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ケロイド・肥厚性瘢痕の治療

手術はするべきなのか?

 ケロイドや肥厚性瘢痕は、できた部位や状態によって、最適な治療法が異なります。
 まず初めに重要なのが、手術が適切なのか、手術以外が適切なのかを明確に判断することです。後述しますが、

(1)強いひきつれ(拘縮)があるもの
(2)感染源があるもの(粉瘤、毛の埋入など)
(3)有茎性のもの

 などは手術が第一選択になる場合が多く、上記のような問題点のないものはまず保存的治療を行ってみるのが良いと思われます。

1.保存的治療(外来での治療)

    瘢痕治療の名医として

    A)内服薬

     飲み薬ではトラニラスト(リザベン®)や柴苓湯(保険適応外)が有効であるとされています。トラニラストは抗アレルギー剤であり、腫瘍や肥厚性瘢痕の中の肥満細胞が出す伝達物質を抑制することにより作用をきたすと考えられています。一時、異常瘢痕とアレルギーには関係がないといわれていましたが、最新の研究ではその関係性が示唆されており、効果は弱いですが再度見直されているお薬です。

    B)外用薬

     塗り薬として効果のあるものにはいくつかあります。炎症を抑える目的での、ステロイド軟膏やクリームや、非ステロイド系抗炎症剤があります。また、ヘパリン類似物質などには保湿の効果があります。テープかぶれしやすい患者さんには、優しく良い治療だとは思いますが、効果が弱いのが難点です。また海外では、シリコンクリームなどを使用している事があるようですが、保湿以外の明確な作用機序は分かっていません。

    C)シリコンジェルシートと圧迫

     シリコーンジェルでできたシート状のシートにはさまざまな種類があります。また、より安価なポリエチレンでできたポリエチレンジェルシートもあり、同様の効果が認められます。ジェルシートは長期間貼っておくことで、保湿や創の安静・固定の意味があります*。素材が柔らかくクッション性もあるため、服でこすれたりする疼痛が強い部分などにやさしく使用できる利点がありますが、汗をかくと容易にはがれてしまう難点もあります。
     また昔から、やけどのきずあとはサポーターや包帯などで固定することが効果的とされてきました。ケロイドや肥厚性瘢痕は、絶えず力がかかる部位にできる傾向が強いので、傷を安静に保つ意味で重要です。シリコンジェルシートやシリコンクッションをテープや包帯で固定することは、圧迫・固定の作用も働いていると考えられています。

    *Akaishi S, Akimoto M, Hyakusoku H, Ogawa R. The tensile reduction effects of silicone gel sheeting. Plast Reconstr Surg. 2010 Aug;126(2):109e-11e.

    D)ステロイドテープ

     最も多く利用されているものには、抗炎症剤であるステロイドがついているテープ(ドレニゾンテープ®、エクラープラスター®)があります。ドレニゾンテープは古くからあるステロイドテープで透明な素材で薄く、顔面や、嫌がってはがしてしまう小児に使いやすいものです。また、数年前に発売になったエクラープラスターは効果が強いため、保存的治療の主役をなすものとなりました。

    ステロイドテープの使い方

    E)注射

    ステロイド(ケナコルト®など)を注射するのはケロイド治療の基本であり、どこの病院でも行われます。注射によって赤みや盛り上がりは著明に減少しますが、周囲の皮膚の菲薄化が生じることもあるのが欠点です。また硬い瘢痕の中に注射するため強い痛みがあり、女性ではステロイドの影響で生理不順が生じることもあるため注意が必要です。

    F)レーザー

     ケロイドや肥厚性瘢痕の治療に、レーザーを使うことがあります。ケロイドや肥厚性瘢痕の中の血管を破壊したり、コラーゲンの分解を促進させることを目的としたものが主流です。*
     ただ、現時点では保険適応外であり、治療で使用する場合は自費で行う必要があります。

     *Akaishi S, Koike S, Dohi T, Kobe K, Hyakusoku H, Ogawa R:Non-contact mode long pulse nd:YAG laser therapy for keloids and hypertrophic scars、Journal of Wound Technology、2012.1

    G)その他

     ひげ、陰毛や胸毛などがケロイド内に埋入されて感染を繰り返す場合、ケロイド部分の脱毛が効果をきたす場合があります。

    • 2.手術(入院や外来手術室での治療)

      肥厚性瘢痕とケロイドの手術方法

      A)手術に対する考え方

       いままで解説してきた方法だけで軽快するようであれば、手術をしなくても良いのですが、強いひきつれ(瘢痕拘縮)があったり、抗生物質によって除去できない感染源があったりする場合には、必ず手術が必要です。また、目立つ所で醜状が問題であり、社会生活に支障をきたす場合は、やはり手術をすべきです。
       しかし、従来からこれらは安易に「手術してはならない」とされてきました。今でもそのような考えの医師は多いのですが、我々はできる限り再発しないような縫い方の工夫をし、さらに放射線治療を取り入れることによって、これらの問題を解決してきました。

      B)縫合法

       ケロイドや肥厚性瘢痕を摘出した後に、傷を縫合しなければなりませんが、最も大切なのは再発しないように縫うことです。ケロイドは真皮から生じるため、真皮に過剰な力が加わらないようにすることが重要です。真皮より深くにある筋膜などの組織をしっかり縫い寄せて創を十分盛り上げ、創縁が何もしなくてもくっついてしまうような状態にします。*

      *赤石諭史、小川令、大森康隆、百束比古.ケロイド切開後の新しい縫合法-Fascial suture technique-. 瘢痕・ケロイド治療ジャーナル. 4. 95-99.

      C)放射線照射療法


       再発率を低下させるために、ケロイド術後に放射線照射を行うことがあります。また、あまりに大きい腫瘍に対しては、手術をしないで放射線治療のみを行うこともあります。

      D)手術の後療法について

       外科的治療および放射線治療で一度は完治したとしても、術後から局所の皮膚伸展を繰り返していれば、やはり再発することがあります。よってわたしたちは最低2-3年、傷の伸展を予防するためにテープ固定をおこない、術後数か月は過度の運動、仕事をさけるようにお願いしています。

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