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形成外科

顔面神経麻痺(まひ)の原因と手術治療と

顔面神経麻痺(まひ)とその原因は?

 顔面神経は、「顔の動きに関係する神経」であり、その障害(麻痺)によって起こることで分かりやすいのは、顔を半分動かせない【顔の左右が違ってしまう】ということです。障害を受けた方だけだらりと下がってしまいます。
 上記のような表情を作る神経である顔面神経は「12対ある脳神経」の7番目にある神経です。はじまりは脳の一部にある顔面神経核からおこり、内耳道、顔面神経管を通り、茎乳突孔から頭蓋の外に出て、耳下腺を通って顔面の筋肉に向かいます。その経路のどこかで障害されて起こる病気が顔面神経麻痺です。頭蓋から出ると顔面神経は5つの枝に分かれるので、頭の中で障害が起こるとすべての枝が麻痺し、外傷や腫瘍などで枝の先で障害を受けると部分的に麻痺が起こります。顔面神経麻痺と言っても原因としては、Bell麻痺、Ramsay-Hant症候群などのウイルス性、細菌感染、脳内病変、外傷、腫瘍など、多岐にわたります。ストレスが直接関係することはありませんが、ストレスで免疫力が落ちた場合にウィルス感染などをきたす可能性があるため、全く関係がないとは言い切れません。

  • 特発性/Bell麻痺(70%)
     ベル麻痺の発生率は10万人あたり10~40人です。ウイルスの感染が原因といわれており、発症して1~2日で片側の顔面神経麻痺の症状がでる傾向があります。回復には最長1年かかることがあり、13%もの患者で症状が残り、10%で再発する可能性があるといわれています。

  • Ramsay-Hant症候群などのウイルス性(4.5〜7%)
     ヘルペスウイルスによる帯状疱疹感染症は、顔面神経麻痺を引き起こすことがあり、Ramsay-Hant症候群とよばれます。40%程度の患者にはめまい症状も現れます。1年以内に回復するのはわずか21%といわれています。

  • 細菌感染
     急性中耳炎や外耳炎によって顔面神経麻痺を引き起こす可能性があります。また、まれな原因として、マダニに刺されて細菌感染し発症するライム病があります。

  • 腫瘍(2.2〜5%)
     顔面神経麻痺の発症がゆっくりと進行する場合、悪性腫瘍の疑いがあります。顔面神経麻痺を引き起こす悪性腫瘍には、耳下腺腫瘍、顔面神経腫、聴神経腫、髄膜腫、くも膜下槽などがあります。腫瘍の発生した部位によってさまざまな程度と症状を示します。

  • 外傷(10〜23%)
     顔面神経が通る部位をケガすることで生じます。側頭骨の骨折や、耳下腺の手術によっても損傷を引き起こす可能性があります。

特殊な顔面神経麻痺(まひ)

    • 子供の顔面神経麻痺

        先天性または後天性に分類されます。後天的な原因は上記の成人と同じであり、上記の病因はすべて子供にも発生する可能性があります。先天性の原因としては、高い出生時体重、鉗子分娩、未熟児、または帝王切開出産などによる外傷などがあります。また、先天性の症候群としては、メビウス症候群、ゴールデンハー症候群、アーノルドキアリ奇形などの頭蓋顔面の異常がある症例が含まれます。

    • 両側性顔面神経麻痺
       顔面神経麻痺の0.3〜2%で両側に発症し、全身症状が出現する可能性が高いです。両側性のうち35%がライム病、20%が特発性といわれており、その他の重要な鑑別診断には、ギランバレー症候群、糖尿病、サルコイドーシスが含まれます。両側性顔面神経麻痺の神経学的原因には、パーキンソン病、多発性硬化症、および仮性球麻痺・球麻痺が含まれます。

顔面神経麻痺の症状は?

 口や目を閉じたり笑ったりする顔面の筋肉を顔面表情筋とよび、20ほどの種類があります。その筋肉の動きが麻痺してしまうことでさまざまな症状がでます。

(1)眉が下がる→視野狭窄
(2)眼が閉じられない、上下のまぶたが下がる→視野狭窄
(3)眼が乾くため赤くなり涙がでる→角膜損傷・兎眼
(4)ほうれい線がなくなる
(5)口角が下がる、口が閉じられない→水がこぼれてしまう
(6)しゃべりにくい(構音障害)、頬を噛んでしまう(咀嚼障害)

顔面神経麻痺の症状

手術による治療方法

 ウィルス感染、細菌感染、腫瘍など、それぞれの原因に対しての根治的治療を行ったうえで、回復しない症状に対して手術加療を行います。症状や原因疾患によって組み合わせて治療を行います。症状と見た目の改善を目標として、QOL(Quality of life、生活の質)の向上をめざす治療です。

(1)見た目を修復する治療(局所麻酔の日帰り手術でできるものもあります)

下がった眉・まぶた・口角の位置を吊り上げる手術など
・皮膚切除術(余剰皮膚を切り取って持ち上げる方法)
・筋膜移植術(大腿などの筋肉の膜を皮膚の下に移植して下がった部分を引っ張りあげる方法)

(2)麻痺した部分を動かせるようにする治療(全身麻酔、入院の手術)

・(側頭筋・咬筋)筋移行術(別の筋肉を付け替えることで動かせるようにする方法)
・神経移植術(別の神経を障害された神経と取り換える方法)
・神経血管柄つき遊離筋皮弁術など(神経だけでなく血管・筋肉などを移植する方法)

手術方法

治療のタイミング

 発症から手術による治療までは6か月以内がよいとされています。それは動かなくなった表情筋がどんどん痩せてきてしまうからです。いったん筋肉が瘦せてしまうと、神経が治ったとしても回復しにくい状態になってしまうといわれており、その前に治療を行う方が効果的です。ただ、それ以上経過していた場合でも行える治療もあります。耳鼻科や脳神経外科など、原因疾患治療の医師に相談したうえで、いつでも「顔面神経麻痺外来」にご相談ください。