研究活動

 2008年以来、当教室の研究テーマは「ショックに続発する臓器障害発生の機序解明」と設定し外科、脳外科、整形外科、集中治療、熱傷、中毒、災害医学等をサブスペシャリティーに持つグループが上記のテーマに関して①~④の研究班に分かれ、相互に連携を取りつつ研究を行っています。また、当分野と関連する11施設の救命救急センターと救急部では幅広い臨床、ならびに基礎と臨床研究を行い学会や論文発表しています。
 臨床研究では教室スタッフの各サブスペシャリティーを生かしacute care surgery,脳神経外科救急,骨盤・四肢外傷,集中治療、臨床中毒、災害医療などに分かれ,最新の治療法のすばやい導入,その有効性評価を研究計画に基づいて行っています。また,大学院生を中心として基礎研究では多臓器不全をはじめとする重症病態の発生機序を解明すべく動物や細胞,遺伝子レベルの基礎実験を続けています。そうした中、2016年度も大学院生3名、研究生1名が卒業し、学位を取得しております。

  • ①外傷外科班
     外傷症例検討を週1回施行し、体幹部外傷(胸・腹部骨外傷)、骨盤骨折を伴う出血性ショック等、多部位損傷重症症例の当院での治療方針の検討をしています。また、超緊急手術への対応として、初療室での緊急開腹術等のシミュレーションを行い、手技の向上や医療安全への対応を行っています。また、新しい分野であるacute care surgery (ACS)に接触的に関わり、学会発表や論文発表を行った。残念ながら救命し得なかった症例に関してはDeath conferenceを行い、課題や新たな対応法についての議論を共有していいます。従来からのJATEC, JPTECの開催や参加、協力、院内研修医師への外傷診療教育、指導を行い、競争的資金、例えば文部科学省科学研究費などの競争的資金を獲得し、ショックの病態に関する積極的な研究活動も行っています。
  • ②脳神経外科救急班
     重症脳血管障害、頭部外傷、および蘇生後脳症に関しての治療、頭蓋内循環代謝動態に関して臨床的、基礎的研究をしている。さらに、文部科学省や厚生労働省やその他の競争的資金を複数獲得し、重症頭部外傷や脳虚血、蘇生後脳症に対する動物を用いた方法から研究を推進し、その結果を英文誌に発表しています。特に、横堀将司講師が主任研究者を務める文部科学省科学研究費基盤研究費B「虚血再灌流病態を伴う外傷性脳内血腫に対する術前急速導入脳低温療法の有効性の検討」では国際的な多施設共同研究で重症頭部外傷の体温制御の有用性について研究を行っています。週一回の脳神経外科救急カンファレンスでは、救命し得なかった症例に関してもDeath conferenceを行い、課題や新たな対応法についての検討を議論しています。
  • ③災害医療班
     付属病院、武蔵小杉病院、多摩永山病院、千葉北総病院はそれぞれ災害拠点病院として位置づけられている。そのような中、付属病院では例年通り東京都、東京消防庁と計3回のDMAT訓練を行います。前述のように2015年4月ネパール国カトマンズ市での地震災害に日本政府の医療支援のチームの一員として付属病院高度救命救急センターから医師を派遣し、2015年9の台風による鬼怒川堤防決壊での洪水災害や2016年4月の熊本地震にはDMATなどの医療チームを派遣しました。
  • ④基礎研究班
     脳虚血モデルから活性酸素除去物質の効果やエンドトキシンが腸管平滑筋に及ぼす影響とその制御を動物実験から明らかにし、大学院生のテーマとして論文を作成しています。また、腸管虚血再灌流モデルで腸管リンパ液のmRNAの変化を分子解剖学分野の指導下行い、論文化をしています。