から心肺脳蘇生、病院前救護やメディカルコントロールなど救急医療行政にかかわる社会医学までを研究できる体制が整備されています。
 また、新専門医制度に移行する救急科専門医の取得を基本に、個人のサブスペシャリティーに該当する外科、脳神経外科、集中治療、外傷、中毒、熱傷、脳卒中などの関連学会専門医取得の教育プログラムを有しています。

救急科専門医先行のプログラム 外科、脳外科、整形外科専門医先行プログラム

同時に文部科学省、厚生労働省などの競争的資金を獲得するような質の高い研究を行うことも推奨しています。そのために国内外での学会発表や留学も積極的に行っています。