形成外科学とは
形成外科学は、身体の形態や機能の障害に対して、再建や修復、さらには美容的改善を通じて、患者さんの生活の質(QOL)を向上させることを目的とする診療科です。本学では、形成外科、再建外科、美容外科の各分野を体系的に学ぶことができます。
学部教育(臨床実習)
本学の学生は、臨床実習(クリニカルクラークシップ)において、形成外科学に関わる幅広い疾患の診断と治療について学びます。具体的には、熱傷や外傷、ケロイドや肥厚性瘢痕、瘢痕拘縮、顔面骨骨折、頭蓋顎顔面外科、手の外科、乳房再建、頭頸部再建、先天異常などが対象となります。これらを通じて、形成外科学の社会的役割や責任についても深く理解します。
卒後教育
前期臨床研修
前期研修では、形成外科・再建外科・美容外科に関連する臨床的な基礎知識を習得します。また、当科の診療と密接な関係をもつ麻酔科、頭頸部外科、乳腺外科、整形外科、皮膚科などの診療科を幅広く学ぶことを推奨しています。
後期臨床研修
後期研修では、形成外科診療に必要な知識と技術を体系的に修得します。形成外科縫合法、マイクロサージャリー、植皮術、皮弁術、組織移植術、レーザー治療、薬物治療などの実際を学び、臨床に直結した基礎研究にも取り組みます。たとえば、創傷治癒、組織工学、再生医療、メカノバイオロジー、メカノセラピーなどに関する研究を通じて、トランスレーショナルリサーチ(橋渡し研究)を実践します。
研修修了後は、日本専門医機構認定による形成外科専門医の資格取得を目指し、経験を積んでいきます。
また、大学院への進学や、国内外の医療機関への留学も積極的に推奨しており、教室として最大限の支援を行っています。
教室の理念と方針
日本医科大学形成外科学教室は、次の 5 つの理念を掲げています:
・Diversity(多様性):教室員一人ひとりの個性を尊重する
・Credibility(信頼性):医療と教育における誠実な姿勢
・Originality(独創性):先進的な研究の推進
・Leadership(指導力):学会や教育現場におけるリーダーシップの発揮
・Internationality(国際性):海外との連携や国際的視野の涵養
教室では、教室員がそれぞれの得意分野で能力を発揮し、のびのびと活躍できる環境づくりを大切にしています。誰にも得意・不得意がありますが、それぞれの個性を尊重しながら、得意な分野は皆で伸ばし、不得意な分野は皆で支え合うという、協調と成長を重視した教室運営を行っています。
形成外科学 / 形成再建再生医学
大学院教授 小川 令
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分野 (教室) の概要
日本医科大学形成外科学教室は、わが国でも屈指の伝統を誇る形成外科学教室です。1971年(昭和46)年に、丸山ワクチンで有名な当時の皮膚科学教授・丸山千里先生のご尽力で、付属病院で形成外科が診療科として誕生いたしました。形成外科学教室の初代教授は文入正敏先生、二代目は百束比古先生、そして三代目は現在の小川令先生です。現在では付属病院は、「形成外科・再建外科・美容外科」を、武蔵小杉病院と千葉北総病院では「形成外科」を開設し、多摩永山病院では「形成外科診療班」として、幅広い診療を行っております。
特に付属病院では、熱傷や外傷の治療、ケロイドや肥厚性瘢痕、瘢痕拘縮などの診療は国内随一、顔面骨骨折や頭蓋顎顔面外科、手の外科、乳房再建、頭頸部外科再建、先天異常の治療など、年間の手術件数は約1500件あり、毎年多くの患者様を治療しています。このような臨床のみならず、組織工学・再生医学・メカノバイオロジー領域の研究活動が盛んで、その成果は内外で高く評価されています。これら研究の成果は逐一臨床に生かされて常に最先端の治療、手術が行われており、トランスレーショナルリサーチを実践しています。なお、付属病院での診療内容に関する詳細は「付属病院の私設ページ(http://www.nms-prs.com/)」をご覧ください。 -
主な研究内容
メカノバイオロジーおよびメカノセラピー
三次元構造を有する地球上の生物は、地球の重力や大気圧、水圧をはじめとする様々な物理的な力に影響を受けて成り立っています。地球上で生命が誕生し、多細胞生物が生まれ増殖する際にも、物理的刺激をはじめとした環境が大きな影響を与えたと考えられています。
われわれヒトの体は、骨格を形成する骨や軟骨、筋肉などは体重を支えて成長し、それに伴って体表面の皮膚は伸展します。日々、心臓は鼓動し、血液は血管を流れ、肺は呼吸で動きます。日常の動作によっても絶えず皮膚をはじめとする体の各部位は伸展・収縮を繰り返し、物理的刺激を受けています。この物理的刺激があるからこそ、体の各場所の臓器・組織や細胞が今の形態・機能を維持していると言っても過言ではありません。
これらの現象を細胞レベルで見ると、細胞自体も物理的な力を受けて形態学的に変化したり、細胞内外での物質の移動が生じています。これによって細胞の遺伝子発現が調節され、さまざまな役割を担っていることがわかってきました。これを解析する研究分野が、メカノバイオロジー(Mechanobiology)です。物理生物学や細胞力学、機械生物学といった日本語を使うこともあります。メカノバイオロジーを研究することによって、特にケロイドをはじめとする種々の皮膚疾患が解明できる可能性がわかってきました。また病気の解明だけでなく、傷を治したり傷跡を綺麗にしたり(創傷治癒の促進および瘢痕治療)、幹細胞を用いて三次元形態の組織を再生したり(三次元組織再生・再生医療)、さらには爪や毛髪の再生を行い、美容医療や抗加齢医療への応用も研究しています。
メカノバイオロジーの知識や研究結果を元に、それを臨床に応用することを、「メカノセラピー(Mechanotherapy)」といいます。「メカノセラピー」とは、物理的刺激を臓器・組織はもとより、あらゆる細胞や分子に与えて医療に応用することを意味しています。この新しい「メカノセラピー」を新たな医学の一分野として位置づけて医学に貢献するために日々、臨床のための基礎研究を行っています。地球上で進化した生物にとって、物理的刺激やpHなどの環境因子は必須の刺激であったはずであり、われわれの体は、物理的刺激を含めた環境因子によって形成され、維持されていると考えることができます。宇宙飛行士が地球に帰還すると、骨や軟骨が吸収されて歩けなくなることが良い例と思います。これからメカノバイオロジーやメカノセラピーがますます注目される時代が訪れます。瘢痕・肥厚性瘢痕・ケロイド・瘢痕拘縮の成因と治療に関する研究
傷あとは、やけどやけがをはじめ、あらゆる外科手術で問題となります。どのようにすれば傷あとが目立たなくなるかを、分子レベル・細胞レベル・組織レベルで研究しています。特に、最近のわれわれの研究から、瘢痕・肥厚性瘢痕・ケロイド・瘢痕拘縮の発症機序に、物理的刺激が関与していることがわかってきました。傷あとが日常動作で引っ張られたり動いたりすると、炎症が生じ、目立つ傷あとになるのです。そこで治療では傷あとから、いかに物理的刺激を取り除くか、炎症を制御するか、ということを実践しながら、最適な治療法の開発を行っています。これもメカノセラピーの1つと言えます。
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