腹腔鏡下前立腺全摘除術の実績をベースに、最新鋭のロボットも導入 泌尿器科学/男性生殖器・泌尿器科学分野 近藤幸尋 大学院教授

腎臓で産生された尿が体外へ排泄されるルートである尿路系、及び前立腺や精巣、副腎といった男性生殖器系の疾患象とするのが泌尿器科です。具体的には腎臓がん、腎盂がん、尿管がん、膀胱がん、前立腺がん、前立腺肥大等の疾患を扱います。最新鋭の手術支援ロボット「ダヴィンチSi」も導入し、前立腺がんの手術に実績を上げています。

尿路系・男性生殖器系疾患について幅広く診療

手術室 日本医科大学付属病院の泌尿器科では、腎移植及び男性不妊症治療を除き、尿路系・男性生殖器系の疾患について、幅広く診療の対象としています。泌尿器の“泌”は内分泌に由来するもので、その名の通り前立腺や副腎も対象とし、副腎の外科的手術は内分泌科ではなく泌尿器科で担当しています。現在がんの治療法は、例えば前立腺がんではホルモン療法や内視鏡手術、開腹手術、外照射や内部照射の放射線治療、抗がん剤投与など多岐にわたっており、泌尿器科ではこれらを幅広く手がけています。
また、泌尿器科は主として男性の患者さんを対象とするというイメージがあるかと思いますが、実は女性の患者さんも少なからず対象としています。例えば尿失禁や骨盤臓器脱といった疾患について、女医が女性の患者さんを治療するという体制を取っています。

以前より日本医科大学付属病院は内視鏡手術を得意としており、古くは内視鏡を使った前立腺肥大症の手術である経尿道的切除術を行ったり、尿管結石に尿管鏡を用いた治療を行ったりといった実績を重ねてきました。その後、2000年頃から全国に先駆けて腹腔鏡下前立腺全摘除術を行うようになりました。
こうした実績のもと、それまで人の手で行っていた腹腔鏡下前立腺全摘除術をロボットの操作に置き換えることになったのが、手術支援ロボット「ダヴィンチSi」の導入です。

腹腔鏡下の手術 手術支援ロボット「ダヴィンチSi」を使った手術とは、ロボットアームについた鉗子などを医師が遠隔操作することで行います。基本的には日本医科大学付属病院が得意としてきた腹腔鏡下の手術で、医師が術者として3Dアームを見ながら操作します。今まで直接見ることのできなかった前立腺の裏側や狭い部位までカメラによって自由に拡大して確認することができるため従来以上に緻密な手術が可能になりました。また、患者さんへの負担が減るため早期の回復が可能になり、術後のストレスも減るという、医師と患者さん両方にとってWin・Winの関係を実現します。現在、前立腺がんの手術のほとんどはこの「ダヴィンチSi」で行われています。

新たな診断マーカーの研究も進める

研究の様子 また、新しい取り組みとして新しい診断マーカーの研究を進めています。がんの診断は画像診断が中心ですが、その判断には2、3ヵ月を要するのが一般的です。この間、効果のはっきりしない治療薬の投与を続けることは患者さんにとって大きな経済的・身体的負荷となっています。そこでより短期間で診断が下せるようになるマーカーの開発が求められています。日本医科大学付属病院ではそうした要求に応えて研究を進めています。

実は前立腺がんは、社会の高齢化に伴ってここ数年、異常とも言える勢いで患者さんが増えています。2000年に比較して現在の患者数は3倍以上という集計もあります。こうした状況をふまえ、これまでの豊富な症例を活かし、若手医局員の育成を通じて国内でも選りすぐりの泌尿器科を目指してまいります。

プロフィール

近藤 幸尋大学院教授(泌尿器科学/男性生殖器・泌尿器科学分野)

日本医科大学 大学院医学研究所 男性生殖器・泌尿器科学分野 大学院教授
日本医科大学付属病院 副院長/泌尿器科部長

1985年  日本医科大学卒業
1992年  米国ピッツバーグ大学医学部薬理学教室 リサーチアソシエイト
2000年  日本医科大学医学部泌尿器科学教室 助教授
2009年  日本医科大学医学部泌尿器科学教室泌尿器科 教授、日本医科大学付属病院 泌尿器科部長