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病院情報の公表

令和6年度日本医科大学武蔵小杉病院 病院指標

年齢階級別退院患者数

年齢区分 0~ 10~ 20~ 30~ 40~ 50~ 60~ 70~ 80~ 90~
患者数 2012 325 492 873 873 1349 1418 1989 1484 344
令和6年度の全退院患者数は11,159人でした。
幅広い年齢層の患者さんが入院されてますが、最も多い年齢層は70~79歳で令和6年は1,989人でした。
少子高齢化の時代と言われており、60歳以上の患者さんの割合は、46.9%となっています。
NICU,GCUを有する当院は小児医療も充実しており、0~9歳の患者さんも18.0%を占めます。

診断群分類別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)

小児科

DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
080270xxxx1xxx 食物アレルギー 手術・処置等1 あり 223 1.46 2.10 0.00 4.11
0400801199x0xx 肺炎等(1歳以上15歳未満) 手術なし 手術・処置等2 なし 90 6.17 5.61 0.00 4.32
040100xxxxx00x 喘息 手術・処置等2 なし 定義副傷病 なし 80 7.39 6.38 0.00 2.35
180030xxxxxx0x その他の感染症(真菌を除く。) 定義副傷病 なし 71 6.03 8.02 0.00 1.85
150070x0xx01xx 川崎病(2歳以上) 手術・処置等1 なし 手術・処置等2 1あり 48 10.54 9.72 0.00 3.65

日本医科大学武蔵小杉病院周産期・小児医療センターは、新病院では小児病棟を30床、新生児集中治療室・回復室(NICU,GCU)を21床に増床し、これまで同様に産科、新生児科、小児科、小児外科、心臓血管外科が協力して安心、安全な医療を提供して参ります。
小児科は急な発熱、下痢、嘔吐、喘息発作、痙攣など急な疾患に対応する一般外来に加え、全ての臓器の診療を行うため専門の医師による特殊外来を設けて臓器別・疾患別に診療を行っております。
多く入院された疾患としては、気管支炎・肺炎(RSウイルス感染も含む)などの呼吸器感染、下痢・嘔吐・脱水などの胃腸炎、食物アレルギー負荷試験、気管支喘息などのアレルギー疾患、川崎病、先天性心疾患などの循環器疾患、尿路感染症、血尿・蛋白尿などの腎・泌尿器疾患、低身長、甲状腺機能亢進症、糖尿病などの内分泌疾患など多種多様な疾患の患者さんが入院されています。
救急医療に関しましては、中部小児急病センターを365日行い一次救急の患者様を受け入れております。
急に発症されお困りのお子さんはご利用ください。事前の予約は不要です。
また、救急車を中心とした二次救急患者は川崎市の二次輪番制度に沿って行っております。その他、保健所への医師の派遣、児童の結核検診・BCG接種後のコッホ現象対応、小児喘息事業への協力など地域保健事業に積極的に参画しております。
さらに、川崎市学校児童生徒の心臓病、腎疾患、糖尿病検診にも一次検診から三次検診まで協力し疾病の早期発見に努力しております。
このように、日本医科大学武蔵小杉病院は周産期・小児医療センターとして川崎市の小児医療において地域の中核病院としてその役割を果たしております。

整形外科

DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
160800xx02xxxx 股関節・大腿近位の骨折 人工骨頭挿入術 肩、股等 29 31.38 25.29 75.86 77.69
07040xxx01xxxx 股関節骨頭壊死、股関節症(変形性を含む。) 人工関節再置換術等 24 17.21 18.76 12.50 69.21
070230xx01xxxx 膝関節症(変形性を含む。) 人工関節再置換術等 21 21.52 21.38 9.52 76.62
160720xx01xxxx 肩関節周辺の骨折・脱臼 骨折観血的手術 肩甲骨、上腕、大腿等 18 14.17 14.04 16.67 69.72
160700xx01xx0x 鎖骨の骨折 骨折観血的手術 鎖骨、膝蓋骨、手(舟状骨を除く。)、足、指(手、足)その他 定義副傷病 なし 13 6.15 5.73 0.00 49.62

当科で治療する患者は、頻度の高い外傷(大腿骨近位部骨折、橈骨遠端骨折、脊椎圧迫骨折 等)の急性期が中心です。
手術適応のある患者に対しては、術後のリハビリの早期介入を行い、機能障害を最小にし、日常生活動作の低下を来さぬように努めています。

形成外科

DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
080220xx97xxxx エクリン汗腺の障害、アポクリン汗腺の障害 手術あり 118 3.91 6.41 0.00 30.56
070010xx970xxx 骨軟部の良性腫瘍(脊椎脊髄を除く。) 手術あり 手術・処置等1 なし 44 3.43 4.65 0.00 47.86
080180xx99xxxx 母斑、母斑症 手術なし 27 2.67 3.15 0.00 7.89
090010xx97x0xx 乳房の悪性腫瘍 その他の手術あり 手術・処置等2 なし 20 10.25 6.48 0.00 48.55
080007xx010xxx 皮膚の良性新生物 皮膚、皮下腫瘍摘出術(露出部)等 手術・処置等1 なし 20 3.75 3.77 0.00 43.45

形成外科では、元々の得意分野である「ケロイド・肥厚性瘢痕」「皮膚がん」「乳房再建」「皮膚・軟部腫瘍」「あざのレーザー治療」「先天性耳変形」「多合指症」「下腿潰瘍」に加えて、近年では「腋臭症」「顔面神経麻痺」「リンパ浮腫」の患者さんが増えてまいりました。
常勤総勢11名、非常勤3名の診療体制で、それぞれが特化した専門分野を持ち、広い疾患に対応しております。

脳神経外科

DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
100260xx9710xx 下垂体機能亢進症 手術あり 手術・処置等1 あり 手術・処置等2 なし 33 13.76 15.60 3.03 55.45
010080xx97x00x 脳脊髄の感染を伴う炎症 手術あり 手術・処置等2 なし 定義副傷病 なし 11 5.64 34.66 0.00 1.09
100250xx97xxxx 下垂体機能低下症 手術あり - - 16.53 - -
010030xx991xxx 未破裂脳動脈瘤 手術なし 手術・処置等1 あり - - 2.86 - -
010030xx02x0xx 未破裂脳動脈瘤 脳血管内手術 手術・処置等2 なし - - 8.63 - -

下垂体腫瘍、頭蓋底腫瘍に対する内視鏡下経鼻的手術
当科の特徴として、体に負担の少ない低侵襲手術を積極的に行なっております。その中でも下垂体腫瘍に対する内視鏡下経鼻的手術に特に力を入れております。部長の田原はこの領域のスペシャリストであり、個人としての手術数は約2000例と本邦最多の件数を誇ります。
また、下垂体腫瘍以外にも髄膜腫、頭蓋咽頭腫、脊索腫などの高難度頭蓋底腫瘍に対しても、内視鏡を用いた経鼻的手術を積極的に行っております。
さらに、術後薬物治療やホルモン補充療法が必要な患者さんについても、当科で検査を行い、継続的な治療を行なっています。

●脳動脈瘤(未破裂)
 未破裂脳動脈瘤は、近年脳ドックや頭痛などの症状で頭部MRI検査を受ける方が増えたことにより、みつかる場合が増えてきています。
 脳動脈瘤が破裂すると多くはくも膜下出血になるので、診断された方は、精神的なストレスとなることも多いと考えられます。
 日本脳卒中学会のガイドラインでは、一般に直径5mm以上の動脈瘤は破裂のリスクがあることより、手術の適応とされています。
 ただし、大部分を占める直径10mm未満の脳動脈瘤の破裂率は年間1%以下ですので、治療を急ぐ必要はありません。
 患者さんには十分にご理解を頂けるように数回に分けて説明しております。
 外科的治療には、従来から行われている開頭によるクリッピング手術と近年増加している血管内手術(コイリング)があります。
 当院では、脳卒中の外科学会専門医と血管内治療学会専門医が中心となり、脳神経外科全体で協議し、それぞれの患者の方の状態に合わせた、安全で確実性の高い方法で治療ができるよう診療を行っています。
 手術治療に際しては、各種神経モニタリング、術中蛍光動脈造影などを用いて、安全性の高い医療を心掛けています。

●慢性硬膜下血腫
 慢性硬膜下血腫は、高齢者に多い疾患です。転倒や軽微な頭部外傷後、1-3か月で脳の表面と頭蓋骨の隙間に血腫が貯まってきます。
 症状としては、運動麻痺やふらつき、歩行障害、頭痛、認知症などが見られやすいものです。
 この血腫は脳内には貯留しないので、適切な時期に治療を行えれば、後遺症なく治ることが期待できます。
 血腫が少ない時は、漢方薬を中心とした内服薬で治すことも可能ですが、症状が出るほどの大きさの血腫では外科治療が必要です。
 外科治療では、局所麻酔で約30分強の穿頭血腫洗浄術を行います。通常は、ご高齢の方でも安全に手術が受けられます。
 約10%に再発が起こりますが、再発を繰り返す場合には、神経内視 鏡手術や血管内手術の併用で対応します。                                                                                                                       

●水頭症
 水頭症は脳室に脳脊髄液が余分に溜まることにより、症状を呈する疾患です。
 認知症や歩行障害、尿失禁などが症状ですが、これらはシャント手術という脳脊髄液を抜く患者さんの負担が比較的軽い手技で治療が可能です。
 水頭症の診断には画像検査が大切ですが、こういった症状で内科などで治療されている患者さんの中に水頭症が隠れていることが少なからずあり、かかりつけの先生とご相談いただき、脳神経外科への受診をお勧めしたいと考えます。シャント手術の効果が期待できるかどうかの画像上の特徴やタップテストなどの結果で判断して、治せる認知症の治療に取り組んでいます。

●二分脊椎・脊髄脂肪腫
 当院は周産期・小児医療センターを有し、積極的な小児の外来・入院診療が行われています。
 我々も同様に、小児脳神経外科治療の専門医により、意欲的に小さなお子さんの治療を行なっております。
 その中でも、お尻のくぼみやあざなどから発見される潜在性二分脊椎の治療には特に力を入れており、この分野でも内視鏡を用い、わずか1cmの皮膚切開での低侵襲な手術を行なっています。

呼吸器外科

DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
040040xx02x0xx 肺の悪性腫瘍 肺悪性腫瘍手術 肺葉切除又は1肺葉を超えるもの等 手術・処置等2 なし 33 6.61 9.82 0.00 65.88
040200xx01x00x 気胸 肺切除術等 手術・処置等2 なし 定義副傷病 なし 19 8.37 9.59 0.00 23.68
040200xx99x00x 気胸 手術なし 手術・処置等2 なし 定義副傷病 なし 12 6.08 9.28 0.00 28.25
040020xx97xxxx 縦隔の良性腫瘍 手術あり - - 7.70 - -
040200xx01x01x 気胸 肺切除術等 手術・処置等2 なし 定義副傷病 あり - - 21.82 - -

当科では原発性肺癌、転移性肺腫瘍、縦隔腫瘍、自然気胸など、外科的治療の必要とする胸部・呼吸器系疾患を対象に診察・治療を行っております。
2024年の呼吸器外科手術実績は84件、その内訳は肺悪性腫瘍41件(原発性肺癌32件、転移性肺腫瘍9件)、気胸23件、縦隔・胸壁腫瘍8件、良性腫瘍4件、その他8件でした。全例重篤な合併症をきたした症例はなく、みな早期退院が可能でした。

【肺がん】
当科では肺がんを疑う症例に対し、原則3日間入院で気管支鏡検査を実施しています。高齢者や合併症のある患者にも安全を重視し、診断が困難な場合は放射線科と連携してCTガイド下肺生検を行います。
治療は化学療法が中心で、入院・外来治療を組み合わせ、患者の日常生活維持に努めています。

心臓血管外科

DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
050180xx02xxxx 静脈・リンパ管疾患 下肢静脈瘤手術等 11 2.82 2.66 0.00 62.55
050161xx9901xx 大動脈解離 手術なし 手術・処置等1 なし 手術・処置等2 1あり 10 18.20 19.87 0.00 74.30
050080xx0101xx 弁膜症(連合弁膜症を含む。) ロス手術(自己肺動脈弁組織による大動脈基部置換術)等 手術・処置等1 なし 手術・処置等2 1あり - - 20.84 - -
050163xx02x1xx 非破裂性大動脈瘤、腸骨動脈瘤 大動脈瘤切除術(吻合又は移植を含む。) 腹部大動脈(分枝血管の再建を伴うもの)等 手術・処置等2 1あり - - 18.74 - -
050080xx0111xx 弁膜症(連合弁膜症を含む。) ロス手術(自己肺動脈弁組織による大動脈基部置換術)等 手術・処置等1 1あり 手術・処置等2 1あり - - 31.90 - -

当院では主に成人心臓・大血管手術さらに末梢血管疾患に対する治療を行っています。
心臓手術では冠動脈バイパス術を中心とし、患者さんの御体に負担が少ない低侵襲治療を心がけています。
大動脈瘤手術は大動脈瘤の位置や形態だけでなく、患者さんの年齢や社会的背景を考慮した治療方法の選択を行い良好な成績が得られています。
下肢静脈瘤に対する治療としてレーザーを使用し、入院日数を要さず短期間での治療が可能となっています。
本治療の唯一の合併症とし神経障害がありますが、当院では術前後で神経機能をチェックするなど、神経障害を予防する取り組みを行っています。

小児外科

DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
060160x101xxxx 鼠径ヘルニア(15歳未満) ヘルニア手術 鼠径ヘルニア等 77 3.04 2.73 0.00 4.22
060170xx02xx0x 閉塞、壊疽のない腹腔のヘルニア ヘルニア手術 腹壁瘢痕ヘルニア等 定義副傷病 なし 60 3.00 6.85 0.00 2.68
140590xx97xxxx 停留精巣 手術あり 57 3.00 2.96 0.00 3.14
11022xxx01xxxx 男性生殖器疾患 精索捻転手術等 39 2.97 3.53 0.00 4.82
140245xx01xxxx 舌・口腔・咽頭の先天異常 舌繋瘢痕性短縮矯正術等 - - 3.02 - -

当科で最も症例数が多いのは、鼠径(そけい)ヘルニア(脱腸)の手術患者さんです。1年間で77人の患者さんが入院しています。
次いで腹腔のヘルニア60人、停留精巣が57人、男性生殖器疾患が39人となっています。
小児外科のよく見られる一般的な手術についてはほとんど2泊3日の入院でクリニカルパスを使用し、手術を行っています。

女性診療科・産科

DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
120140xxxxxxxx 流産 102 1.27 2.44 0.00 34.19
120220xx01xxxx 女性性器のポリープ 子宮鏡下有茎粘膜下筋腫切出術、子宮内膜ポリープ切除術 75 1.43 2.72 0.00 38.13
120070xx02xxxx 卵巣の良性腫瘍 卵巣部分切除術(腟式を含む。) 腹腔鏡によるもの等 63 6.35 5.97 0.00 36.25
12002xxx02xxxx 子宮頸・体部の悪性腫瘍 子宮頸部(腟部)切除術等 48 3.10 2.92 0.00 38.00
120170x199xxxx 早産、切迫早産(妊娠週数34週未満) 手術なし 40 21.30 19.47 5.00 33.63

当院ではNICUを拡張した事もあり、母体合併症を有する妊婦の搬送も可能な限り受け入れております。
双胎妊娠、高齢妊娠も多く、多数の早産、切迫早産、その他の異常妊娠の管理を行っております。
また、放射線科の協力もあり産科危機的出血等に対しても可能な限り対処しております。
婦人科領域では、種々の良性腫瘍・類腫瘍疾患を治療し、早期退院を目指しております。
また、子宮筋腫、子宮内膜症に対しての薬物療法、低侵襲手術療法に関しても豊富な経験を有しております。

眼科

DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
020110xx97xxx1 白内障、水晶体の疾患 手術あり 両眼 73 2.32 4.29 0.00 76.95
020110xx97xxx0 白内障、水晶体の疾患 手術あり 片眼 72 2.06 2.49 0.00 73.33
020160xx97xxx0 網膜剥離 手術あり 片眼 54 4.09 7.53 0.00 54.67
020200xx9710xx 黄斑、後極変性 手術あり 手術・処置等1 あり 手術・処置等2 なし 37 2.30 5.47 0.00 66.73
020180xx97x0x0 糖尿病性増殖性網膜症 手術あり 手術・処置等2 なし 片眼 12 6.92 5.89 0.00 56.50

当科入院では、内眼手術として白内障手術と硝子体手術、外眼手術として眼瞼下垂の手術をメインに施行しています。
これらの手術は実績も多く、多数の紹介患者様が来院されています。

耳鼻咽喉科

DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
030350xxxxxxxx 慢性副鼻腔炎 68 6.91 5.84 0.00 51.50
030230xxxxxxxx 扁桃、アデノイドの慢性疾患 36 8.47 7.35 0.00 18.72
030250xx991xxx 睡眠時無呼吸 手術なし 手術・処置等1 あり 16 2.00 2.02 0.00 59.94
030250xx970xxx 睡眠時無呼吸 手術あり 手術・処置等1 なし 15 9.87 8.01 0.00 12.53
030340xxxxxxxx 血管運動性鼻炎、アレルギー性鼻炎<鼻アレルギー> 13 6.15 5.12 0.00 36.23

今年度も例年通り、慢性副鼻腔炎に対する手術目的の入院患者が多かった。
その他当科では、地域柄、睡眠時無呼吸症候群の小児の手術目的の入院も多い。

慢性副鼻腔炎
 慢性副鼻腔炎は古くは蓄膿症と言われていた疾患です。
 最近では平成27年7月に難病に指定された成人型喘息に合併する難治性の副鼻腔炎である『好酸球性副鼻腔炎』が増加しております。
 当院では厚生労働省の研究班の報告に基づいた正確な診断と、患者さんの症状、生活背景も考慮した治療を心がけております。
 アレルギー性鼻炎(血管運動性鼻炎も含む)には、埃やダニによる通年性のものと、スギやヒノキなどの花粉による季節性のものがあります。
 また、季節の変わり目、ストレスなどによる自律神経の失調等が関連した類似鼻炎もあります。
 これらは風邪ではありません。
 副鼻腔炎との鑑別も重要で、当科では従来の薬物治療や手術に加えて、保険診療として新しい免疫療法(減感作療法)にも力を入れております。
どうぞご相談ください。

神経内科

DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
010060xx99x20x 脳梗塞 手術なし 手術・処置等2 2あり 定義副傷病 なし 25 19.88 16.94 36.00 77.56
010060xx99x40x 脳梗塞 手術なし 手術・処置等2 4あり 定義副傷病 なし 19 23.47 16.89 42.11 72.74
010230xx99x00x てんかん 手術なし 手術・処置等2 なし 定義副傷病 なし 11 7.18 6.89 0.00 51.45
010080xx99x0x1 脳脊髄の感染を伴う炎症 手術なし 手術・処置等2 なし 15歳以上 - - 15.94 - -
010110xxxxx40x 免疫介在性・炎症性ニューロパチー 手術・処置等2 4あり 定義副傷病 なし - - 15.45 - -
 本学脳神経内科は伝統的に脳血管障害の診療・研究で知られており、当院においても急性期治療はもとより、精査が必要な特殊な脳梗塞の評価・治療方針決定などに注力しています。
 近年治療が飛躍的に進歩している多発性硬化症、重症筋無力症などの神経免疫疾患では、最先端のすべての治療法を実施可能です。
 パーキンソン病などの神経難病においては、地元の訪問診療医と強い連携体制を構築し、緊急時の万全な受け入れ態勢ができるよう準備しています。
 また、川崎市の認知症疾患医療センターとして、どんな疾患で入院しても、認知症の患者さんが落ち着いた入院生活を送れるよう、認知症ケアチームが加入します。
 退院後もご本人とご家族を地域ぐるみで支援する体制を整えていきます。

皮膚科

DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
080010xxxx0xxx 膿皮症 手術・処置等1 なし 21 9.62 12.98 4.76 60.14
080020xxxxxxxx 帯状疱疹 - - 9.33 - -
080110xxxxx0xx 水疱症 手術・処置等2 なし - - 28.94 - -
080190xxxxxxxx 脱毛症 - - 3.29 - -
07010xxx99xxxx 化膿性関節炎(下肢) 手術なし - - 15.39 - -

皮膚科入院で多い疾患としては、膿皮症(蜂窩織炎、丹毒、糖尿病に伴う感染性膿皮症)、帯状疱疹、円形脱毛症や水疱症などの自己免疫性疾患である。
急性膿皮症については、原因菌の同定に努め、適切な抗菌薬を選択し、必要に応じてデブリードマン、外用治療を行っている。
帯状疱疹については、抗ウイルス薬の点滴、痛みのコントロールを主に行っている。
自己免疫疾患は診断から治療まで期間を要するが、良好な病状コントロールを実施している。

泌尿器科

DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
110080xx991xxx 前立腺の悪性腫瘍 手術なし 手術・処置等1 あり 167 3.35 2.45 0.00 71.99
110070xx03x0xx 膀胱腫瘍 膀胱悪性腫瘍手術 経尿道的手術 手術・処置等2 なし 53 9.26 6.81 0.00 74.51
110080xx01xxxx 前立腺の悪性腫瘍 前立腺悪性腫瘍手術等 47 12.70 11.11 0.00 71.45
110200xx02xxxx 前立腺肥大症等 経尿道的前立腺手術等 42 9.31 7.77 0.00 71.95
11012xxx02xx0x 上部尿路疾患 経尿道的尿路結石除去術 定義副傷病 なし 40 6.83 5.16 0.00 60.63

当科で開発した前立腺生検術(14か所18本生検)により前立腺特異抗原(PSA)4-10ng/mlにおける癌の検出率は60%を超えており、的確な診断ができております。
またエンドウロロジー(経尿道的手術・腹腔鏡下手術)の分野を得意にしております。

呼吸器内科

DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
040040xx9910xx 肺の悪性腫瘍 手術なし 手術・処置等1 あり 手術・処置等2 なし 63 3.37 3.03 1.59 68.22
040110xxxx00xx 間質性肺炎 手術・処置等1 なし 手術・処置等2 なし 43 22.60 18.68 4.65 79.16
0400802499x0xx 肺炎等(市中肺炎かつ75歳以上) 手術なし 手術・処置等2 なし 40 21.50 16.40 10.00 81.98
040110xxxx10xx 間質性肺炎 手術・処置等1 あり 手術・処置等2 なし 27 13.33 10.66 0.00 63.89
040081xx99x0xx 誤嚥性肺炎 手術なし 手術・処置等2 なし 23 42.70 20.78 43.48 87.30

呼吸器内科の対象疾患で最も多いのが肺がんです。
当科は肺癌を疑う症例に対して、診断目的に原則3日間の入院による気管支鏡検査を行っています。
様々な合併症を有する高齢者も多く、より安全な検査を心がけています。
気管支鏡による診断が困難な場合は、CTガイド下肺生検を放射線科の協力のもとに実施しています。
肺がんの治療は、化学療法が中心となり、入院での治療のみならず外来化学療法を組み合わせ、なるべく患者さんがこれまでと変わらない日常生活が送れるようにしています。
また、当院は間質性肺炎を多くご紹介いただいております。
気管支鏡検査を積極的に実施し、できるだけ正確な診断を行い、適切な治療に結びつけています。
肺炎・誤嚥性肺炎は高齢者が多いため、薬物療法のみでなく退院後の生活を考えた呼吸リハビリテーションを積極的に行っており、在院期間が全国平均に比べてやや長い要因のひとつと考えられます。

循環器内科

DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
050070xx03x0xx 頻脈性不整脈 経皮的カテーテル心筋焼灼術 手術・処置等2 なし 174 4.25 4.47 0.00 62.82
050050xx0200xx 狭心症、慢性虚血性心疾患 経皮的冠動脈形成術等 手術・処置等1 なし、1,2あり 手術・処置等2 なし 121 3.72 4.18 0.83 70.04
050050xx9910xx 狭心症、慢性虚血性心疾患 手術なし 手術・処置等1 1あり 手術・処置等2 なし 82 3.27 3.07 0.00 67.45
050050xx9920xx 狭心症、慢性虚血性心疾患 手術なし 手術・処置等1 2あり 手術・処置等2 なし 60 3.05 3.27 0.00 69.08
050210xx97000x 徐脈性不整脈 手術あり 手術・処置等1 なし、1,3あり 手術・処置等2 なし 定義副傷病 なし 44 12.23 9.59 2.27 82.05

当科では、不整脈に対するカテーテル治療を積極的に行っており、多くの手術件数をこなしております。
また当科は以前より狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患や、末梢動脈疾患に対するカテーテル治療に注力しており、慢性閉塞性病変や膝下の末梢動脈疾患など難治例の治療も行っています。

腎臓内科

DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
110280xx9900xx 慢性腎炎症候群・慢性間質性腎炎・慢性腎不全 手術なし 手術・処置等1 なし 手術・処置等2 なし 32 12.84 11.35 3.13 69.62
110280xx02x00x 慢性腎炎症候群・慢性間質性腎炎・慢性腎不全 動脈形成術、吻合術 その他の動脈等 手術・処置等2 なし 定義副傷病 なし 31 5.74 7.38 0.00 67.87
110280xx97x00x 慢性腎炎症候群・慢性間質性腎炎・慢性腎不全 その他の手術あり 手術・処置等2 なし 定義副傷病 なし 15 9.07 13.50 0.00 62.67
110280xx991xxx 慢性腎炎症候群・慢性間質性腎炎・慢性腎不全 手術なし 手術・処置等1 あり 14 4.00 6.01 0.00 45.36
0400802499x0xx 肺炎等(市中肺炎かつ75歳以上) 手術なし 手術・処置等2 なし 13 14.23 16.40 7.69 85.00

当科ではネフローゼ症候群、急性腎不全、慢性腎不全およびその原因となる膠原病など幅広く診療を行っております。
慢性腎臓病の早期発見・治療を目的に、地域クリニックからの紹介患者を積極的に受け入れ、腎疾患の進行予防に尽力しています。
なかでもネフローゼ症候群の診療経験が多く、腎生検による確定診断から治療まで一貫して行っております。
治療については、一般的なステロイド療法の他に、各種免疫抑制薬や生物学的製剤による治療、アフェレーシス療法を行っています。
また、IgA腎症に対する扁桃腺摘出術とステロイドパルス療法も積極的に行っております。
その他には急性腎不全、慢性腎不全の診療も多く行っており、なかでも血液浄化療法(血液透析、腹膜透析など)の治療の診療経験が豊富です。
末期腎不全患者には、療法選択外来を設け、安心して腎代替療法を選択できる体制を整えています。
さらに当科では、血液透析・腹膜透析に必要な手術や透析後のブラッドアクセストラブルへの対応も含め、導入期から導入後まで一貫して管理しており、若手医師の経験の場としても適しており、看護師・栄養士・薬剤師と連携し、包括的な腎臓病管理を推進しています。

救命救急センター

DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
161070xxxxx00x 薬物中毒(その他の中毒) 手術・処置等2 なし 定義副傷病 なし 71 2.31 3.58 14.08 33.21
050210xx9902xx 徐脈性不整脈 手術なし 手術・処置等1 なし 手術・処置等2 2あり 18 7.72 14.10 11.11 72.56
010040x101x1xx 非外傷性頭蓋内血腫(非外傷性硬膜下血腫以外)(JCS10以上) 脳血管内手術+脳動静脈奇形摘出術等 手術・処置等2 あり 12 46.00 39.52 83.33 72.25
160100xx99x00x 頭蓋・頭蓋内損傷 手術なし 手術・処置等2 なし 定義副傷病 なし 11 7.55 7.99 27.27 47.91
180010x0xxx4xx 敗血症(1歳以上) 手術・処置等2 4あり - - 37.05 - -

●薬物中毒患者の多くは重度の意識障害をともなっており、呼吸循環を集中治療室で慎重に観察し、不測の事態が生ずれば迅速な処置を行う必要がある。
 中毒原因物質によっては、解毒剤や拮抗薬の投与、血液浄化療法を要する場合が少なからずあり、当施設では特殊な治療薬を準備している。
 自殺企図者については、意識回復後に精神科診療を必ず行っている。

●高齢者社会の到来により誤嚥性肺炎による呼吸障害患者が増加している。
 多くの場合は可逆的な呼吸障害なので、抗菌薬投与とともに補助呼吸療法を行い症状の改善を図っている。
 対象は高齢者が多いことから治療方針については、本人ならびにご家族と慎重に協議しながら治療を進めていく。

●外傷症例の多くは事故現場で受傷部位・程度を判断することは難しく、一定の基準を満たした外傷例は重症と考えて当施設に搬入されて来る。
 迅速な全身精査の上、緊急手術を含めた必要な処置が行われる。

●病院外心肺停止を含めた不整脈に対して、人工心肺、脳低温療法を含めた積極的な心肺脳蘇生を行っている。
 循環器内科と救命救急科が連携し、迅速な心臓ペーシングや冠動脈血管内治療が行われている。

消化器内科

DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
060100xx01xxxx 小腸大腸の良性疾患(良性腫瘍を含む。) 内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術 491 2.41 2.57 0.00 65.68
060360xx99x0xx 慢性膵炎(膵嚢胞を含む。)、自己免疫性膵炎、膵石症 手術なし 手術・処置等2 なし 132 2.34 7.01 0.76 62.81
060340xx03x00x 胆管(肝内外)結石、胆管炎 限局性腹腔膿瘍手術等 手術・処置等2 なし 定義副傷病 なし 115 9.05 8.88 0.00 70.50
06007xxx9900xx 膵臓、脾臓の腫瘍 手術なし 手術・処置等1 なし 手術・処置等2 なし 99 2.71 11.01 0.00 66.93
060020xx04xxxx 胃の悪性腫瘍 内視鏡的胃、十二指腸ポリープ・粘膜切除術 70 8.43 7.45 2.86 72.16

●内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術
 原則的には当科では1泊2日入院で大腸ポリープ切除を実施しております。
 内視鏡で観察しポリープの大きさや形により適切に内視鏡的に切除を行います。
 出血などの合併症がないかどうか慎重に評価を行います。

●早期悪性腫瘍大腸粘膜下層剥離術(大腸ESD)
 切除対象となる病変は、大腸ポリープのうち腺腫または粘膜内がんおよび粘膜下層浅層浸潤がんを内視鏡治療の適応としています。
 病変の大きさについての適応は一般に5mm以上の病変が切除対象となりますが、当院で使用しているスネアで一括切除できる病変の大きさは20-25mm前後としています。
 既往症がない患者に対しては、一泊二日の入院で安全に内視鏡的加療を行い帰宅可能としています。一方で、それ以上の大きさの病変に対しては複数回のスネアリングによる分割切除となります。
 分割切除は一括切除と比較し、遺残再発率が高いため腫瘍径20mmを指標とし、当院では病変の局在、形態、患者の既往症を考慮し内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)による一括切除を治療法として選択しております。

●内視鏡的胃ポリープ・粘膜切除術(EMR)・早期悪性腫瘍粘膜下層(胃ESD)
 ESDは早期胃癌に対する内視鏡治療法として1990年代半ばから本邦で用いられるようになった治療法です。
 手技の手法としては、高周波ナイフを用いて病変周囲の粘膜を切開し、さらに粘膜下層を剥離して切除する方法です。
 従来のEMR法と比較すると、大きな病変や潰瘍瘢痕を有する病変に対しても一括切除が可能となります。
 最近では内視鏡治療の適応が、より腫瘍径の大きい病変にも適応が拡大されています。
 当院ではESDを正確かつ安全に施行するために、経験豊富な専門医による外来検査・診察と入院検査を用いて正確な術前診断を行い、複数のスタッフによる術前カンファレンスを行い、万全をきたすように努めています。

●内視鏡的止血術
 胃十二指腸潰瘍、憩室出血、静脈瘤破裂などの消化管出血については随時緊急内視鏡を行っております。
 その際には豊富な経験を持つ内視鏡専門医を含む複数のスタッフで実施し、出血源の同定や止血を行っております。
 止血後も慎重に経過を観察し、随時内視鏡でのフォローを行います。

●胆管炎/胆管ステント留置術/経鼻胆管ドレナージ術
 急性胆管炎は致死的な疾患であり、初期治療における内視鏡的胆管ドレナージ(胆管内の膿を胆管外に逃がす治療)が重要であるとされています。
 急性胆管炎、胆道閉塞疾患に対して随時緊急ERCPを施行し、胆道ステント留置術や、経鼻胆管ドレナージ術を行っております。

●内視鏡的経鼻胆管ドレナージ(ENBD)
 急性胆管炎や閉塞性黄疸に対して行われます。内視鏡下にて胆管への選択的カニュレーション後、ガイドワイヤーテクニックを用いて胆管内に5-7Frのチューブを留置し、経鼻的外瘻ドレナージを完成させる方法です。
 これにより急性胆管炎や閉塞性黄疸が改善できます。

●急性膵炎
 急性膵炎の成因の多くはアルコールと胆石です。
 アルコール膵炎の場合は通常の急性膵炎の治療のみで良いですが、胆石性膵炎の場合は胆管炎を併発することがあり、その場合胆管ドレナージを必要とします。
 当科では胆石性膵炎に対応することができ、また急性膵炎が重症である場合、救命救急センターと協力して集中治療にあたります。

●超音波内視鏡検査(EUS)
 内視鏡の先端に超音波(エコー)装置が付属した内視鏡検査です。
 一般的によく用いられている体表(腹壁)からのエコー検査は、胃内や腸管内の内容物、皮下脂肪、内臓脂肪により画像描出が困難になることがありますが、EUSは観察したい臓器を胃や十二指腸から直接エコーをあてることができるため、より詳細な観察が可能です。
 食道、胃、十二指腸、大腸、胆嚢、膵臓で用いられ、各臓器の内部や境界、周囲の臓器、血流やリンパ節の情報を得ることができます。
 消化管の早期癌や粘膜下腫瘍における浸潤度や深達度診断(病変の局在や粘膜からの深さ)に用いられる検査です。
 膵臓や胆道疾患の診断では、早期慢性膵炎、慢性膵炎、膵嚢胞性疾患、膵臓癌、胆嚢ポリープや胆石などを胃や十二指腸からエコーをあてることで、観察・評価することができます。

●超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)
 EUSで確認できる腫瘤性病変に針を刺して、細胞や組織を採取する検査法です。
 エコーで病変を確認しながら穿刺し、吸引することで内部の組織の情報を病理検体として評価できます。
 一定の大きさがあれば病理診断を行うことができ、確定診断に至ることができます。特に膵臓癌や粘膜下腫瘍、リンパ節に対する穿刺を行います。
 侵襲的な検査ではありますが、検査自体は静脈麻酔下で行いますので、被験者の体に負担の少ない検査です。

●機能性消化管障害(逆流性食道炎、機能性ディスペプシア、慢性便秘、過敏性腸症候群)
 器質的な病変が認められないにもかかわらず慢性的な消化器症状を呈する疾患群のことをいいます。
 日本では、少なくとも人口の約1-2割が胃・十二指腸由来の慢性症状を有しており、その多くは、器質的疾患を認めない機能性疾患であると報告されています。

●過敏性腸症候群
 腹痛を伴う下痢や便秘などの排便障害を自覚する疾患です。
 ともに、消化管精査(内視鏡検査、CT検査など)で器質的な病変(癌、胃炎、大腸炎など)が無いことが前提になります。
 また、機能性消化管障害はoverlapすることが多い(様々な症状が出現する)と言われております。
 例えば、胃痛やもたれの症状を自覚しながら、下痢や便秘の症状をも認めることがあります。機能性消化管障害は生命への影響がないため、医療機関でも軽視される方向にあります。
 しかし、患者様にとっては日常生活に直接支障が出るため、生活の質が著しく低下します。
 労働生産性の低下を引き起こすなど、社会的にも大きな損失を招くという報告もあります。
 特に当院では消化管機能検査、膵酵素異常に対する超音波内視鏡検査、十二指腸の炎症評価、質問票を用いた心理的背景の評価を行うことで、患者様個々に対して生活指導、栄養指導、薬物治療を行っております。

消化器外科

DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
060335xx0200xx 胆嚢炎等 腹腔鏡下胆嚢摘出術等 手術・処置等1 なし 手術・処置等2 なし 114 6.76 7.05 0.88 59.92
060160x001xxxx 鼠径ヘルニア(15歳以上) ヘルニア手術 鼠径ヘルニア等 104 5.26 4.54 0.00 69.56
060035xx0100xx 結腸(虫垂を含む。)の悪性腫瘍 結腸切除術 全切除、亜全切除又は悪性腫瘍手術等 手術・処置等1 なし 手術・処置等2 なし 74 14.34 14.81 1.35 66.66
060150xx03xxxx 虫垂炎 虫垂切除術 虫垂周囲膿瘍を伴わないもの等 55 5.47 5.32 0.00 41.00
060020xx02xxxx 胃の悪性腫瘍 胃切除術 悪性腫瘍手術等 31 16.48 18.48 3.23 71.16

胆石症に対する腹腔鏡手術は、胆嚢に炎症が無い、または軽度の場合には外来で術前検査を行いあらためて待機手術を行いますが、なかには急性胆嚢炎と呼ばれる緊急処置を必要とする状態で来院される患者さんも少なくなく、この場合には診療ガイドラインに従って発症後72時間以内に速やかに手術を行います。
鼠径ヘルニア、いわゆる「脱腸」に対する手術は、当科では基本的にすべての鼠径部ヘルニア手術を腹腔鏡手術で行っています。
腹腔鏡手術は疼痛の少なさや手術創の整容性に優れているのみならず、複数のヘルニア(対側のヘルニアや大腿ヘルニアの合併など)が併存する場合にも見落とすことなく同時に治療が完了するというメリットがあります。
術後の再発率は1%以下でこの点でも従来法より優れています。
平均在院日数は3日間で以前より著しく短縮し、早期の社会復帰が可能となりました。
虫垂炎(俗にいう盲腸炎)に対する手術は、従来は右下腹部を4–6cm切開して小開腹で手術(虫垂切除術)を行っていましたが、ときに炎症が強かったり、肥満例では視野が悪く手術が困難で手術創感染などの合併症をきたすこともありました。
当科ではこの虫垂炎に対してもすべて腹腔鏡を用いて、良好な視野で、小さな手術創で治療を行なっています。
大腸ポリープに対する内視鏡治療は、当科では年間2500例の大腸内視鏡検査を行っており、大腸ポリープも多く見つかります。
大腸ポリープのなかには早期癌も含まれており、拡大内視鏡やNBI(Narrow Band Imaging : 狭帯域光法)と呼ばれる最新技術で正確な診断を行い、最適な治療を提供するよう努めています。

内分泌・糖尿病・動脈硬化内科

DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
10007xxxxxx1xx 2型糖尿病(糖尿病性ケトアシドーシスを除く。) 手術・処置等2 1あり 78 11.92 13.77 1.28 64.22
100040xxxxx00x 糖尿病性ケトアシドーシス、非ケトン昏睡 手術・処置等2 なし 定義副傷病 なし 18 11.67 13.07 5.56 50.11
100180xx99000x 副腎皮質機能亢進症、非機能性副腎皮質腫瘍 手術なし 手術・処置等1 なし 手術・処置等2 なし 定義副傷病 なし 12 3.42 5.35 0.00 52.42
100202xxxxxx0x その他の副腎皮質機能低下症 定義副傷病 なし 10 6.40 8.86 0.00 61.80
030400xx99xxxx 前庭機能障害 手術なし 10 3.40 4.67 0.00 72.10

内分泌・糖尿病・動脈硬化内科では、2型糖尿病をはじめとする生活習慣病や1型糖尿病の血糖コントロール、合併症の精査加療をおこなっております。
患者さんの個々の生活に考慮した療養指導を医師のみではなく、看護師、栄養士、薬剤師、ソーシャルワーカーといった多職種のメディカルスタッフが連携をとりながらおこなっております。
インスリン導入も、入院だけではなく外来にて数多くおこなっております。
また、周産期の血糖管理も女性診療科とともにおこなっております。
内分泌専門外来が少ない中、下垂体、甲状腺、副腎疾患などの内分泌疾患に対し、負荷試験などの内分泌学的検査や治療をおこなっております。
外科的治療を行う場合には、脳神経外科、消化器外科、泌尿器科と連携し、合同で治療にあたります。

乳腺外科

DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
090010xx010xxx 乳房の悪性腫瘍 乳腺悪性腫瘍手術 乳房部分切除術(腋窩部郭清を伴うもの(内視鏡下によるものを含む。))等 手術・処置等1 なし 158 5.20 9.77 0.00 57.06
090010xx02xxxx 乳房の悪性腫瘍 乳腺悪性腫瘍手術 乳房部分切除術(腋窩部郭清を伴わないもの) 56 3.70 5.50 0.00 54.21
090020xx97xxxx 乳房の良性腫瘍 手術あり - - 3.94 - -
090010xx97x0xx 乳房の悪性腫瘍 その他の手術あり 手術・処置等2 なし - - 6.48 - -
070041xx97x0xx 軟部の悪性腫瘍(脊髄を除く。) その他の手術あり 手術・処置等2 なし - - 9.61 - -

乳癌の術後再発は術後1~2年に再発のピークがあり、その後に減少していきます。
10年経過するまでを経過観察の対象としていますが、主に近隣の乳腺専門機関で定期的に検査を行っています。
再発は局所再発と遠隔再発に分けられます。
局所再発であれば再手術なども考慮されますが、遠隔再発(転移)では薬物療法が主体となります。
抗がん剤以外にも有望な分子標的薬剤が続々と登場して来ていますし、乳癌の多くはホルモン感受性であることからホルモン療法で再発治療する場合もあります。
治療にあたっては腫瘍内科、放射線治療科と連携し、専門看護師とともにチーム医療を行っています。
近年の薬物療法の進歩で術後の再発も少なくなり、また、再発後の治療成績も向上しています。

新生児内科

DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
140010x199x0xx 妊娠期間短縮、低出産体重に関連する障害(2500g以上) 手術なし 手術・処置等2 なし 265 3.95 6.11 0.00 0.00
140010x299x0xx 妊娠期間短縮、低出産体重に関連する障害(1500g以上2500g未満) 手術なし 手術・処置等2 なし 98 9.17 11.83 2.04 0.00
140010x199x1xx 妊娠期間短縮、低出産体重に関連する障害(2500g以上) 手術なし 手術・処置等2 1あり - - 10.60 - -
140010x199x3xx 妊娠期間短縮、低出産体重に関連する障害(2500g以上) 手術なし 手術・処置等2 3あり - - 16.59 - -
140010x299x3xx 妊娠期間短縮、低出産体重に関連する障害(1500g以上2500g未満) 手術なし 手術・処置等2 3あり - - 32.09 - -

地域周産期センターの指定を受けている新生児科では、主として当院の産科部門に母体搬送されたハイリスク妊婦から出生した早産・低出生体重児の診療を中心としていますが、院外で出生したのち救急搬送によって収容された病的新生児に対しても、呼吸管理をはじめとした高度な集中治療を行っています。

リウマチ科

DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
070560xxxxx00x 重篤な臓器病変を伴う全身性自己免疫疾患 手術・処置等2 なし 定義副傷病 なし 24 20.29 14.93 8.33 57.00
0400802499x0xx 肺炎等(市中肺炎かつ75歳以上) 手術なし 手術・処置等2 なし - - 16.40 - -
0400802299x001 肺炎等(市中肺炎かつ15歳以上65歳未満) 手術なし 手術・処置等2 なし 定義副傷病 なし A-DROP スコア1 - - 9.71 - -
060380xxxxx0xx ウイルス性腸炎 手術・処置等2 なし - - 5.55 - -
180010x0xxx0xx 敗血症(1歳以上) 手術・処置等2 なし - - 20.06 - -

リウマチ膠原病内科:常勤医3名となり、今年度は常時3-8名程度の入院患者の診療にあたっています。
疾患は関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、強皮症、皮膚筋炎、血管炎症候群、ベーチェット病など種々です。
いずれも慢性的な疾患であり、発症時の診断、治療治療方針の決定、経過中に急性増悪に対応するために、入院が必要になることがあります。
専門的な視点から適切な治療を選択し、急性期の状態の改善をはかるだけでなく、長期間の状態の安定を見据え、その後の外来での継続治療指針も決定します。
また、グルココルチコイドや免疫抑制薬使用下での感染症をはじめとした合併症にも、基礎疾患に対する治療との両立を考慮していきます。
膠原病およびリウマチ性疾患は多くの臓器に病変が出現し、その症状も多様ですので、整形外科、皮膚科、呼吸器内科をはじめとした診療科と連携して、より高度な医療を提供致します。

総合診療科

DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
0400802499x0xx 肺炎等(市中肺炎かつ75歳以上) 手術なし 手術・処置等2 なし 25 16.96 16.40 20.00 85.84
040081xx99x0xx 誤嚥性肺炎 手術なし 手術・処置等2 なし 13 22.77 20.78 23.08 74.69
180010x0xxx0xx 敗血症(1歳以上) 手術・処置等2 なし - - 20.06 - -
080010xxxx0xxx 膿皮症 手術・処置等1 なし - - 12.98 - -
060380xxxxx0xx ウイルス性腸炎 手術・処置等2 なし - - 5.55 - -

当科は2018年度から開始された新専門医制度で内科や外科などと並ぶ基本診療料に位置付けられた新しい専門診療科です。
超高齢社会を迎えた我が国では、細分化された医療では、解決困難な課題が多く、特に地域の患者様や医療機関のニーズに柔軟に応えることが役割の一つです。

当科の特徴は以下の通りです。

1.徒歩で受診できる1次救急の患者様から、救急車で来院される2次救急の方まで、幅広い内科系救急疾患を担当します。
2.包括的なアプローチから病状を捉え、各専門診療科と緊密な連携を図ることで、最新かつ最良の医療を提供します。
3.生産年齢人口が高い川崎市の中核病院として、予防や早期治療介入も重視し、健診で指摘された異常に対しては迅速な診断・治療を行います。
多職種で生活支援を行い、地域の先生方と連携してまいります。

4.多職種と円滑なコミュニケーションを行い、安心・安全なチーム医療を推進してまいります。
5.多様な背景をもった医療チームです。ベテランから若手まで、そして女性医師も多数診療に参加し患者様のお話を共感を持って伺い、診療を行ってまいります。

今後も、国際化やIT化の対応を進め、診療の幅と厚みを広げていく所存です。院内外の様々な診療現場と連携しながら、地域に開かれた川崎市南部医療圏の拠点の一つとして機能できるよう努力して参ります。どうぞ、身近な「医療」の窓口として、安心してご利用下さい。

初発の5大癌のUICC病期分類別並びに再発患者数

初発 再発 病期分類
基準(※)
版数
Stage I Stage II Stage III Stage IV 不明
胃癌 85 - 25 23 - - 1 8
大腸癌 59 50 68 36 20 15 1 8
乳癌 101 99 20 - - 18 1 8
肺癌 41 - 24 38 28 51 1 8,6
肝癌 - 15 10 - - 31 1 8

※ 1:UICC TNM分類,2:癌取扱い規約

【消化器外科】
消化器外科では5大癌のうち胃癌、大腸癌、肝癌の診断・治療を行なっています。
胃癌は近年検診の普及やヘリコバクター・ピロリ菌の除菌などにより減少傾向ですが、当科は消化器内科とともに内視鏡センターを併設しており、年間3500例以上の胃内視鏡検査を行っていることから比較的早期の癌を発見し治療に結びつけています。
Stage Iとは癌の深達度(胃の壁を貫く深さ)が粘膜内にとどまり、かつリンパ節転移があっても2個以下、あるいは筋層までにとどまりリンパ節転移のないものをさしますが、これらに対しては内視鏡治療や腹腔鏡手術などの患者さんにとって侵製の少ない治療が行われます。
さらに病気が進行したStage IIやIllの患者さんには手術に加えて、術前・術後に化学療法(抗癌剤治療)を組み合わせることによって治療成績の向上につながっています。遠隔転移を有するStage IVや再発症例は根治することが困難ですが、QOLを重視した化学療法や緩和治療をそれぞれの患者さんに合わせて個別治療を提供しています。大腸癌はわが国では食事の欧米化に伴って増加している疾患です。現在女性の癌死亡率の第一位になっています。
大腸癌は早期の癌はほとんどが無症状であり、胃癌ほど検診が普及していないこともあり、進行した状態で来院される患者さんも多いのが現状です。
表のStage Iとは癌の深達度(腸の壁を貫く深さ)が粘膜内または筋層までにとどまりリンパ節転移のないものをさしますが、このうちさらに粘膜の浅い部分に限局しているものに対しては内視鏡治療が行われます。
その他のStage I、Stage II、Stage Illに対しては当施設ではほとんどの手術を腹腔鏡による低侵襲治療を行っています。
胃癌と同様一部のStage II、Stage Illに対しては術後に化学療法を併用して再発リスクを軽減するよう努めています。
また近年Stage IVや再発大腸癌に対する化学療法が著しく進歩し、生存期間が20年前に比べると3-5倍に延長しています。なかには完治する症例も報告されるようになりました。一般に抗癌剤と言うと、長期入院で嘔吐・脱毛・下痢などの副作用に悩まされるイメージがありますが、大腸癌では基本的に外来通院で行います。化学療法室という専門スタッフが配置された治療センターでリクライニングチェアーに座ってリラックスした状態で行います。
これに並行して病気の進行による症状に対しては緩和ケアチームがサポートにあたります。肝癌は大きく分けて原発性肝癌と転移性肝癌(他臓器癌が肝臓に転移した)に分かれます。原発性肝癌も肝細胞癌、胆管細胞癌、嚢胞腺癌など種類が多様です。
最も多い肝細胞癌は腫瘍の個数や大きさなどからstageが決定されます。
治療法も多岐に渡り、手術療法、血管内カテーテル療法(TACE)、局所療法(アルコールラジオ波、放射線)、全身化学療法が代表的です。
治療法の決定はstageと肝臓の状態(肝予備能、ウイルス性肝炎、肝硬変、肝不全など)を考虚して総合的に判断します。
当科の特徴は、内科専門医チームと外科専門医チームが診断から治療、治療後の全ての段階において綿密な連携の元、対応に当たっている事です。
例えば、C型肝炎を合併した肝細胞癌術後の再発リスクは肝機能の維持と大きな関連があり、内科専門医による術後の肝炎治療がなくては良好な予後が期待できません。手術療法では、腹腔鏡手術も安全を考慮して取り入れております。肝細胞癌の治療成績の向上はこれら集学的治療が滞りなく行える環境が整ってはじめて可能となります。胆管細胞癌や嚢胞腺癌においても術前診断から、術前処置、手術療法、全身化学療法と内科、外科が一体となって対応しています。
胆管細胞癌は胆管が詰まる事が原因で起こる閉塞性黄疸も少なくなく、治療前に内視鏡的ドレナージ(排液)、経皮的ドレナージを合同で行っています。
Stage ⅣAまでは手術療法を中心に考えます。手術療法では、拡大肝切除を必要とすることも多く、術前に切除する肝臓の血管を遮断(塞栓)し、残肝を大きくして安全に手術を行う門脈塞栓術や、門脈、肝動脈合併切除·再建術なども積極的に行っています。

【呼吸器外科】
当科では原発性肺癌、転移性肺腫瘍、縦隔腫瘍、自然気胸など、外科的治療の必要とする胸部・呼吸器系疾患を対象に診察・治療を行っております。
2024年の呼吸器外科手術実績は84件、その内訳は肺悪性腫瘍41件(原発性肺癌32件、転移性肺腫瘍9件)、気胸23件、縦隔・胸壁腫瘍8件、良性腫瘍4件、その他8件でした。
方針として肺癌を含めたほぼ全例に胸腔鏡を併用した低侵襲手術を施行しており、治療成績の向上と生活の質(Quality of Life)重視の両立を図っています。
特に肺癌症例においては、外科、内科、放射線科、病理部の連携が重要であり、当院では定期的に肺癌症例検討会を行うことにより、迅速かつ適切な診断・治療方針を決定、遂行しております。
また、近年肺癌症例の高齢化に伴い肺気腫・閉塞性肺疾患(COPD)や間質性肺炎(IP)などの呼吸器疾患を合併する手術症例が増加しております。
このようなHigh Risk症例において、呼吸器内科及び麻酔科と連携し、術前、術中・術後を通してのきめ細かな管理と、胸腔鏡手術(VATS)による低侵襲治療を徹底し、合併症リスクの低減に努めています。
この結果、2023年当科における肺癌手術症例の術後平均在院日数は3.5日であり、術前も含めて1週間以内の入院治療が可能です(糖尿病や抗凝固療法中など術前コントロールの必要な症例は除きます)。
10~20代の若年者層が大半を占める自然気胸の手術治療(胸腔鏡下肺部分切除術)においては、術後平均在院日数は2.5日であり、退院後早期の仕事・学業への復帰を可能としています。
また、入院治療においては肺癌、縦隔腫瘍、転移性肺腫瘍、気胸などに対応した疾患別クリニカルパスを導入しており、看護師、薬剤師などのスタッフと連携した治療を心掛け、納得のいく医療、最善の医療を提供できるようスタッフ一同努めております。
【乳腺外科】
乳癌の術後再発は術後1~2年に再発のピークがあり、その後に減少していきます。
10年経過するまでを経過観察の対象としていますが、主に近隣の乳腺専門機関で定期的に検査を行っています。
再発は局所再発と遠隔再発に分けられます。
局所再発であれば再手術なども考慮されますが、遠隔再発(転移)では薬物療法が主体となります。
抗がん剤以外にも有望な分子標的薬剤が続々と登場して来ていますし、乳癌の多くはホルモン感受性であることからホルモン療法で再発治療する場合もあります。
治療にあたっては腫瘍内科、放射線治療科と連携し、専門看護師とともにチーム医療を行っています。近年の薬物療法の進歩で術後の再発も少なくなり、また再発後の治療成績も向上しています。

成人市中肺炎の重症度別患者数等

患者数 平均
在院日数
平均年齢
軽症 17 12.24 52.35
中等症 124 16.30 66.91
重症 40 19.23 80.08
超重症 14 29.14 83.29
不明 - - -

わが国の人口動態統計(2023年)では肺炎は死因の第5位(4.8%)であり、その多くを高齢者が占めています。
当院の肺炎症例のうち、軽症は比較的低年齢ですが、中等症以上は重症度が高くなるにつれて高年齢となっていることがわかります。
治療はガイドラインに沿った抗菌薬による薬物療法と、重症例では抗菌薬に加え、呼吸不全があれば酸素療法のほか、多様な医療機器(ネーザルハイフロー、NPPVなど)を用い、それぞれの患者さんに対応した呼吸管理を行っています。

脳梗塞の患者数等

発症日から 患者数 平均在院日数 平均年齢 転院率
3日以内 95 24.39 75.71 42.99
その他 12 17.25 77.25 1.87

【脳神経外科】
脳梗塞にはラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞、心原性脳梗塞の3つの病型があり、それぞれに原因が異なります。
CT(三次元CT、灌流画像を含む)、MRI(MRAを含む)、核医学検査、および脳血管撮影などの検査を行い適切に治療しています。
特に、アテローム血栓性脳梗塞や心原性脳梗塞には内科的治療だけでなく、外科的治療も必要に応じて行うことができます。
それぞれ脳卒中の外科学会専門医、血管内治療専門医が中心となり、患者さんの状態に最適な治療法を選択しています。
また、当院では急性期脳梗塞に対する血栓回収療法についても、当施設の血管内治療専門医が診療にあたります。

【脳神経内科】
当院は、脳梗塞急性期症例は脳神経内科、脳神経外科、救命救急科の3科で協力して24時間体制で診療に当たっています。
救急搬送される重症の脳梗塞だけでなく、病診連携で紹介されてくる軽症脳梗塞や一過性脳虚血発作症例についても最新の機器を駆使してきちんと診断、加療できるようにしています。脳梗塞の治療は発症直後の治療に関心が行きがちですが、その後継続的に行う再発予防治療も極めて重要です。
内科的な観点から各症例の基礎疾患や病態に合わせて最適な薬剤を選択するだけでなく、生活指導などの患者さん本人、ご家族への教育にも力を入れています。
病状が落ち着いた後は、かかりつけ医や地域の介護スタッフと連携してサポートするようにしています。
片麻痺、言語障害などの後遺症に対するリハビリテーションは、薬物と並ぶ重要な治療です。当院では豊富な院内リハビリテーションスタッフを持ち、発症直後から濃密なリハビリテーションを開始、その後は患者支援室を介した回復期リハビリテーション病院への隙間のない受け渡しも可能になっています。

診療科別主要手術別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)

整形外科

Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K0821 人工関節置換術(膝) 等 48 1.90 16.46 10.42 72.19
K0461 骨折観血的手術(大腿) 等 37 6.24 14.70 45.95 72.41
K0483 骨内異物(挿入物を含む)除去術(下腿) 等 24 1.00 1.29 0.00 47.63
K0462 骨折観血的手術(前腕) 等 23 1.78 6.35 0.00 51.09
K0463 骨折観血的手術(鎖骨) 等 16 2.31 4.94 6.25 51.25

当科では、表記のような四肢外傷の急性期に対する手術が中心です。
特に大腿骨近位部骨折、橈骨遠位端骨折が多く、高齢者の骨粗鬆症に関連した骨折の治療と、術後の骨粗鬆症に対する薬物療法まで含めた総合的診療を行います。
一方、変形性関節症等の慢性疾患に対しても、人工関節置換術を中心にした手術治療を行っています。

形成外科

Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K0081 腋臭症手術(皮弁法) 等 117 0.32 2.59 0.00 30.43
K0063 皮膚、皮下腫瘍摘出術(露出部以外 長径6~12cm) 等 39 1.00 2.15 0.00 46.62
K0064 皮膚、皮下腫瘍摘出術(露出部以外)(長径12cm以上) 等 23 1.26 7.43 0.00 49.09
K476-4 ゲル充填人工乳房を用いた乳房再建術(乳房切除後) 14 1.00 3.79 0.00 52.71
K287 先天性耳瘻管摘出術 14 0.93 1.14 0.00 32.14

形成外科では、元々の得意分野である「ケロイド・肥厚性瘢痕」「皮膚がん」「乳房再建」「皮膚・軟部腫瘍」「あざのレーザー治療」「先天性耳変形」「多合指症」「下腿潰瘍」に加えて、近年では「腋臭症」「顔面神経麻痺」「リンパ浮腫」の患者さんが増えてまいりました。
常勤総勢11名、非常勤3名の診療体制で、それぞれが特化した専門分野を持ち、広い疾患に対応しております。

脳神経外科

Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K171-21 内視鏡下経鼻的腫瘍摘出術(下垂体腫瘍) 等 44 3.09 10.77 2.27 55.43
K1911 脊髄腫瘍摘出術(髄外のもの) 等 10 1.00 3.60 0.00 1.10
K164-2 慢性硬膜下血腫洗浄・除去術(穿頭による) 等 - - - - -
K609-2 経皮的頸動脈ステント留置術 - - - - -
K1781 脳血管内手術(1箇所) 等 - - - - -


●下垂体腫瘍、頭蓋底腫瘍に対する内視鏡下経鼻的手術
 当科の特徴として、体に負担の少ない低侵襲手術を積極的に行なっております。
 その中でも下垂体腫瘍に対する内視鏡下経鼻的手術に特に力を入れております。
 田原部長はこの領域のスペシャリストであり、個人としての手術数は約2000例と本邦最多の件数を誇ります。
 また、下垂体腫瘍以外にも髄膜腫、頭蓋咽頭腫、脊索腫などの高難度頭蓋底腫瘍に対しても、内視鏡を用いた経鼻的手術を積極的に行っております。

●脳動脈瘤(未破裂)
 未破裂脳動脈瘤は、近年脳ドックや頭痛などの症状で頭部MRI検査を受ける方が増えたことにより、見つかる場合が増えてきています。
 脳動脈瘤が破裂すると多くはくも膜下出血になるので、診断された方は、精神的なストレスとなることも多いと考えられます。
 日本脳卒中学会のガイドラインでは、一般に直径5mm以上の動脈瘤は破裂のリスクがあることより、手術の適応とされています。
 ただし、大部分を占める直径10mm未満の脳動脈瘤の破裂率は年間1%以下ですので、治療を急ぐ必要はありません。
 患者さんには十分にご理解を頂けるように数回に分けて説明しております。
 外科的治療には、従来から行われている開頭によるクリッピング手術と近年増加している血管内手術(コイリング)があります。
 当院では、脳卒中の外科学会専門医と血管内治療学会専門医が中心となり、脳神経外科全体で協議し、それぞれの患者の方の状態に合わせた、安全で確実性の高い方法で治療ができるよう診療を行っています。
 手術治療に際しては、各種神経モニタリング、術中蛍光動脈造影などを用いて、安全性の高い医療を心掛けています。

●慢性硬膜下血腫
 慢性硬膜下血腫は、高齢者に多い疾患です。転倒や軽微な頭部外傷後、1-3か月で脳の表面と頭蓋骨の隙間に血腫が貯まってきます。
 症状としては、運動麻痺やふらつき、歩行障害、頭痛、認知症などが見られやすいものです。この血腫は脳内には貯留しないので、適切な時期に治療を行えれば、後遺症なく治ることが期待できます。
 血腫が少ない時は、漢方薬を中心とした内服薬で治すことも可能ですが、症状が出るほどの大きさの血腫では外科治療が必要です。
 外科治療では、局所麻酔で約30分強の穿頭血腫洗浄術を行います。
 通常は、ご高齢の方でも安全に手術が受けられます。
 約10%に再発が起こりますが、再発を繰り返す場合には、神経内視鏡手術や血管内手術の併用で対応します。

●水頭症
 水頭症は脳室に脳脊髄液が余分に溜まることにより、症状を呈する疾患です。
 認知症や歩行障害、尿失禁などが症状ですが、これらはシャント手術という脳脊髄液を抜く患者さんの負担が比較的軽い手技で治療が可能です。
 水頭症の診断には画像検査が大切ですが、こういった症状で内科などで治療されている患者さんの中に水頭症が隠れていることが少なからずあり、かかりつけの先生とご相談いただき、脳神経外科への受診をお勧めしたいと考えます。
 シャント手術の効果が期待できるかどうかの画像上の特徴やタップテストなどの結果で判断して、直せる認知症の治療に取り組んでいます。

●二分脊椎・脊髄脂肪腫
 当院は周産期・小児医療センターを有し、積極的な小児の外来・入院診療が行われています。
 我々も同様に、小児脳神経外科治療の専門医により、意欲的に小さなお子さんの治療を行なっております。
 その中でも、お尻のくぼみやあざなどから発見される潜在性二分脊椎の治療には特に力を入れており、この分野でも内視鏡を用い、わずか1cmの皮膚切開での低侵襲な手術を行なっています。

呼吸器外科

Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K5131 胸腔鏡下肺切除術(肺嚢胞手術(楔状部分切除によるもの 等 23 7.09 2.35 0.00 31.13
K514-23 胸腔鏡下肺悪性腫瘍手術(肺葉切除又は1肺葉を超える) 等 16 2.44 3.19 0.00 64.56
K514-21 胸腔鏡下肺悪性腫瘍手術(部分切除) 等 16 3.25 2.44 0.00 67.25
K502 縦隔腫瘍、胸腺摘出術 - - - - -
K5132 胸腔鏡下肺切除術(その他のもの) - - - - -


当科では原発性肺癌、転移性肺腫瘍、縦隔腫瘍、自然気胸など、外科的治療の必要とする胸部・呼吸器系疾患を対象に診察・治療を行っております。
2024年の呼吸器外科手術実績は84件、その内訳は肺悪性腫瘍41件(原発性肺癌32件、転移性肺腫瘍9件)、気胸23件、縦隔・胸壁腫瘍8件、良性腫瘍4件、その他8件でした。全例重篤な合併症をきたした症例はなく、みな早期退院が可能でした。

【肺がん】
当科では肺がんを疑う症例に対し、原則3日間入院で気管支鏡検査を実施しています。高齢者や合併症のある患者にも安全を重視し、診断が困難な場合は放射線科と連携してCTガイド下肺生検を行います。治療は化学療法が中心で、入院・外来治療を組み合わせ、患者の日常生活維持に努めています。

心臓血管外科

Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K617-4 下肢静脈瘤血管内焼灼術 等 10 1.00 0.90 0.00 65.30
K5607 大動脈瘤切除術(吻合又は移植を含む)(腹部大動脈)等 - - - - -
K5551 弁置換術(1弁のもの) - - - - -
K554-21 胸腔鏡下弁形成術(1弁のもの) 等 - - - - -
K5601ニ 大動脈瘤切除術(上行大動脈)(その他のもの) 等 - - - - -

当院では主に成人心臓・大血管手術さらに末梢血管疾患に対する治療を行っています。
心臓手術では冠動脈バイパス術を中心とし、患者さんの御体に負担が少ない低侵襲治療を心がけています。
大動脈瘤手術は大動脈瘤の位置や形態だけでなく、患者さんの年齢や社会的背景を考慮した治療方法の選択を行い良好な成績が得られています。
下肢静脈瘤に対する治療としてレーザーを使用し、入院日数を要さず短期間での治療が可能となっています。本治療の唯一の合併症とし神経障害がありますが、当院では術前後で神経機能をチェックするなど、神経障害を予防する取り組みを行っています。

小児外科

Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K6335 ヘルニア手術 鼠径ヘルニア 等 79 1.00 1.04 0.00 4.37
K6333 ヘルニア手術 臍ヘルニア 等 58 1.00 1.00 0.00 2.71
K836 停留精巣固定術 53 1.00 1.00 0.00 3.23
K8351 陰嚢水腫手術 鼠径部切開によるもの 等 31 1.00 1.00 0.00 3.61
K8282 包茎手術 環状切除術 等 - - - - -

鼠径(そけい)ヘルニア(脱腸)、陰のう水腫、停留睾丸、臍ヘルニア(でべそ)など小児外科の一般的な手術だけでなく、新生児(赤ちゃんの)外科疾患、呼吸器・消化器・泌尿器外科疾患、悪性腫瘍など幅広い小児疾患が対象となります。
また、手術の傷が目立たないように腹腔鏡下手術や小切開手術に積極的に取り組んでいます。
最も多い手術は、鼠径(そけい)ヘルニア(脱腸)が77人です。次いで、臍ヘルニア、停留精巣、陰嚢水腫となっています。
小腸切除などはお臍の目立たないような傷で腹腔鏡を使用し行います(腹腔鏡下小腸切除術)。
また、漏斗胸手術で入れたバーを抜去する手術も行っています(漏斗胸手術 胸骨挙上用固定具抜去術)。

女性診療科・産科

Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K9091イ 流産手術 妊娠11週までの場合 手動真空吸引法によるもの 等 94 0.01 0.10 0.00 34.30
K8882 子宮附属器腫瘍摘出術(両側)(腹腔鏡によるもの) 等 81 1.44 3.93 0.00 37.23
K872-31 子宮内膜ポリープ切除術(電解質溶液利用) 等 75 0.23 0.21 0.00 37.37
K8981 帝王切開術(緊急帝王切開) 等 68 5.06 6.94 0.00 34.35
K867 子宮頸部(腟部)切除術 48 1.10 1.00 0.00 38.00

当院ではNICUを拡張した事もあり、母体合併症を有する妊婦の搬送も可能な限り受け入れております。
双胎妊娠、高齢妊娠も多く、多数の早産、切迫早産、その他の異常妊娠の管理を行っております。
また、放射線科の協力もあり産科危機的出血等に対しても可能な限り対処しております。
婦人科領域では、種々の良性腫瘍・類腫瘍疾患を治療し、早期退院を目指しております。
また、子宮筋腫、子宮内膜症に対しての薬物療法、低侵襲手術療法に関しても豊富な経験を有しております。

眼科

Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K2821ロ 水晶体再建術(眼内レンズを挿入する場合) 等 139 0.03 1.22 0.00 74.00
K2801 硝子体茎顕微鏡下離断術(網膜付着組織を含むもの) 等 93 0.01 2.16 0.00 63.67
K2802 硝子体茎顕微鏡下離断術(その他のもの) 等 18 0.17 2.39 0.00 70.39
K2821イ 水晶体再建術(眼内レンズ挿入・縫着レンズ挿入) 等 - - - - -
K281 増殖性硝子体網膜症手術 - - - - -

当科入院では、内眼手術として白内障手術と硝子体手術、外眼手術として眼瞼下垂の手術をメインに施行しています。
これらの手術は実績も多く、多数の紹介患者様が来院されています。

耳鼻咽喉科

Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K3772 口蓋扁桃手術(摘出) 等 49 1.43 7.33 0.00 19.41
K340-5 内視鏡下鼻・副鼻腔手術Ⅲ型(選択的(複数洞)副鼻腔術) 等 40 1.80 4.38 0.00 51.23
K347 鼻中隔矯正術 16 1.63 3.50 0.00 43.31
K340-6 内視鏡下鼻・副鼻腔手術Ⅳ型(汎副鼻腔手術) 等 13 1.31 4.38 0.00 52.46
K340-4 内視鏡下鼻・副鼻腔手術Ⅱ型(副鼻腔単洞手術) 等 - - - - -

副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、鼻出血などの「鼻の病気」、扁桃炎などの「のどの病気」といった、日常で遭遇する可能性の高い病気の検査、診断、治療を行っている。
特に最近では、副鼻腔炎においては手術加療はさることながら、好酸球性副鼻腔炎を対象とした抗体治療にも力を入れている。
また、睡眠時無呼吸症候群に関しては当科では精密検査から治療(CPAPによる保存的治療、鼻科手術や扁桃摘出術などの外科的治療)まで全てを行える体制を整えている。

*内視鏡下副鼻腔手術
顔の中の副鼻腔という空洞に、細菌などが貯留している状態を慢性副鼻腔炎(蓄膿症)といいます。
副鼻腔は、副鼻腔換気排泄路と呼ばれる狭い交通路を介して鼻腔と連結しており、正常な副鼻腔は空気で充たされています。
しかし、換気排泄路がうまく機能せず副鼻腔に空気が入りにくくなると、副鼻腔内に炎症をきたし粘性鼻汁の貯留や鼻茸と呼ばれる炎症性のポリープが発生します。
この状態が慢性化したのが慢性副鼻腔炎(蓄膿症)であり、鼻汁、後鼻漏および鼻閉などを生じます。
通常、2、3ヶ月の薬物治療を施行して、改善のない場合や鼻茸が多発しており薬剤では改善が見込まれない場合は手術加療となります。
内視鏡下鼻副鼻腔手術とは、鼻の内側から内視鏡という約直径4mmのカメラを入れて閉鎖してしまった換気排泄路を開放し、病的な粘膜や鼻茸、貯留物(鼻汁)を除去していきます。
なお手術前の画像所見などを参考に、病変の範囲を確認して開放する副鼻腔の数によってⅢ型とⅣ型に分類されます。
従来の手術に用いられていた口腔粘膜あるいは前額部皮膚の切開が不要であり、副鼻腔粘膜の大部分が保存されることから、低侵襲で後遺症も少なく、現在副鼻腔炎の手術療法として最も行われている手術です。
しかしながら、眼や脳の副損傷という合併症もあり、最近の米国、そしてわが国の報告でも、耳鼻咽喉科における医療事故の中で、副鼻腔手術の合併症がトップに上がっているほどです。
そのため、若手医師は積極的に学外の講習会や学会のプログラムなどに参加させ、複雑な手術に対応できるスキルや最新の手術方法を習得し、より安全で低侵襲な手術に取り組んでおります。

泌尿器科

Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K8036イ 膀胱悪性腫瘍手術(経尿道的手術・電解質溶液利用のもの 等 52 2.15 6.10 0.00 74.35
K843-4 腹腔鏡下前立腺悪性腫瘍手術(内視鏡手術用支援機器を 等 47 2.00 9.70 0.00 71.45
K8411 経尿道的前立腺手術(電解質溶液利用) 等 42 2.29 6.12 0.00 71.67
K7811 経尿道的尿路結石除去術(レーザーによるもの) 等 35 2.00 2.97 0.00 60.37
K783-2 経尿道的尿管ステント留置術 27 2.52 9.30 7.41 68.19

当科で開発した前立腺生検術(14か所18本生検)により前立腺特異抗原(PSA)4-10ng/mlにおける癌の検出率は60%を超えており、的確な診断ができております。
またエンドウロロジー(経尿道的手術・腹腔鏡下手術)の分野を得意にしております。

循環器内科

Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K5951 経皮的カテーテル心筋焼灼術(心房中隔穿刺、心外膜ア 等 143 1.12 2.31 0.00 64.75
K5493 経皮的冠動脈ステント留置術(その他のもの) 等 73 1.96 2.96 0.00 70.88
K616 四肢の血管拡張術・血栓除去術 等 47 1.53 3.21 2.13 73.98
K5463 経皮的冠動脈形成術(その他のもの) 等 40 2.95 3.20 0.00 71.33
K5952 経皮的カテーテル心筋焼灼術(その他のもの) 等 33 1.39 2.12 0.00 54.94

当科では、不整脈に対するカテーテル治療を積極的に行っており、多くの手術件数をこなしております。
また当科は以前より狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患や、末梢動脈疾患に対するカテーテル治療に注力しており、慢性閉塞性病変や膝下の末梢動脈疾患など難治例の治療も行っています。

腎臓内科

Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K6121イ 末梢動静脈瘻造設術(内シャント造設術)(単純な) 等 41 4.93 6.44 4.88 69.12
K616-41 経皮的シャント拡張術 等 10 7.60 15.50 10.00 70.70
K635-3 連続携行式腹膜灌流用カテーテル腹腔内留置術 等 - - - - -

当科の特徴として腎臓内科医が血液透析、腹膜透析に必要となる内シャント造設術、人工血管移植術や腹膜透析カテーテル留置術を行っております。
また、導入後のブラッドアクセストラブルに対する経皮的シャント拡張術や血栓除去術、さらに腹膜透析カテーテル整復術も当科で行っております。
導入期だけでなく導入後も全て当科で管理することで、より細やかな治療を行うことができます。

救命救急センター

Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K386 気管切開術 16 10.50 46.00 68.75 61.88
K1643 頭蓋内血腫除去術(開頭して行うもの) 脳内のもの 等 12 0.25 51.75 91.67 72.67
K145 穿頭脳室ドレナージ術 等 12 1.67 31.25 50.00 69.50
K1771 脳動脈瘤頸部クリッピング(1箇所) 等 11 0.18 61.55 81.82 59.82
K164-2 慢性硬膜下血腫穿孔洗浄術 等 10 2.20 19.80 20.00 74.80

●外傷症例の多くは事故現場で受傷部位・程度を判断することは難しく、一定の基準を満たした外傷例は重症と考えて当施設に搬入されて来る。
 迅速な全身精査の上、緊急手術を含めた必要な処置が行われる。
●病院外心肺停止を含めた不整脈に対して、人工心肺、脳低温療法を含めた積極的な心肺脳蘇生を行っている。
 循環器内科と救命救急科が連携し、迅速な心臓ペーシングや冠動脈血管内治療が行われている。

消化器内科

Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K7211 EMR(下部)直径2cm未満 等 486 0.48 1.27 0.00 66.41
K688 内視鏡的胆道ステント留置術 97 1.74 10.28 2.06 73.32
K6532 ESD(上部)(胃) 等 68 1.71 5.79 2.94 72.25
K721-4 ESD(下部) 等 62 1.35 4.95 0.00 66.37
K533-2 EVL(上部) 等 49 1.12 8.37 0.00 59.71

●内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術
 原則的には当科では1泊2日入院で大腸ポリープ切除を実施しております。内視鏡で観察しポリープの大きさや形により適切に内視鏡的に切除を行います。
 出血などの合併症がないかどうか慎重に評価を行います。

●早期悪性腫瘍大腸粘膜下層剥離術(大腸ESD)
 切除対象となる病変は、大腸ポリープのうち腺腫または粘膜内がんおよび粘膜下層浅層浸潤がんを内視鏡治療の適応としています。
 病変の大きさについての適応は一般に5mm以上の病変が切除対象となりますが、当院で使用しているスネアで一括切除できる病変の大きさは20-25mm前後としています。
 既往症がない患者に対しては、一泊二日の入院で安全に内視鏡的加療を行い帰宅可能としています。
 一方で、それ以上の大きさの病変に対しては複数回のスネアリングによる分割切除となります。
 分割切除は一括切除と比較し、遺残再発率が高いため腫瘍径20mmを指標とし、当院では病変の局在、形態、患者の既往症を考慮し内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)による一括切除を治療法として選択しております。

●内視鏡的胃ポリープ・粘膜切除術(EMR)・早期悪性腫瘍粘膜下層(胃ESD)
 ESDは早期胃癌に対する内視鏡治療法として1990年代半ばから本邦で用いられるようになった治療法です。
 手技の手法としては、高周波ナイフを用いて病変周囲の粘膜を切開し、さらに粘膜下層を剥離して切除する方法です。
 従来のEMR法と比較すると、大きな病変や潰瘍瘢痕を有する病変に対しても一括切除が可能となります。
 最近では内視鏡治療の適応が、より腫瘍径の大きい病変にも適応が拡大されています。
 当院ではESDを正確かつ安全に施行するために、経験豊富な専門医による外来検査・診察と入院検査を用いて正確な術前診断を行い、複数のスタッフによる術前カンファレンスを行い、万全をきたすように努めています。

●内視鏡的止血術
 胃十二指腸潰瘍、憩室出血、静脈瘤破裂などの消化管出血については随時緊急内視鏡を行っております。
 その際には豊富な経験を持つ内視鏡専門医を含む複数のスタッフで実施し、出血源の同定や止血を行っております。
 止血後も慎重に経過を観察し、随時内視鏡でのフォローを行います。

●胆管炎/胆管ステント留置術/経鼻胆管ドレナージ術
 急性胆管炎は致死的な疾患であり、初期治療における内視鏡的胆管ドレナージ(胆管内の膿を胆管外に逃がす治療)が重要であるとされています。
 急性胆管炎、胆道閉塞疾患に対して随時緊急ERCPを施行し、胆道ステント留置術や、経鼻胆管ドレナージ術を行っております。

●内視鏡的経鼻胆管ドレナージ(ENBD)
 急性胆管炎や閉塞性黄疸に対して行われます。
 内視鏡下にて胆管への選択的カニュレーション後、ガイドワイヤーテクニックを用いて胆管内に5-7Frのチューブを留置し、経鼻的外瘻ドレナージを完成させる方法です。
 これにより急性胆管炎や閉塞性黄疸が改善できます。

●急性膵炎
 急性膵炎の成因の多くはアルコールと胆石です。
 アルコール膵炎の場合は通常の急性膵炎の治療のみで良いですが、胆石性膵炎の場合は胆管炎を併発することがあり、その場合胆管ドレナージを必要とします。
 当科では胆石性膵炎に対応することができ、また急性膵炎が重症である場合、救命救急センターと協力して集中治療にあたります。

●超音波内視鏡検査(EUS)
 内視鏡の先端に超音波(エコー)装置が付属した内視鏡検査です。
 一般的によく用いられている体表(腹壁)からのエコー検査は、胃内や腸管内の内容物、皮下脂肪、内臓脂肪により画像描出が困難になることがありますが、EUSは観察したい臓器を胃や十二指腸から直接エコーをあてることができるため、より詳細な観察が可能です。
 食道、胃、十二指腸、大腸、胆嚢、膵臓で用いられ、各臓器の内部や境界、周囲の臓器、血流やリンパ節の情報を得ることができます。
 消化管の早期癌や粘膜下腫瘍における浸潤度や深達度診断(病変の局在や粘膜からの深さ)に用いられる検査です。
 膵臓や胆道疾患の診断では、早期慢性膵炎、慢性膵炎、膵嚢胞性疾患、膵臓癌、胆嚢ポリープや胆石などを胃や十二指腸からエコーをあてることで、観察・評価することができます。

●超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)
 EUSで確認できる腫瘤性病変に針を刺して、細胞や組織を採取する検査法です。エコーで病変を確認しながら穿刺し、吸引することで内部の組織の情報を病理検体として評価できます。
 一定の大きさがあれば病理診断を行うことができ、確定診断に至ることができます。
 特に膵臓癌や粘膜下腫瘍、リンパ節に対する穿刺を行います。
 侵襲的な検査ではありますが、検査自体は静脈麻酔下で行いますので、被験者の体に負担の少ない検査です。

●機能性消化管障害(逆流性食道炎、機能性ディスペプシア、慢性便秘、過敏性腸症候群)
 器質的な病変が認められないにもかかわらず慢性的な消化器症状を呈する疾患群のことをいいます。
 日本では、少なくとも人口の約1-2割が胃・十二指腸由来の慢性症状を有しており、その多くは、器質的疾患を認めない機能性疾患であると報告されています。

●過敏性腸症候群
 腹痛を伴う下痢や便秘などの排便障害を自覚する疾患です。
 ともに、消化管精査(内視鏡検査、CT検査など)で器質的な病変(癌、胃炎、大腸炎など)が無いことが前提になります。
 また、機能性消化管障害はoverlapすることが多い(様々な症状が出現する)と言われております。
 例えば、胃痛やもたれの症状を自覚しながら、下痢や便秘の症状をも認めることがあります。
 機能性消化管障害は生命への影響がないため、医療機関でも軽視される方向にあります。
 しかし、患者様にとっては日常生活に直接支障が出るため、生活の質が著しく低下します。
 労働生産性の低下を引き起こすなど、社会的にも大きな損失を招くという報告もあります。
 特に当院では消化管機能検査、膵酵素異常に対する超音波内視鏡検査、十二指腸の炎症評価、質問票を用いた心理的背景の評価を行うことで、患者様個々に対して生活指導、栄養指導、薬物治療を行っております。

消化器外科

Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K672-2 腹腔鏡下胆嚢摘出術 156 1.24 4.74 1.28 60.24
K634 腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術(両側) 80 1.13 3.11 0.00 69.19
K719-3 腹腔鏡下結腸悪性腫瘍切除術(内視鏡手術用支援機器) 等 71 3.54 10.52 4.23 67.07
K718-21 腹腔鏡下虫垂切除術(虫垂周囲膿瘍を伴わないもの) 等 57 0.46 4.09 0.00 41.65
K740-22 腹腔鏡下直腸切除・切断術(低位前方切除術・手術用支援機器使用) 等 31 3.29 14.48 0.00 61.71

1番目は胆石症に対する腹腔鏡手術で、胆嚢に炎症が無い、または軽度の場合には外来で術前検査を行いあらためて待機手術を行いますが、なかには急性胆嚢炎と呼ばれる緊急処置を必要とする状態で来院される患者さんも少なくなく、この場合には診療ガイド ラインに従って発症後72時間以内に速やかに手術を行います。

2番目は鼠径ヘルニア、いわゆる「脱腸」に対する手術で、当科では基本的にすべての鼠径部ヘルニア手術を腹腔鏡手術で行っています。
腹腔鏡手術は、疼痛の少なさや手術創の整容性に優れているのみならず、複数のヘルニア(対側のヘルニアや大腿ヘルニアの合併など)が併存する場合にも見落とすことなく同時に治療が完了するというメリットがあります。
術後の再発率は1%以下でこの点でも従来法より優れています。平均在院日数は3日間で以前より著しく短縮し、早期の社会復帰が可能となりました。

3番目は虫垂炎(俗にいう盲腸炎)に対する手術です。
従来は右下腹部を4–6cm切開して小開腹で手術(虫垂切除術)を行っていましたが、ときに炎症が強かったり、肥満例では視野が悪く手術が困難で手術創感染などの合併症をきたすこともありました。
当科ではこの虫垂炎に対してもすべて腹腔鏡を用いて、良好な視野で、小さな手術創で治療を行なっています。

4番目は大腸ポリープに対する内視鏡治療の数を示しています。
当科では年間2500例の大腸内視鏡検査を行っており、大腸ポリープも多く見つかります。
大腸ポリープのなかには早期癌も含まれており、拡大内視鏡やNBI(Narrow Band Imaging : 狭帯域光法)と呼ばれる最新技術で正確な診断を行い、最適な治療を提供するよう努めています。

5番目は結腸(大腸のうち肛門に近い直腸を除いた部分)の癌症例です。
当科ではこのほとんどを腹腔鏡で手術しており、これにより術後の回復が早く、在院日数は全国平均を下回っています。

乳腺外科

Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K4763 乳腺悪性腫瘍手術(乳房切除術)(腋窩部郭清を伴わない 84 1.04 3.10 0.00 59.51
K4762 乳腺悪性腫瘍手術(乳房部分切除術)(腋窩部郭清を伴わ 等 57 1.02 1.70 0.00 54.12
K4765 乳腺悪性腫瘍手術(乳房切除術)(腋窩鎖骨下部郭清を伴 33 1.09 3.27 0.00 58.97
K4768 乳頭乳輪温存乳房切除術(腋窩部郭清を伴わないもの) 等 18 1.00 3.28 0.00 47.56
K4769 乳腺悪性腫瘍手術(乳頭乳輪温存乳房切除)腋窩郭清無し 等 14 1.14 3.57 0.00 48.50
外科治療は乳房の手術とリンパ節の手術となります。
当院では乳房における癌の広がりを精密に調べて的確に切除します。
乳房を温存する乳房部分切除、乳頭乳輪温存乳房切除・乳房切除と同時に行う乳房一次再建など患者さんの意向を尊重して術式を選択しています。
特に若い患者さんが多いこともあり、乳頭乳輪温存乳房切除は可能な限り乳房下端からの皮膚切開を用いて正面から傷が見えないように心がけています。
その後も形成外科の乳房再建チームにより、ご本人の希望に応じて自身の組織を用いた自家組織再建やインプラント再建を行っています。
リンパ節の手術では腋窩郭清が必要な症例を除き、注射の痛みを伴わないインドシアニングリーン蛍光法によるセンチネルリンパ節生検で適正な個数のリンパ節を検査します。
診断当初にリンパ節転移があった症例でも、術前化学療法後に転移が消えていればリンパ浮腫の原因となる腋窩郭清を省略することにも取り組んでいます。

腫瘍内科

Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K6113 抗悪性腫瘍剤静脈内持続注入用植込型カテーテル設置頭 等 21 0.10 1.00 0.00 58.10
K664 胃瘻造設術(経皮的内視鏡下胃瘻造設術、腹腔鏡下胃瘻造設術を含む) - - - - -
- - - - - - -
- - - - - - -
- - - - - - -

当科での入院される患者さんは抗がん剤(化学療法)の脱感作療法を受ける患者さん、抗がん剤用の中心静脈カテーテル埋め込み術を受ける患者さん、悪性胸水のドレナージを受ける患者さん疼痛コントロールを受ける患者さんなどが主になります。

その他(DIC、敗血症、その他の真菌症および手術・術後の合併症の発生率)

DPC 傷病名 入院契機 症例数 発生率
130100 播種性血管内凝固症候群 同一 - -
異なる 40 0.36
180010 敗血症 同一 31 0.28
異なる 46 0.41
180035 その他の真菌感染症 同一 - -
異なる - -
180040 手術・処置等の合併症 同一 28 0.25
異なる - -

【救命救急科】
 ・救命救急科には外傷や消化管出血などによる出血性ショック症例が多く搬入され治療を行っている。
  また、心肺停止症例や敗血症といった重篤な症状を呈する症例も多い。
  これらの症例は救命できても多臓器不全を呈することが少なくなく、特に播種性血管内凝固症候群を合併し、血液凝固障害を呈する例は高頻度に認められる。
 ・救急患者の高齢化に伴い、肺炎や尿路感染といった感染症により救急搬送されて来る症例は増加している。
  重症感染症の中には臓器障害が進行している敗血症症例も少なくない。感染治療とともに臓器補助を含めた集中治療を行い救命している。

リスクレベルが「中」以上の手術を施行した患者の肺血栓塞栓症の予防対策の実施率

肺血栓塞栓症発症のリスクレベルが
「中」以上の手術を施行した
退院患者数(分母)
分母のうち、肺血栓塞栓症の
予防対策が実施された患者数(分子)
リスクレベルが「中」以上の手術を
施行した患者の肺血栓塞栓症の
予防対策の実施率
1226 1132 92.33%

当院では、より安心・安全な医療をご提供するために、多職種が連携して肺血栓塞栓症予防の様々な取り組みを行っております。
肺血栓塞栓症の予防策として、運動療法、薬物療法、足に専用機器装着による間欠的空気圧迫法(フットポンプ)、弾性ストッキングの装着などが挙げられます。
手術の有無に関わらず対象となるすべての入院患者さんのリスクを評価し、適正な予防策を実施しております。

血液培養2セット実施率

血液培養オーダー日数(分母)

血液培養オーダーが1日に
2件以上ある日数(分子)
血液培養2セット実施率
3304 1671 50.58%

※新生児事例を含む小児事例については、対象から除いて集計しております。

【指標の説明】
血液培養は1セットのみの場合の疑陽性による過剰治療を防ぐため、2セット以上行うことが推奨されています。

【算出方法】
血液培養2セット実施率=血液培養オーダーが1日に2件以上ある日数÷血液培養オーダー日数×100(%)

広域スペクトル抗菌薬使用時の細菌培養実施率

広域スペクトルの抗菌薬が
処方された退院患者数(分母)

分母のうち、入院日以降抗菌薬処方日
までの間に細菌培養同定検査が
実施された患者数(分子)
広域スペクトル抗菌薬使用時の
細菌培養実施率
725 651 89.79%

※広域抗菌薬:カルバペネム系抗菌薬、フルオロキノロン系抗菌薬、TAZ/PIPC

転倒・転落発生率

退院患者の在院日数の総和
もしくは入院患者延べ数
(分母)

退院患者に発生した
転倒・転落件数

(分子)
転倒・転落発生率
130591 162 1.24%

【指標の説明】
入院中の患者さんの転倒やベッドからの転落は決して珍しくありません。原因は入院環境の変化や疾患、治療・手術などさまざまです。この指標では、転倒・転落による傷害の発生率だけでなく、傷害に至らなかった事例もあわせて把握することで、発生状況をより正確に追跡できます。事例の分析から予防策を導き実施することで、転倒・転落による傷害リスクの低減につながる指標となります。

【算出方法】
転倒・転落発生率(件/1,000患者日)
=(転倒・転落件数÷入院患者延べ日数)×1,000

転倒転落によるインシデント影響度分類レベル3b以上の発生率

退院患者の在院日数の総和
もしくは入院患者延べ数
(分母)

退院患者に発生したインシデント
影響度分類レベル3b以上の
転倒・転落の発生件数(分子)
転倒転落による
インシデント影響度
分類レベル3b以上の発生率
130591 17 0.13%

【指標の説明】
入院における安全管理の効果を測るために設定されています。
特に、レベル3b以上(入院延長や侵襲的処置、後遺症、死亡など)の転倒・転落事故の発生状況を把握することで、予防策や安全体制の改善点を明らかにする指標となります。

【算出方法】
転倒転落によるインシデント影響度分類レベル3b以上の発生率
=(一定期間に発生したレベル3b以上の転倒・転落件数÷入院患者延べ日数)×1,000

手術開始前1時間以内の予防的抗菌薬投与率

全身麻酔手術で、
予防的抗菌薬投与が実施された
手術件数(分母)

分母のうち、手術開始前
1時間以内に予防的抗菌薬が
投与開始された手術件数
(分子)
手術開始前1時間以内の
予防的抗菌薬投与率
2412 2405 99.71%

【指標の説明】
予防的抗菌薬投与とは、今は感染がなくても手術後の感染を防ぐために事前に抗菌薬を投与することをいいます。特に開胸や開腹を伴う手術では、手術直前に点滴を投与することで術後感染を抑える効果が期待されています。

【算出方法】
手術開始前1時間以内の予防的抗菌薬投与率(%)
=(手術開始前1時間以内に予防的抗菌薬が投与された症例数÷予防的抗菌薬投与が必要な全手術症例数)×100

d2(真皮までの損傷)以上の褥瘡発生率

退院患者の在院日数の総和
もしくは
除外条件に該当する
患者を除いた
入院患者延べ数(分母)

褥瘡(d2(真皮までの損傷)
以上の褥瘡)の発生患者数
(分子)
d2(真皮までの損傷)
以上の褥瘡発生率
118855 430 0.36%

【指標の説明】
褥瘡は患者さんのQOLを下げたり、感染や入院期間の延長、医療費の増加につながる重大な問題です。そのため予防対策は医療の重要項目とされ、診療報酬にも反映されています。この指標は、褥瘡が発生する確率を測ることで、日々の看護ケアの質を評価するものです。

【算出方法】
D2以上の褥瘡発生率(%)
=(一定期間に新たに発生したD2以上の褥瘡件数÷入院患者延べ数)×100

65歳以上の患者の入院早期の栄養アセスメント実施割合

65歳以上の退院患者数
(分母)

分母のうち、入院後48時間以内に
栄養アセスメントが実施された
患者数(分子)
65歳以上の患者の入院早期の
栄養アセスメント実施割合
4396 293 6.67%

【指標の説明】
高齢者の入院は、低栄養のリスクが高く、合併症の発生や予後にも大きく影響します。
そこで、この指標では病院全体で栄養管理体制がどの程度実施されているかを把握します。
入院早期に栄養状態を評価することで、栄養管理計画の立案や早期介入につながり、回復促進や入院期間の短縮、再入院の予防にも役立つ指標となります。

【算出方法】
65歳以上の患者の入院早期の栄養アセスメント実施割合(%)
=(入院早期(48時間以内)に栄養アセスメントを実施した患者数/65歳以上の退院患者数)×100

身体的拘束の実施率

退院患者の在院日数の総和
(分母)

分母のうち、身体的拘束日数の総和
(分子)
身体的拘束の実施率
109494 4406 4.02%

【指標の説明】
身体拘束は、尊厳や人権に直結する重要な医療行為であるため、国際的にも国内的にも、その実施は最小限にとどめることが求められています。
したがって、病院全体で拘束の実施状況を把握することは、適正なケアの推進や安全管理体制の評価に資する重要な指標となります。

【算出方法】
身体的拘束の実施割合(%)
=(身体的拘束日数の総和/退院患者の在院日数の総和)×100

更新履歴

2025年09月04日